もう終わっている会社/古我知史

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もう終わっている会社 (ディスカヴァー・レボリューションズ) [単行本(ソフトカバー)]
古我 知史 (著)



もとマッキンゼーの大ベテラン、現ベンチャーキャピタリストの著者が、吠える(文字通り吠える)巷にはびこる会社・企業文化の”お約束”に対して喝を入れる一冊。

曰く「選択と集中から決別せよ」「中計などやめちまえ」「顧客主義を捨てろ」等、ネコも杓子も”トレンド””常識””意識の高い”等々大好きな昨今のビジネス文化に過剰適応されている皆様におかれましては、ひきつけを起こしかねない内容(苦笑)。

しかし、読めばわかると思うが、ただ乱暴に吠えているだけではなく、著者のこれまでの長年の経験の蓄積からくる”経験知”とでもいうべきものを、あらためて自身で論述しなおしてみるような形となっている。

なかなか面白かった本である。
しかし、なかなか評価がむづかしい本でもある。

なぜなら、本書に書かれている内容のおおくはうなずけるものが多いのだが、果たしてそれが実際の会社組織のなかで機能するのか、あるいは実際に機能させるところまではいかずとも、なにかしらの有効な変化への呼び水となるのか?というところまでは、自分は判断がつかない。

ひとつは、著者がある意味コンサルのなかのコンサルとでもいえる元マッキンゼーの大ベテラン。
(そんな立場の方の言動を検証できるだけの、知性も蓄積も自分にはない)

そのうえで、本書で書かれている内容は―論理的ではあるのだが―かなり本能的な”感覚”の部分を必要とする処方箋であり、内容でもあるからだ。

この本能というか、感覚的なジャッジをベースとした行動の必要性、というものは最近自分もよく痛感しているので、素直にうなづける。

ただそれを進めていくと、本書にあるように、論理的な説明では説明できない断層とそれにともなう跳躍、という過程が発生する。

個人の感覚としてはそれはとても首肯できるものなのだが、果たしてそれが会社組織という、自然人とは異なるある種の組織生命体において機能するのか?というのが、自分の浅い経験からは、感覚としてなんともいいかねる―こういえばよいだろうか。

ただ非常に野生的な、というかエネルギーに満ちた文章なので、つられておもわずそのまま行っちゃいたくなる方々も多かろうなあ(笑)。

組織内部において、その組織の方向性に関与できるレベルの方は、読んでみると何かしらヒントはあるかもしれない。
特にその組織自体が閉塞感を強く感じているのなら、余計に本書の放つインパクトは大きいだろう。

ただし、そういった体力の落ち始めている組織にとって、本書はある種の劇薬としても作用する側面はあると思うので、結果、その組織としての寿命を早めてしまうかもしれない(苦笑)。

しかし、それはそれで、そういった状況を招くのであれば、やはりそれは組織としての寿命なのだろうから、これはある種の功徳だと思う。

そういうのを”引導を渡す”というんだろうな。

ある意味、慈愛にあふれた一冊だと思う。

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