これも未レビューだったけども、珍しくディスク買っちゃったのでご紹介しておく。
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本作はもともと小学館の雑誌で連載されていた作品を、配信を前提としたコンテンツとしてアニメ化(全四話)→劇場公開用に新規カット加えて1本の作品に、という経緯の作品である。舞台としてはいわゆる「1stガンダム」と同時代―宇宙世紀0079のソロモン~アバオアクー戦の前後が舞台。
企画の当初からテレビ公開などは考えず配信ベースでのリリースを前提に考えられていたようで、けっこう残酷描写的な部分が多い(主人公の所属部隊が義手義足の傷病兵ばかりを集めた部隊であるなど)。ガンダムの「ビデオ」系の作品はそういったハードな描写=大人向けのガンダムをうたうことが多いが、本作はその最たるものだろう(少なくともこれまで作られたその系譜の「なんちゃって」な大人向けと大いに趣が異なる)。
また作中のセリフから全編BGMがフリージャズとオールデイズ風ポップスのみ。この音楽周りを担当したのは菊地成孔氏で、サウンドトラック名義のアルバムにはあの大西順子氏なども参加しているようだ。そういうところからもターゲットとしては完全に「大人向け」で企画されている作品だろう。
(ちなみに菊地氏は小説家の菊池秀行氏の実弟だそうな!?)
で、実際に見てみた感想としてはハリウッド製のSFドラマxオールドスタイルのアメリカ的(WWⅡ前後の時代的)作品のようなニュアンスでありつつも、ちゃんとガンダムもしているという印象。これは上述のような各要素(傷病兵、フリージャズetcにまつわる各種の演出)とガンダムUCでのハイクオリティな作画を手掛けたサンライズの第一スタジオの近年のスタジオワークの集大成のような作画がうまくかみ合っているからだろう。
※実はこのサンライズ1スタのモビルスーツ描写はおなじ宇宙世紀もののリメイクであるThe ORIGINのCGによるMS描写(別スタジオ)のそれと良い比較-ある種のアンチテーゼ―になっていると思う、少なくとも自分は本作の描写のほうがしっくりくる。
物語の面からもさほど複雑さはない割に、ちゃんとある種の戦場での群像劇にもなっており見ごたえがある。総じてユニコーン以降の「大人の鑑賞にも耐えられる」作品としての基本を外していない印象だ。
ユニコーンほどの大作感はないが、一本の映画としてきちっとまとまった破綻のない佳作といった体で、非常に好印象である(だから自分にしては珍しくディスクまで買った感じ)。
二人の主人公ダリルとイオの対決は、本編で一旦の区切りを迎えるが、原作はまだ連載中、加えて本作のスタッフも続編は可能であればやりたい的な声もちらほら聞こえてはくるので、場合によっては続編もあるのかもしれない。
このレベルのクオリティでの作品をコンスタントにリリースできるのであれば、それはひとつの「品質基準」を作ることにもつながることになるので、可能であればぜひがんばっていただきたいところ。
本作は少なくともその昔ガンプラ少年たちが考えたであろう「リアルなガンダム」をある程度まで(あるいはそれ以上に)具現化し、かつエンターテイメント作品としても見れるものになっているという点で高評価である。
この配信版を一本の作品としてまとめた「DECEMBER SKY」はディスクだけでなく各種配信サービスでもご覧いただけるハズなので、興味のある方は機会があれば一見をお勧めする。少なくとも見て損したという気分にはならない作品であることは保証する。
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実は本作はプラモデルもちょっと面白くて、原作の太田垣氏がSF考証に強い方ということもあってか、各関節部が通常のようなむき出しではなく実際の宇宙機のようにシーリングされている。小さな1/144モデルではプラでの一体成型だが、カトキハジメ氏によるハイエンドブランドである「Ver.Ka」の1/100モデルでは、ちゃんと関節シーリングにがビニール素材を使って再現されているようだ。このあたりのこだわりもメカ好きな層にはたまらないだろう。
ちなみ本作でのガンダムさん、すっかり強面の悪役(ヒール)である、そらこんなんと戦場で遭遇したら生きた心地せんと思うわw
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