機動戦士ガンダムUC EP7『虹の彼方に』(感想編)

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制作期間もいれると5年越しのユニコーン、ついにこのエピソード7にて完結。
最終作、なら祭りに参加せずばなるまい!と、新宿ピカデリー・スクリーン1での大スクリーンにて鑑賞。(@2014/5/31)
その後結局ディスクも買ってしまったので(苦笑)遅ればせながらレビューする。

開放されると連邦が崩壊しかねないと言われる謎を秘めた”ラプラスの箱”―その最終座標がコロニービルダー「メガラニカ」にあると分かったネオジオン、ネェルアーガマ双方はそれぞれ全速で目的地に向かう。先行するネオジオンとの間に戦闘が発生するが、両者をさらに後方から追う連邦軍ドゴスギア級「ゼネラル・レビル」から発したリディの駆る黒いユニコーン・バンシィがバナージの行く手を阻む。バナージを前線へ戻すため、傷ついた身体のままマリーダが援護に出撃するが・・・。

おそらく初代ガンダム以降で自分が見たなかでは最も満足したガンダム作品となった―これは間違いなく言えると思う。

とにかく本作は最終エピソードということもあるのだろうが、本編90分間がある意味ずーっと見せ場の連続!

前作であるep6のエンディングがバンシィvsユニコーンの入りの部分で終わっていたので「そこから入ると弱いだろうな」と思っていたのだが、見事にこちらの予測を裏切るシーケンスから本編に入る。

そしてバンシィvsユニコーン、マリーダの出撃、アンジェロvsバナージ、リディの絶望と再生、ジンネマンとマリーダ、バナージ・ミネバとサイアムの邂逅、”箱”の秘密、フロンタルの出現、ネオジオングの不気味さ、ガエルの忠節、ダブルガンダムvsネオジオング、虚無へとバナージを誘うフロンタル、そしてあの”声”たち・・・・・。
(特にもうジンネマンとマリーダのところは涙ボロボロ流しながらみましたよ、ええ:泣)

箇条書きにしてもこれだけあって、細かい部分を言うとまだこれでも最後の核心部分は書いてないわけで。

とにかくもうフルサービスというか、詰められるだけ詰め込みましたという感じ。
劇場でみて、ディスクでももう一度見たが、これはほんとうに劇場でみておいてよかった。

もちろん、細かなところを言うといろいろともったいないところや、ややモヤモヤするところもあるにはある。
自分はそれほど感じなかったが、やはり”ロボットもの”としてのガンダムを期待していた層には、最後のネオジオングとダブルガンダムの戦いやネオジオングの最期がややあっさりしすぎていたように感じられたようだ。(確かにもう一度見てみるとそのきらいはある―ネオジオングが不動の状態でもいいので、二機のガンダムがもう少し動き回るカットがあと1、2カットでもあればぐっと印象は違っていたかもしれない)

これは本作品の宿命でもあるのだが、”ビジネス”としては、そういう”ロボットもの”を期待する層をうまく取り込んだ上で、本来描きたい人間ドラマも展開しなければいけない。
嫌な言い方になるが、そういう”ロボットもの”を期待する層が作品の収入を支えてくれる側面が大きいわけで、そこを無視するわけにはいかないだろうし、実は作品そのものとしても、そういった要素がカタルシスにもつながっているのも間違いないのだ。
そのうえで人間ドラマとしてこれだけの良い見せ場があり、そこで語られていることがけっして安っぽいだけのものでもないだけに、その両者のバランスのとり方は制作陣としても非常に悩ましいところだったろう。

個人的にも前作EP6冒頭のシナンジュvsゼネラルレビルの尺を削って、EP6で本作のバンシィvsクシャトリアまで行くのもありだったんじゃないかな、と思わなくもない。(このEP6,7に限らずEP4以降にはすべてそういった尺の中での納め方の良し悪しが付きまとう)ただ本作品は、都度都度売り上げを見て制作の予算=エピソードの追加が決まってきたシリーズなので、制作陣はその現場でとり得るだけの最善策をとってきたのだろうと信ずる。

なので自分としては、この構成でアリ!素直に肯定する。
加えて本エピソードは上述のように見せ場見せ場の連続=非常に満足感もあったのだ。

ここまで引っ張ってきた”ラプラスの箱”の謎も、ニュータイプの存在の意味を内包した十分説得力のあったものだったし、なによりあれは”文章”を生業とする小説家ならではのアイディアだったと思う。
「あれは”呪い”ではなく”祈り”だったんだ」というのも、これまでのガンダムシリーズを踏まえた内容で見事だった。

そういった大筋を踏まえた上で、上述のような各キャラクターたちの人間ドラマが、その中にすごく自然に織り込まれている。

マリーダとジンネマンのシーンには涙し、一見身勝手にも見えるリディの怒りもわかる、アンジェロの絶望に哀しさを感じ、だからこそすれていない、まっすぐなバナージとオードリーの二人に希望を見る。
それぞれがそれぞれの与えられた状況の中で目一杯できることをなした―それを感じられるドラマだったと思う。

そして自らを”空(から)の器”と呼んだフロンタルも、いつしか自分の中に宿っていたもの、それに連れられて器たることから開放される。

しかしそんな最前線の人間たちの目一杯の生き様をあざ笑うかのように、すべてを机上の操作で消し去ろうとする怠惰な”大人たち”。
そんな大人たちに唯一噛みついたブライトは「子供たちに恥じない大人でありたい」と叫ぶ。

結果「それでも」とあがき続けた二人が最後の最後に奇跡を起こす―。

もちろん現実はこんなに甘くもない、しかし「それでも」と希望や可能性を追い求めないところに人の世の向上はない。そして甘いと取られかねない”奇跡”を描いて見せたこの作品世界でも、人間たちは相も変わらず争いを続けていくことがすでに”歴史”として描かれてしまっている。

そこに虚しさや徒労を感じずにはいられない―しかしだからこそ、少しでも残された可能性を信じて、人は日々を歩いてゆくしかない。

そういう気持ちで歩もうとするすべての人たちの、その背中を押そうとする一本に、本作はなったのではないだろうか。


いやはや5月末に劇場でみてから、四六時中というわけではないが、まだどことなく余熱が残っている。
それだけいい作品だったのだろうと思う。

その証拠に、これだけのネームバリューのあるシリーズ作品にもかかわらず、映像作品としての売り上げは決して良くないことで有名な宇宙世紀ガンダムシリーズにあって、本作は空前絶後の売れ方をしているようである。
(初動販売枚数はまどかの叛逆の物語とどっこいどっこいか、場合によっては越えているっぽい!)

思えば、ファーストシリーズのガンダムを小学校のころに見て、高校生のころに逆襲のシャアで区切りをつけたつもりがなんとなくモヤモヤした終わり方ですっきりしなかった。
そういった気持もある意味本作で成仏させてもらえたように思う。

そういう意味で、自分にとっても一つの区切りをつけてくれる作品となった。

ここまで全力で頑張ってくれたスタッフの皆さんにはただただ感謝と労いの言葉を贈りたいと思います。
ほんとうにありがとう、素晴らしい作品でした。

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