【レビュー】『幻魔大戦Rebirth 1巻』七月鏡一・早瀬マサト

標準

両原作者が鬼籍に入り、残されたスタッフ・関係者によるリブート作品といえるか。web連載の作品だったので目は通していたが、意外と正統な続編として読めるのでいってみることに。

『幻魔大戦 Rebirth 1 (少年サンデーコミックススペシャル)』



月が地球に最接近するという衝撃のラスト―前作のエンディングを受けて、再度敗残の兵となった異星のサイボーグ戦士・ベガはルナ王女の面影を残した少女・ステラによって再度”召集”される。二人を載せた月の残骸はクレータだらけとなった無残な地球へと落ちてゆくが、その残骸が炎に包まれた瞬間、無数の”蝶”が跳躍する―。
そして舞台は現代へと移り、そこでは高校生の東丈が普通の生活を送っていた・・・。


石森プロのサイボーグ009天使編(完結編)に類する企画だと思うのだが、インタビューを読む限りでは平井先生にも生前お話はある程度通っていたようだ。
元々本作品は、石森・平井の両氏の共同作品。両者で発展的に分化がなされていたが、当初は再合流させるという芽もあったようだ。それがこういうタイミングになったことで結果的に実現したと言えるだろうか。

内容的には、本シリーズの文字通り正真正銘の第1作である秋田書店版のコミックス版の直接的な続編のイメージで展開されている。
ただし、冒頭概要にも書いたように炎の中で跳躍する蝶が出てきたり、小説版(角川文庫版)幻魔の主要キャラクターの一人である久保陽子が早々に登場していたりする(真幻魔からのキャラクターも次巻相当部分で登場している/ESPの白人青年、ジョージ・ドナー)。ということで原作を踏まえたうえで、リスペクトをふんだんに盛り込んだ「全部乗せ」というかてんこ盛りというか(苦笑)、加えて石ノ森側の代表的なキャラであるジュンが、原作で言うところの江田四郎のネガポジ変換のような聖人的な印象をもったキャラクターとして登場している。

そういう意味では、純粋な平井ワールドとしての幻魔ではないが、幻魔とつくモノの集大成的な作品を目指しているという事なのだろう。

この第1巻では当初のコミック版では絶大な存在感を放っていたが、そのあまりにもコミック的な存在感故に小説版ではあまり活躍のなかった「スーパーブラック」ソニー・リンクスが登場するところで終わっている。

ソニーが出てくるという事は、舞台がNYであり、舞台がNYであるという事は・・・・・ということでここまでは、原作の流れをそれとなく踏襲しながらこの時空の作品世界は進んでいるようである。ここからどうこのRebirth版独自の展開へ持っていくのか?というのが七月氏の腕の見せ所だろう。

ただ久保陽子の登場からもわかるように、過去作からのキャラクター登場が確定しているわけで、それを考えるといわゆる”本歌取り”的なエピソードの引用はいくらでもできると思う。この第1巻の展開をみてもそれは非常にうまく捌いているように見えるので、いまのところかなり期待できる感じだ。

平井版・幻魔シリーズはDeepトルテックでかなり本線のタイムラインは回収されたが、時空のはざまに落っこちたままで四苦八苦しているキャラたちはまだ膨大に残されている。なのでできれば彼らを適宜拾ってあげてくれると、長く付き合ってきた読者の一人としては嬉しい限り。是非そのあたりを期待する。

個人的には優里さんはよひろったげてくれ~w

※しかしWeb連載にもかかわらず単行本の電子書籍版出てないっぽいのか?そこんとこどうなんだ?

・Web連載・掲載先:小学館・クラブサンデー







※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

コメントを残す