【レビュー】『Torches』/Aimer

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Aimer最新シングル。アニメ作品とのタイアップということもあるが、再び「夜の世界」を歌うとの宣言のあった後、最初に切られたシングルのタイトルのタイトルが「Torches(たいまつ)」というのもなかなか興味深い。

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Aimer
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実はこの曲、最初は非常にとっつきにくくて─ボーカルメインの導入部からバックが加わり厚みが出る部分への切り替わりの譜割りに違和感があり、サビのコーラス部分などは非常に好みなのにいま一つ没入感に欠ける印象だったのだが(Aimer作品のAgehaSpringsチームの作品ではたまにこういうおさまりの悪さを感じることがある)、実はデジタルだけで本作よりも前にリリースされていた『STAND-ALONE』から続けてきくとすごくしっくり聴けた、不思議。

STAND-ALONE
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ただテーマ的にも『STAND-ALONE』から続けて聴くというのはすごく正しいのかもしれない。『STAND-ALONE』はリリース時に取り上げなかったが、実はなんとなく非常に問題作のような気がしていて、前述の再び「夜の世界」へ、ということともダイレクトにリンクしている一曲のような印象が強くあった。なぜかというとこの『STAND-ALONE』という曲はAimer内製チームの作品としてはかなり激情が前に出ている曲ですごく珍しい。加えてこれまでの作品群からそれらを象徴するキーワードがちりばめられ、ある種それらとの決別すら感じられるような内容。そしてその激情の吐露をうけてからの静かな夜の凪いだ海からひとり松明をかかげ、静かに嵐のなかへ船出していくかのような『Torches』という画が浮かんで個人的にようやくしっくりきたというか。

ナタリーなどのインタビューを読むとカップリングを含め今回の収録曲はあえてポップ的な曲になっていない的なことが書かれていたが、個人的にはカップリングの曲はすべて素晴らしいと思う(ある意味タイトル曲の『Torches』よりもいいかも)。『Blind to you』はテーマ的には最初期作品と同根のようなものを感じるがこちらの方がはるかに磨き上げられていてより感情に訴えかけてくる。『Daisy』は個人的に好きなブリリアントグリーンの一曲『You&I』的なアメリカンフォーキーな感じがあって、いまこういう曲を出せるアーティストは意外といないのでは。

また本作品には夏前に行われたアジアツアーの中から中国公演のテイクが2曲収録されているが、これもなかなか興味深いチョイス。なぜかというとこの2曲『BlackBird』『I beg You』はおそらくご本人のコンディションという点でいうとベストのテイクではないと思われるが(聴けばわかると思う)、しかしそれでもこれ以上ない最良の選択だろう─要はいま現在のアーティストとしてのAimer、その嘘偽りのない状態をすぱっとさらけ出しているテイクなのだ。これを堂々と入れてこられるというのはまごうことなき自信の表れだろう。そしてそれだけのものをここ数年の彼女は間違いなく積み重ねてきていると思う。『I beg you』のラスト、観客からのあの声援のもたらす偶然を含めて非常に良いテイクを選んだといえるだろう。

そして例によって今年も秋から冬にかけてのツアーが発表された。例によって最終日の東京国際フォーラム当たったので観にいく予定だが、それまでにもまた二転三転と新しい側面を見せてくれるのではないかと期待は高まる。

いやしかしツアー規模といい回数といい、もうすっかり大人気アーティストですな。
これまでの地道な努力が実を結んでいるということだろう。一ファンとして素直にうれしい。

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