昨年から行われていたAimerさんのツアー、最終日のチケット取れていたので先日観に行ってきた。
会場はNHKホールだったのだが、意外と渋谷界隈のこのクラスの大中のホールはこれまで縁がなかったのでそこも面白かった。
いい意味で観ていてしめるところはびしっとしめつつも、肩に力の入っていない感じの、「旅」というか「旅の一行」の最終日の公演という印象でそこがかえっていい感じのライブだった。
会場のNHKホールは実は今回初めて。渋谷界隈の小規模なライブハウスはその昔友だちが良くライブやってるようなみなさんばかりだったのでけっこう回ってるんだけど、こういう中規模以上の有名どころのハコは実はあまり行く機会がなかった。
原宿駅からNHKホールまでの道中でも「ああ、代々木体育館!PSYENCE A GOGO!」「ああ、野外音楽堂、HOTHOT GUMBO!」と一人勝手に盛り上がっておりました(苦笑)。
で、今回のNHKホール、なにが面白いかというとその音響がすごくおもしろかった。
どういうことかというと、その残響というかリフレクションというか、メインの音以外の返しというか戻りがすごくいい意味でデッドな感じで、1階席の奥のほうだったのに、ステージがものすごく近く感じるという。サウンド的には明らかにPAを通っている「作った音」であるにも関わらずすごく生っぽく感じた。
これは後半演者側の熱量あがってきたこともあってか(曲調による音量の加減もあったかと思う)その感は薄くはなったんだけど、こういう音響の場所は初めてだった。
そういったセッティングもあってか演目も最初はアカペラから始まり、またhiver(フランス語で冬という意味とのこと)というツアータイトルに合わせて初期のアルバムから冬を思わせる印象の曲を選んでおられた様子。
その後MCがありそこで「冬がテーマですがほかの季節感もあるセットで」ということでここで念願の初じめて生での『歌鳥風月』。こころもちBPMはやめに聞こえたがそれでも素晴らしかった(この曲がこういう位置で来るというのはちょっと不意打ちだった)。続いて季節感のはっきりとある『茜さす』とほか1曲(およそ3曲前後でMCを挟んでる感じ)。
続いては『カタオモイ』のハンドクラップから『Hz』や『ONE』といった躍動感のある曲のセクションへ。毎回Aimerさんところのコンサートで良くも悪くも戸惑うのは座って聴くタイプの曲と立ってノッたほうがいい曲というのが曲調としてはすごくきれいに分かれているちゅうこったな「おしゃ、ノリノリでええんか!」と思ったあと「ご着席ください」みたいな(苦笑)。
(実際のMCでは「ご着席ください」はないけどもw)いっそのことアンコールパートというか第二幕的な構成にして、そこではスタンディングの合う曲を固めるとかしてくれるとありがたい気もする(笑)。
そして再び冬っぽいセクションにもどるが、ここではさきほどのウォームアップをへて激しさを伴う『凍えそうな季節から』等が披露される。で、このセクション的には確か2曲やってMC→そしておそらく一番強烈な一曲である『花の唄』へという感じで曲の構成的に非常にストーリー性を感じられる進行なのが素晴らしかった。また今回はセットのバックに大きな樹木を思わせる書き割りが数パターン入れ替わり立ち代わりセットされて、ライティングとともにこのストーリー性のあるセットリストに演出的に盛り上げていた。
(個人的にもこのあたりで「お、これは・・・この歌詞内容の曲がこの順番で来るっちゅうことは次『花の唄』か?」と思ってたのが的中したのはうれしかったですな)
やあそしてすごいね『花の唄』。Aimerさんのライブの曲ではときどきそういう曲が出現するのは知ってたんだけども久々に自然と息止めるような感じで聴いていた。
(以前大阪で聴いた時の『誰か、海を。』以来か)
そして続いて個人的に大好きな『ninelie』と続くこの幸せよ⁉(感涙)。おまけにもう一発これまた好きな『LAST STARDUST』(ここで「LAST STARDUSTきたからBRAVE SHINEくるか!?」はハズレました:苦笑)。このあたりでライブの本編部分での一つのピークだったようで、MCとあわせて非常に印象的だった『糸』(中島みゆきカバー)が披露される。
”縦の糸は私 横の糸はあなた 織りなす布はいつか誰かの 傷をかばうかもしれない”
この歌のこの歌詞は非常にこのAimerさんというアーティストのスタンスを表している感じがして、以前からすごくアーティストとしての意図を感じる良カバーだと思っていたが、今回改めてその思いを強くした。
そうこの方、MCなんかでもそうなんだけども「誰もおいてきぼりにはしない」を徹底的してる―毎回ほんとそれを強く感じる。
一観客としては「これはスルーしといてもバチは当たらんでしょ」という観客からのかけ声でも、スルーするとその人が居心地悪くなりそうだというケースだとちゃんと拾いにいく。ほかの方とのコラボライブでもつどつど本当に深くお辞儀されることあるんだが、ポーズではなくこれがこの方の”本気”であるんだなというのは複数回みてると本当によくわかる。
そして『蝶々結び』から新曲の『Ref:Rain』と切なくもカラフルな感じの曲たちにつづき、冬の唄にもかかわらず温かい気持ちになるという『everlasting snow』で本編終了。このあたりは”冬”のツアーらしい〆で非常に良かった。
そして当然アンコール。
凛として時雨とのコラボ曲である『us』、そしてまさかの『RE:I AM』(歓喜!)最後は”冬”の先を感じさせる『March of Time』で〆。
全体としてはいい意味ですごく”フツーな感じ”のするリラックスする感じのライブだった。繰り返しになるがこれは悪い意味でいうのではなくて、いわば「いろんな所へいって、いろんな歌を歌う」というのを普通の生活に落とし込んでいるような印象といえばよいか。ただいろいろな苦労やつらいこともあった的なことも途中のMCで仰っていたので、決してそれをイージーに実行されていたわけでもないんだろう。しかしそれをその歌を聴かせていただいているこちらにはみじんも感じさせず、ほっこりと温かい感じの場にされていたのはやはりこの人の努力とこの方ならではのお人柄だろう。
最後に一点、その”歌”そのものについて。
最近では突出して歌唱力のある数少ないシンガーのうちの一人というのは多くの人が認識されていると思うが、さらにレベルが上がってるのは間違いないというのが今回強く印象に残った。特に中低域というかミッドローというかある特定の音域がグーッと伸びるサビのある曲でそれはより顕著にわかるんだが、とにかくそのしなやかさと力強さが半端ない。当日メモ代わりにツイートした際は「トルク」と表現したんだが、まさにぐいぐいと力強く引っ張られるあの心地よさというか。録音された音源でも十分すごいのだが、ライブだとそれがより顕著にわかる、いやほんとすごいよコレ。
幸いにして各方面でひっぱりだこの状況にあるので、2マンやコラボ、フェスなどでその歌を聴ける機会は以前に比べて圧倒的に増えている。音楽が好きな方でまだ一度もライブで聴いておられないという方は、そのチャンスがあれば逃さないことを強くお勧めする。たぶん、こういうタイプの歌声は聴こうと思ってホイホイ聴けるもんじゃないと思うので。是非!
※あと今回はツアーパンフが出色の出来でしたね。これまでも美麗な写真集のような感じのすごく品のいいものだったんだが、今回はそこから先に一歩踏み込んでストーリー性が感じられる、ちょっとした絵本のような感じ。おまけに冬がテーマということもあってか狼さんがモチーフに。おっさんなので普段はめったにグッズ買わないんだけど(女性向けと思しきものがおおいので)今回は狼さんだったのでトートバック買いましたわ(苦笑)。
※ある意味この並びで花束来るアーティストって・・・・・・すげえよな・・・(驚)