約ひと月前にリリースされていた一枚。先行のシングル第一弾は聴いていたもののピンと来なかったのだが、全曲澤野弘之サウンドプロデュースということなのでいってみた。
結果、非常にコンパクトかつハイクオリティなアルバムで、期待していなかったぶん「あ、これはあたりだったかも」と感じられるいいアルバムだった。
澤野弘之氏サウンドプロデュースに至った経緯はDo As Infinity側のスタッフの方がAimerさんの澤野氏プロデュース曲を聴いていて、Do As Infinityにも合うのではないかというところから始まっているらしい。
このあたりリリース前後にweb媒体でいろいろご本人たちの対談が上がっているので興味のある方は目を通されるとよいかと思う。自分も最終的に購入の後押しになったのはそういったインタビューの類だった。(これなどいい内容)
で、アルバム構成としてはOP、EDのインスト曲含む全10曲。正味歌モノ8曲、それも聴くところによるとほぼシングル切ってたそうなのでDo As Infinityのファンで誠実に追っかけられていた皆さんからは新味は少なかったようだが、自分はこのアルバムまでシングル一枚しか聴いていなかったので、むしろまとまって聴けたことでずいぶんプラスの印象となった。
前述のようにインストのOP、EDがあるのだが、やはり澤野氏はこういうインストから入らせると演出力がすごい。なので自分がシングルとして聴いてあまりピンとこなかった実質歌モノの1曲目「Alive」もぐっとかっこよく聴こえるようになっていた。このあたりアルバムマジックよなあ。
そしてここが澤野氏と相性よかったもう一つの理由はギターの大渡氏のギターオリエンテッドな作風が澤野氏の指向と同系統だったということだろう。対談でProdigyの「カニのアルバムいいっすよ、カニ」みたいな話になってるのは思わずニッコリw(名アルバム『Fat of the Land』でしょうな―個人的にはその前作『Music for the Jilted Generation』のほうが好きだがカニ収録の「Smack My Bitch Up」が一時期代表曲的な扱いだったし)
で、その大渡氏のヘヴィなギターリフと伴都美子氏のややハスキーでフラッシーなボーカルも澤野プロデュースと非常に相性が良かった。澤野氏のサウンドに目を付けたスタッフさん優秀だったと思うし、DoAs側のお二人とも結果的にはいい信頼関係が気づけた模様で、本作以降もコラボありそうなので今後もこの両者のコラボはすごく期待できそう。
(事実この5月に開催予定の澤野氏ライブ「nZk」でDo As Infinityのゲスト参加がアナウンスされている)
アルバム全体としてそつなく全曲ハイクオリティな曲が並ぶが、やはりアルバム全体のピークとしては7曲目の全編英詞の「Silver Moon」から8曲目非常にキャッチ―でフラッシーな「化身の獣」あたりだろう。このあたりの流れはほんと久々に素直にカッコいいなあと思える”アルバム”という形態ならではの流れ。最近の若いリスナーさんは単曲で1曲1曲で楽しまれる方多いと思うが、アルバムというものの意味は、こういう全体でのメリハリにこそ醍醐味があると思う。
Do As Infinityはもうかなりのベテランといってもいい長いキャリアをお持ちだが、自分はデビュー当時の作品やスマッシュヒットしたいくつかの曲を聴いた後、なぜかあまりご縁がなかった。それが彼らより若い世代のアーティストの力によってこういう形で再び自分のアンテナに引っかかってくるというのも、音楽の面白さ―そして難しさだなあとあらためて痛感する。
なにはともあれシンプルに「いいアルバム」といってよいと思うので、聴く機会のある方はぜひ一聴されることをおすすめする。