Sleepless Nights/Aimer

標準

ひさしぶりにアルバムらしいアルバム1枚買ったような気がするなあ。

Sleepless Nights(初回生産限定盤)(DVD付) [CD+DVD, Limited Edition]
Aimer

Aimerと書いて「エメ」と読むらしい。2011年デビューのアーティストらしいんだが、wikiやamazonのカスタマレビューみると、収録曲のかなりの数がタイアップ曲のようだ。確かにデビューアルバムでこれだけタイアップついているというのは珍しい。全13曲=オープニングとエンディングは『TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR』―ということで実質11曲のフルアルバム。

最近は良いアーティストを既存メディアに頼って発見するのは正直至難の業で、とくに音楽雑誌媒体の当てにならなさというのは顕著な気がする。

比較的旬な―トータルクオリティはともかく若い子=時代の先頭のセンスという意味で―ボカロなどの「音楽的」側面を追っかけてくれてるのはゲッカヨなどのどちらかというとマイナー誌だった(が、それも経営的にきつくて残念ながら雑誌自体が撤退の模様だし・・・・・)

それはここで改めて語るまでもなく、業界全体が―特にパッケージビジネスの面でかなり苦しい状態にある、ということの表れだろう。

その結果、これまでは音楽性とは「別の要因」で売れていると見られて、蔑視されていたアイドルものやアニソンが、副産物的とはいえ確実にCDを売ることのできるジャンルとして、俄然重みを増した。

結果、自然な流れとして、才能のあるアーティストやミュージシャンがそれらのジャンルに流れ込むという状況が、ここ10年ほどで、より確定的になっているように思う。

加えて、ある種のリビドーを源泉とするアイドルのそれと違って、アニメなどのタイアップはその物語性がその源泉で(アイドルのそれとおなじくキャラ萌えというリビドー的な側面のものもあるが)その物語性が高いもののほうが爆発力が高いような気はする。

考えれば、音楽のもっとも原始的な形態である詩などにも叙事詩などがあったわけで、そういう意味で音楽においての物語性の重要さというのが、かつてのJpopの商業的な黄金期にもより増して、そのウェイトを大きくなっているということだろう。

とまあ、理屈を書きましたが、要はこのアーティストを知ったのも、タイアップしてたこれにノックダウンされたからでして(苦笑)。

(本アルバムにこの『RE:I AM』は未収録)

ただこういう物語的なものに対して、このAimerという人の声は負けていない―というかそれをよりブースとさせていた―なので、これならフルアルバム買っても期待できるだろう、ということで買ってみた。


結果、ここのところなんだかんだでけっこう廻している。


このネット全盛の時代の弊害で「アルバム」というものの位置は低下しているが、この一枚はアルバム全体を繰り返して聴けるクオリティにある、というのは意外とデカい。

その最大の要因はなんといってもこの「声」にあるだろう。

もともと”低い声スキー”(苦笑)で、アキバとかでチラシ配ってるメイドさんにアニメ声かけられると「どくのぬま」を通っているドラクエのキャラのようになる自分というのもあるが(泣笑)、それだけでなく、ちょっと独特な感じがあってそれが落ち着いて聴けると同時に、ある種のクセになるようだ。

以前に取り上げた栗山千明のシングルのプロデュースとおなじく、agehasprings所属の方が手がけているようだが、それだけでもないらしい。
(事実そうかと思っていたRE:I AMは別のラインのようだ)

自分がおっさんになったせいか、このアルバム自体に強烈な衝撃を喰らった、という感じはしないが、シングル曲を聴いてアルバムを買ったというのは正直久しぶりだった。

そういう意味では、確実に心を動かされた―そういっていいのだろうと思う。


混じりけのない純粋な”音楽”というものがあるとして、それを自身の命と見立てているという層には不本意かもしれないが、こういう形でも良いので、良いものがどんどん拡がっていってくれれば、それはそれでよいのではないか―自分はそう考える。

”物語”は決して音楽と相(あい)反するものではない。

時には共鳴し、見るものの、聴くものの魂を揺さぶる。


それはやはりある種の”ハーモニー”といって良いのではないか?



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