第10回MMD杯私的選集

標準

先週末閉会したので例によってまとめておく。
今回は外部審査員に5名1社1庁(!?)を迎え、投稿総数なんと773本!


(1庁については↑参照)

定期的に開催されているコンピュータグラフィックスのアマチュア参加型の大会で、これに匹敵するものっていまおそらく・・・ない・・・のでは・・・・・?

いつのまにか凄いことになってる・・・・・よな?

今回、開催中の土日の午前中を使って集中的に見る→みながらtweetする、という形を取ったんだけど、そうしないと数が多すぎて後日まとめきれんと思ったわけで(汗)。

※以降、かなり絞ったつもりでもけっこうな数動画の埋め込みを行ってるので、開くときすこし重いかもしれません―ご注意を。


先に閉会式を貼っておくが、時間がないが全体は把握しておきたい、という方はこれをご覧になっておかれるとよいだろう。


ただ、上記を見てもお分かりいただけるかと思うが、実は優勝作品=総合的に素晴らしい作品、ということではない。
もちろん、技術だとか演出だとか素晴らしい部分があるので優勝=マイリスト登録率第一位なのだが、皆「それはそれ」と思っている節がある(笑)。

その証拠に、よく言われるのが「優勝作品発表以降の各賞が”本編”」といわれるように、ほんとうに実にさまざまな作品が自由に作られ、発表されている。

初音ミクの生みの親のクリプトンといい、ここの運営といい、このn次創作の時代にとってなにより重要なのがいい意味での「ゆるさ」というのをほんとよく判っていると思う。

しかし、しめるところはしめるのがまた素晴らしいところで、それが今回は(結果的に先方からのアプローチだったとはいえ)観光庁の審査員参加というところでさらに重みを増している。(まあこれは望んでやっているということではないと思うのだがw)

このあたりの運営センスというのはほんと抜群だなあ。

結果、本大会もずいぶんと大きな大会となってきて、参加総数773本。前回大会がレベルが高かったので減るかと思いきや90本弱も増えている。

これはもちろんこの大会だけでなく、普段から投稿されている作品や、その周辺のモデル・ステージ作成、エフェクト職人といった方々の少しづつの蓄積が、この5年でMMDというプラットフォームをここまで引き上げたということだろう。

前述のような「ゆるさ」も大きい(MMD=MikuMikuDanceであるが、いまやVOCALOID以外のモデルのほうが多いのではないか)

ということでしょっぱなはこれから行きましょうか。

この膨大な数のキャラクターモデルのほとんどがアマチュアユーザーたちの自作モデル。

もちろん元キャラクターがあるとはいえ、これだけの数のフリーのライブラリを誇る3DCGソフトなど、おそらくいま世界中のどこをさがしてもないだろう。

中盤からの各シーンはこの10回大会までの各大会優勝動画を模しているようだ。

なにげに地味ながら圧巻なのは、”女王”初音さんオンリーのシーンか。
(少なくとも前列の集団は全モデル別タイプと思われる・・・すごい・・・数・・・・・)

元モーションはインド映画で、このインド人はどうもMMDの開発者・樋口氏を模しているらしい(笑)。



ゆるくはじめたので、次もゆるい感じの一本を(笑)。
例の番組名物コーナーのパロディですな。やはりこのサムネイルになってたシーンで吹いた(笑)。



続いては例によってゲキド街を舞台にしたもの。
初投稿?の方らしく、技術的な面で言えばもちろん他の動画には劣る。しかしそれだけが評価対象にならないのが本大会の良いところ。

この作品は、ちゃんと物語としての導線を引いているので、再生数もちゃんと回っていた。
※ちなみに冒頭部のやり取りはこのゲキド街関連作品の定番・・・ということらしい(苦笑)。


続いては優勝作品ほかゲーム関連っぽいと思われるものをいくつか。

本作が今大会の総合優勝・・・らしいのだが、正直「?」ではある。
確かに技術的にはずば抜けて素晴らしいのだが、それだけの動画のような気もする。
おそらく(キャラはアイマスだが)元ネタのFPS系ゲームの人気の反映、ということなのだろうか。

自分がこういう物語性と関連の低いタイプの過剰な暴力表現がきらい、ということもあるが、下記の動画とあわせて、正直そういった元ネタの予備知識のない人が見ればちょっと引くレベルの描写だろう。



で、この動画はなぜ取り上げたかというと、これ海外からの投稿なんですね。おそらく香港?あたりからの投稿。
海外組からの投稿はまだまだ少ないが、確実に増えてきてはいるように思う。

この動画も優勝動画と同じく技術的にはすごいのだが、暴力描写に関して「ああ、自分らとはある種センスが違うんだわ」と思いましたな。
(FPS系もどちらかというと欧米が本場だろうし、格ゲーに関してもこういう描写なくもないが、ここまで”痛めつける”感のゲームは日本国内メジャータイトルでは少ないのではないか)

そういうことも含めて、今後”国際化”してゆく展開も、まったく絵空事ではなさそうなのが良くも悪くも末恐ろしい(苦笑)。



これもゲームネタっぽい。やったことがないのでわからないが、モンハンなのかな?
こういう風な引用・・・というかキャラの転用がなんとでもできるのがこのMMD界隈のおもしろいところ。
「このゲームやりたい!」というコメントがいくつもついていた。



これもゲーム、というかファンタジー系の一本
光学設計が非常に美しい動画。たしかにこういう感じのゲームがあるのならやってみたいと思わせる画面の美しさ。
まあこのあたりもお国柄の差と申しましょうか。



続いては上位入賞作品のなかで、自分も納得した一本。

これはもう、演出力、スピード感、そして話の骨子のばかばかしさといい、いちばん”らしい”動画だと思う。
ラストの天使と悪魔のショボーンな感じもかわいらしい。

こういう”よく考えれば無駄”なことに全力をかける、そういう余裕がいいんじゃない。

そういう意味では日本のこういう創作系ネットユーザーの精神的な成熟度というのは、見た面に反して意外と高いのかもしれない。



つづいては今回個人的に一押しの作品。

いやー、もうこれは動きといい、爽快感といい素晴らしい一本。
バレーの経験者の方から見ても「かなりハイレベルの再現度」とのコメントもついていた模様。

カメラワークが素晴らしいが、これに酔ったという人もいたようで、作者の方が通常視点版も上げてらっしゃったが、かなり作りこまれていた。

そういう基本をしっかり作ったうえで、このカメラワーク。曲も良い(これももとはVOCALOID作品のインストの模様)



この方も毎回ハイレベルな作品を作られる方なんだが、毎回まわりの作品のきらびやかさに押されて、本来以上に評価されづらいという不遇の方のように思う。

本作品も、各キャラクターの重心の制御なんぞ一体どうやっているの!?という感じなんだが、それすらも含めてのカオスの海に放り込まれて、全力で泳ぐようなモンなのがこのMMD杯ということだろうか・・・。



つづいてはミュージッククリップ系を何本か。

これも非常に素晴らしい。
元モーションは人が踊ったものがあって(いわゆる『踊ってみた』)それをトレースした、ということらしい。

各人それぞれのモーションを、一緒のものを使いまわさず個別につけてる、ということだろう。
その膨大な手間がこの自然なかわいらしさにつながっている。

なにげに長いスカートのウェイト設定がすごい。もの凄く自然だ。



これは原曲の持つ”意味”とシンクロさせ、MMDで再現したからこそ、より一層深い感動を持つった動画。

原曲はゲーム『Project Diva』の最新作(Vita版)のテーマ曲らしいが、このVOCALOIDムーブメントの中で、いちばん最初に表舞台に躍り出たSupercellの中心人物・ryo氏の心境をつづった歌詞で、昨年夏の発表時も話題になった曲。

その歌詞の意味をしっかりと汲み取って、彼らとともに戦ってきたMMDの初音さんたちが再現するからこそ、その背景を知る人間にとっては、深い感慨を感じざるを得ない一本。ブレイク以降~ラストまでが圧巻である。

数年後もおそらく残るであろう一本だと思う。



これはMMDに関しては初投稿だという方の一作。

しかしそのレベルの高さから”初心者詐欺”だとか”初神者”といったタグがついている模様(苦笑)。
それも納得。たしかに映像センスのレベルが違いすぎるw


PV系はこのほかにも数本ハイクオリティのものがあったのだが、ハイクオリティかつ直球勝負の作品となると、どうしても良くも悪くもマスプロダクトと同じ土俵で戦うことになるわけで、自分にとってはやや面白みにかける。

よってここではこれ以上は取り上げず。
しかし良い作品はたくさんあったので、気になる方は探してみてください。



前回大会でも話題になったデフォ子の旅シリーズ。
同じ技術力は技術力でも、画面合成という別の切り口のすごさを感じさせてくれるのがこのシリーズ。

もちろん技術だけではなく、そのストーリー性、音楽といったものがかもし出す独特の雰囲気もよい。
このソフトアニミズム的な世界観はこのかた独特のものだろう。



これは見逃していた一本。

ありきたりなドラマ・・・ともいえるが、そのありきたりなドラマを、ちゃんとこの尺のうちに落とし込める、観客を連れて行く、そこをきっちりと出来ている一本。

そこまでできるお膳立てがこのMMD界隈に揃ってきた、ということでもあると思うが、逆にいうと、ちゃんと地の演出力も問われるところにまで来ているということだろう。

ハクさんは相変わらず歌以外なら、芝居に格闘にと大活躍のようである(苦笑)。



生活ドラマ系を続けて。

これも非常にかわいらしい一本。この手の動画をみていつも思うのは、じつはこのMMDの元になったVOCALOIDが「しゃべれなかった」というのは実はもの凄く大きなな意味があったのではないか、ということ。

「しゃべれない=言葉に頼った演出は取れない」

ということである。なので動きやしぐさで見せる力を問われる。
そして実はそれはかなりハードルが高い。

しかしこの作品のようにそれを軽々と飛び越えていくものがいくつも生まれている、というのはよく考えるとすごいことなのではないか?



これも生活ドラマ系。

こういったVOCALOID界隈の”家族性”というのは、実はユーザーによる後付けである。(公式ではない)
しかし、じつはこの後付け設定がなにげに大きな力を持っているんじゃないだろうか。

そういう物語性の強さが=VOCALOID(特にクリプトン製のそれ)の人気背景にあるのかな、というのを改めて思った。



ここまでの動画の大半のメインキャラクターは、いわゆる”ニコニコ御三家”とよばれるらしい「VOCALOID」「東方Project」「アイドルマスター」のキャラクターモデリングがほとんどかと思うが、そういったところから離れて、MMD独自のキャラクターたちも存在感を持ち始めている。

その代表格が、いわゆる”モブ子さん”とよばれる、モブシーン用にあるユーザーさんが製作されたローポリゴンのキャラクターたちだ。

この動画では、そのモブ子さん系のキャラクターが主役となっている。
調べてみると、最初はこういった女の子や学生といったキャラクターたちがほとんどだったが、SWAT隊員的なコスチュームのものやおじさんキャラモデルも出てきている模様。

本作は、いわゆる「モノが頑張る」系で、個人的琴線にど直球ストライクである。
目立つ作品ではないかもしれないが、こういう作品がどんどん増えていってほしい。



これも同系統のキャラクターを使った作品。

MMD界隈でも、鉄道モデルを主に愛好する「MMD鉄道クラスタ」のようなものがある。
ローカル線や田舎の風景、バスなど旅情を誘う情景を描くのが上手いせいか、一部では「MMD鉄道」クラスタに外れなし的なこともいわれるようだ。

これも派手な動きをさせないことを逆手にとって、季節の移り変わりと、少女の成長―それを見守っていた人たちの時の流れを感じさせて素晴らしい。



そういった鉄道クラスタと本流のVOCALOIDが掛け合わさった作品がこちら。

ご存じない方に説明すると、この黄色い髪の女の子は、元々公式でなかった亞北ネルという女の子。

元はといえば、初音ミク発売直後ぐらいに噂された、巨大広告代理店・電2によるネガティブ工作の話題から産まれたキャラだったが、結果的にクリプトン追認のキャラクターとなった。
(某掲示板で、都合の悪い話になると「飽きた、寝る」といって姿を消すところからこの名前になった)

そういったネタも小ネタとして交えながらも、本筋はあくまでも親子の絆を描いている。
歌のよさもあいまって、非常にすばらしい作品だと思う。

他の作品もそうだが、これだけのドラマ性を5分40秒というレギュレーションのなかによく落とし込んだ。

今大会のドラマものの中では個人的に1,2を争う作品だ。



最後は一風変わったものを。

本作品は、自分も閉会式動画ではじめて知った。

今回話題となった、ゲスト審査員の観光庁さんチョイスの一作である。

これを選んだ、というのはなにげに大きな意味があっておそらく、他の作品もきちっと見ていないとこれをまず選べないよね?という。

そういう意味では、ありきたりなすりよりコメントだけをしていたファミマが株落ちたな(苦笑)。

今回の観光庁参加は、実は大会運営からのアプローチではなく、観光庁側からのアプローチだったようだ。
それに至った理由が前回大会でのこの動画。



審査員コメントでもその理由は説明されているが、これを受けて大会運営が「では第11回大会テーマの一つを”東北行きに乗って”にするので、再度審査員として参加してくれませんか?」と打診したところ、二つ返事で快諾してくれたとのこと(!)。



楽しむことが誰かを動かし、その動いた人が誠意を持って答えたことで、次の動きが起きる―。


そしてそれに反応した誰かが、またあらたに傑作を作り、それをみた人たちが思い思いに出来ること・やれることをやる、そういったことが拡がっていく・・・・・。


ひょっとすると、そういった”物語”の入り口に、いまこの大会に興味を持った全ての人が立っているのかもしれない。


この膨大な数の動画とユーザーモデルたちをみると、あながち夢物語じゃないような気もする・・・・・。




また次の大会もひーひー言いながら見ることになりそうだ、いまから楽しみである。

全ての参加者の皆さんに心からの拍手を。




※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

第10回MMD杯私的選集」への2件のフィードバック

  1. 飲マスク

    現在11回目のMMD杯が開催されてますが・・・
    今回は「題材が最低・クォリティは最高クラス」な作品が挙がってるので、感想が楽しみです(笑)

  2. niseikkyu

    コメントありがとうございます。
    先日より本選始まっていますね。今のところTwitterで気になった動画をメモがわりにツイートしてますが、本選結果発表後、またまとめて一つの記事にしようと思っています。

    今回は若干前回大会より投稿数少なめみたいですが、投稿終了日までどんな作品来るか油断できないので楽しみです。

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