澤野弘之 Live[nzk]003 2DAYS@zepp tokyo

標準

今月はこちらが意図したわけではないんだけれども、見ておきたいライブが集中していてライブ月間―それも世間的に見ればいわゆるオタク系なライブばかりでアレなのだが(苦笑)、個人的にこの界隈の音のほうが巷の下手なポップシーンよりも国内の旬のポップシーンのリアルなんじゃないかと思う節もあるのでまあガシガシいってるわけですが、さすがに連チャンで続くと記事書くのも大変、オマケに今回は2DAYS両方ともあたっちゃったよ~!?けど偶然とはいえ2DAYSいっておいて正解だった。

という事でちょっと日にち経っちゃいましたが先日12,13と行ってきました澤野弘之LIVE2015 [nZk]003!
20150913_nzk003

劇伴(BGM)を数多く手掛ける澤野弘之氏のボーカル中心のライブ。一昨年より毎年行われている恒例のライブで、今回はその三回目となる『澤野弘之LIVE2015 [nZk]003』となる。氏の手掛けるボーカルプロジェクト[nzk]としてこれまで参加してきた数多くの多彩なボーカリストが登場する贅沢なライブで、ライブ直前に発売となったニューアルバム「o1」とサントラベスト「emU」の曲を中心に数多くの名曲が生で披露された。

■ 開場まで

会場はこれまでと同じくZeppTokyo。これまで書いたとおり相変わらず客誘導はうまくない(苦笑)。
これ、一つは会場のスタッフ側が会場付近を中心にしか考えてないからだな、と数回いってはじめて気がついた。

どういう事かというと、Zeppはお台場の大観覧車のすぐ真下とでも言うべき場所にあるんだが、入口はそこでもたいていお客さんは列をなして並ぶので、最後尾はいつもゆりかもめの青海駅あたりとなる。なので観客側のアクセスの仕方ではZeppの入り口付近を通らずに直接その最後尾に並んだりする人も多い。しかしそういう形でならぶ客が居るという発想がZeppの誘導スタッフ側にあまりないんだな。だからせっかく「整理番号xx番」と札立てても、列に並んでしまうとアナウンスでもされない限り自分の番号がどのあたりなのか確かめに行くわけにもいかない(下手すると並び直さないといけないので)。だからほんとはZepp入り口付近よりも最後尾にちゃんとスタッフ一人貼りつかせて進捗状況や並び方を案内してあげるべきだろう。

で、例によってこのライブ、客層がホントばらばら(笑)。
老若男女バラエティ豊か。昨年の時も書いたがどうも海外からのお客様もぼちぼちいるようだし、40半ばのおっさんな自分よりもさらに高齢な方も今回は見かけた(驚)。しかし共通しているのは毎回書いててあれなのだが(苦笑)、服装の「彩度の低い」皆様なのだ―いやある意味これがサイレントマジョリティなのかもという気すらしてますよ、最近は。そして女性客がけっこう多くて、それも女の子同士のお客さんが多いというのもおもしろい。けっこう男女とも友だち同士で連れあってきている感じ。

■ 客観的に言える部分とか

今回は2DAYSだったんだが、「当たらんだろうし保険の意味で両日申し込んどくか」と思ってたら両日あたって日参致しましたよ、ハイwしかし両日ともすごく楽しかったので結果大正解。

ただトータルとしてそういう感想であるのは間違いないんだが、客観的にみると主に音響面等で「ありゃ」と思った部分もあったのは事実。
このあたりは一応フェアに書いておきたいと思うので以下に。

今回は位置の関係があったのかもしれないが、会場での音響面は正直厳しかった。初日は客席真ん中やや左よりぐらい、二日目はPA席より後ろの一段高くなっている個所の左よりで聴いていたんだが、正直現場での音の分離はかなり悪い。二日目はかなりマシだったが初日はZeppで聴いたライブの中では下から数えたほうが早かったかもしれない。これはおそらくダイナミックレンジが広い曲ばかり―加えてどんどんギターリフのウェイトの大きい曲が増えてきているのでその納め方がむづかしいところもあると思うが、それよりもこれだけの数のボーカリストが入れ替わり立ち替わり出てくりゃそりゃセッティングも一筋縄でいかないっちゅうとこでしょうな。

そして肝心のボーカルも現場で聴いている分にはあまり気にならなかったんだが、ニコ生で12日のほうのライブを全編ノーカット?でやったものを見なおしてみたら、意外とみなさん微妙にピッチ外れてたりするシーンもちらほら。けどこれはあれだけ音域の広い曲ばかりなら納得いく―というかある種不可抗力なのは分かるし、どこかのインタビューで読んだんだが澤野氏の曲というのは「一見歌いやすそうに聞こえても実はけっこうむずかしい」んだそうな。これは特に曲やサビの立ち上がりでガーッと行くタイプの曲で多く見られたので、まあそういう事なのだろうと思う。
(これは自分も以前『Sternengesang』のメロディだけキーボードで拾ってみたことがあるんだがよくわかる―フツーに聴こえるメロディラインなのに使われてる音域がなにげ広いのだ)

■ しかし楽しいライブ~「MCレベル1で進歩しませんから!」w

けどなー、そういう事があったにもかかわらず楽しい、ものすごく楽しいライブなのよ~!?

これは元々リズム隊がすごく良いのと、どの曲もすべてメロディが凄く強いので少々PA悪くても聴けてしまうという事もあるだろうがそれだけじゃない。

やっぱりそういったライブならではの細かな枝葉の部分(PAとかピッチの問題etc)の先にある音楽全体のレベルが高いんだろうと思う。

加えてそこが自分にとって大きなツボなのかもしれないのだが、昨今のアイドル文化に毒されたポップスと違って曲中の音域の「ロー(いちばん下の音)」がかなり低い曲がけっこうあり、でもサビはバリバリにハイトーン!?、加えてロックチューン増えてきているのでBPMも意外とバカにならんというボーカル殺しの曲が多い。それをライブでここまで歌えるシンガーばかり集まってるというのはなにげに凄いことなんじゃなかろうかと。

もちろん昨今は録音技術の向上や音楽との接し方の変化もあって、ピッチや音響といったところに目が行きやすいんだが、そこを抜きにしてみてみるとやはりこれだけ声量や表現力のあるシンガーが複数出ているライブというのはあまりないんじゃないかな。(そういう意味では元々作詞家なのにこういう場所へ引っ張り出されたmpi氏はちょっと同情する)

そしてそういう音楽性の話題を抜きにすると、ご自身で「MCはレベル1です!」と茶化してらっしゃるがその澤野氏ご本人によるMCの楽しさがやはり極めつけだろう(笑)。

これが全体の明るい雰囲気を作り上げているところがかなり大きいと思う―自分なぞ正直今回もこれを聞きたいがために脚を運んでるフシすらあるwほかの常連さんたちもどうもそのフシがあるようで(笑)、そんな観客に対し「知りませんよ、MCで時間おして生まれたての小鹿みたいに脚プルプルする羽目になっても!?」と澤野氏ご自身もまんざらではなかった様子(笑)。

とはいえ、もちろんライブとしての演出はちゃんとカッコいい。

毎回澤野氏のライブはオープニング曲がすごくいい、とにかく盛り上げ方が半端ないのだ、このあたりは流石現役バリバリの劇伴作家故か(笑)。

今回はリリースされたばかりの「o1」からの『[nzk]o1』だったんだが、この盛り上がりはニコ生見られた方はうなずいていただけるだろう。
(これはAimer嬢とのUnChildライブの時もアルバム冒頭の『UnChild』が演出的に同じパートを担ってたと言えばご想像いただけるだろうか)

■ ざっくりと両日の違いなど

で今回は2日間観に行ったのだが、それぞれの日の印象を述べるならライブとしての楽しさは初日、選曲の良さという事では二日目という感じか。

上記ニコ生(放送されたのは初日分)をライブを見終わった数日後に2回ほど繰り返してみたんだが、やはり進行が圧倒的に面白い(笑)。
もちろんいうまでもなく上述のように曲もいいので、現場でもほんと気づいたらあっという間にアンコール前まで来ていた感じというのは、このニコ生で改めてみても同じ印象だったのには正直驚いた。

二日目も同じく楽しいライブではあったのだが、二日目のポイントはやはり何といってもキラーチューンの連打にあるだろう。
各シンガーさんごとに2,3曲づつという構成と基本的な曲は変わらずやるのだが、そのうちの1曲ぐらいを初日と変えてきてたりする―そしてやはり美味しい曲はこの二日目に集中していたように思う。

詳細はオフィシャルでのセットリストをご覧いただければと思うが、初日のトリであった『aLIEz』を再度やったことに加え、あれだけべらぼうに歌がうまい小林未郁嬢をして苦戦させる『BLE@THLESS』、直近のチューンとして力強い男性ボーカルが印象的な『scaPEGoat』も二日目だった。そしてなんといっても大トリの『RE:I AM』―並べてみるとやはりセットリストとしては二日目に軍配が上がる。

■ 各パート・シンガーの印象とか

セットリストを改めて見ながら思いだしてみると、なにげにアルドノアゼロからのパート=Mizuki嬢のパートが軸にはなっている感じか。これは直近の作品だったからというのもあるのかも。Mizuki嬢も相変わらず安心して聴いていられるボーカル。この方の武器とも言えるハリのあるハイトーンをうまく引き出す楽曲ばかり=けっこうハードル高い曲多いと思うんだが、十分期待に応えていたと思う。

その軸となるアルドノアのパートに進撃やキルラキル、その他での楽曲がちりばめられている構成、と自分的にはみた。

そういう一見ばらばらな楽曲群でも、当然ながら各ボーカルが適材適所で担当している曲なので、入れ替わり立ち替わりでもおどろくほど違和感はない。そして各シンガーごとにやはりカラーがある。AimeeさんはDOAに代表されるようにノリノリの曲多め、Cyua嬢は初日のみだがやはりこの方が歌うと「Blumenkranz」のような曲でもポップ感あるのだな。

そして今回の一つの目玉は「歌う作詞家」(笑)mpi氏のステージ初登場であろうか。
前述のように歌唱力という絶対値で見ると当然ほかに劣るのだが、澤野氏がずっと探していた「声」というだけあってやはりカッコいい声だし、御本人も精一杯頑張ってらっしゃったかと思うのでここは肯定する。

で、つづくAimer嬢のパートはやはりいい意味で独立感が高い。特に普通に進行させているだけなんだが、逆にいうとこの「声」だからこそステージの色がぱっと変わる。元はかなり以前に別の方へ提供した曲をリメイクしたという新曲『s-AVE』はすごくいい。大切な曲だったんだろうな、というのをなんとなく感じる。それを歌うAimer嬢もご自身もソロツアーを経験したからか、昨年見た時よりはるかに余裕が感じられる。加えてなんというのかなあ、歌にものすごく「まろみ」というか「まろやかさ」のようなモノが備わってきてるのはい意味で驚かされた。また最終日(二日目)大トリは彼女による名曲『RE:I AM』なんだが、この曲だけは絶対外れテイク一度も聞いたことがない―というかライブで何度も聴いている曲なんだが、毎回聴くたびに前回聴いたバージョンを越える。これは大トリに持ってくるぐらい澤野氏にとっても特別な曲かと思うが、彼女がそこに全力で応えているからというのもあるのだろう。正直この一曲で二日目のライブ代は全額回収どころかお釣りがくる状態。(下世話なたとえでスミマセン;)

また先ほどアルドノアからの楽曲が軸だったかもと書いたが、それに加えてこのプロジェクト新規組の配置も各日ごとの印象を大きく左右もしていた。
初日はアンコールで初登場となったGemie嬢は二日目では逆にトップバッター。アルバム『o1』では他数曲歌っているが彼女も非常に良いボーカルだと思う。この『X.U.』という曲はギターリフの感じなどことなく90年代末のデジ・ロックテイストあってすごくいいダンスチューン(ディティールは全く違うんだがちょっとKMFDMのギター、ギュンターシュルツのギターリフを思い出す)。また二日目で初登場だった男性ボーカルYosh氏も独自の活動をされてると言うだけあってステージパフォーマンスも熱く、力強くていい。(そのわりにちょっと童顔なのがさらにナイスw)

で、そういった各アーティストの楽曲の合い間合間に通奏低音のように存在しているのが、澤野作品にはなくてはならない小林未郁嬢!要点要点で出てきて、ビシッと自分の楽曲を歌いあげ、流れを崩さずにさっと次へとバトンを渡す。そして相変わらずもの凄い声量

最初のほうで当日のPAあまり良くないと書いたが、この方の場合は声量に加えおそらく同時に鳴っている声のレンジが広いのであの轟音の中で逆に調和していたのがなんというか恐ろしいw

そしてその迫力あるボーカルとの落差ギャップがたまらないMCトーク(笑)
「このアンコールまでいちどもMCタイムがないという仕打ちを・・・・・w」と本人もいじりいじられでけっこう楽しんでらっしゃる様子。二日目にはなんと先に横浜でNHKの連ドラ『まれ』のイベントで歌ってからこちらへ駆けつけたそうな。

また小林嬢といえば今回のライブパンフレットで澤野氏との対談インタビューが載っており、これまでの澤野作品ボーカル楽曲についてかなり突っ込んだ対談をされている。興味のある方はぜひ入手して一読されることをお勧めする。澤野氏のボーカル作品の全体を俯瞰できる絶好の資料だと思う。

■ そしてついに明かされた[nzk]の謎w

とまあかなりしまりなくダラダラと書いてしまったが、いちおうこの2日間のライブは以上のような印象だった。
自分は昨年『UnChild』のライブがあまりにも良くてそこから観に行った去年の[002]からのファンなのだが、その[002]のとき

「来年はこの[nzk]の意味いいますから!」
「けどすっっっっんごいくだらない理由なんで~」

と仰ってたんだが、約束通り明かされましたよ、その理由がwww

ここはいちおうライブにこられた方のお楽しみという事で伏せておくが、さっそくアンコールでネタにされてましたな(笑)。
いや~ほんと面白いよなあ、この方。下手なお笑い芸人よりよっぽど面白いよ(苦笑)

おまけにこれだけキャッチーなのに陳腐にならない素晴らしい楽曲の数々。
それもBGMとしてもボーカル曲としてもこれだけ量産してるわけでしょ、いやもうあいた口がふさがらないというか・・・。

なんにせよ、これはまだ当分ライブに脚を運ばざるを得ないという事ですか、そうですかw
来年も年初にライブあるそうだし、[004]もやりますよ!と宣言されていたので、うまくチケット取れたらまたMCを聞きにいこうと思う(!?)





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