六本木という土地柄、加えて森美術館―六本木ヒルズの、それも53階―という条件でなんとなーくいやな感じがしており、二の足踏んでたんだが、別件で近くに行ったので、えいや!っと観にいってきた。
会田誠展~天才でごめんなさい
結論から言うと、観にいっておいて良かった。
立地に関しては、上述のようにあまり良い印象のない要素のかたまりなんだが、さすがあぶく銭で立てられたビルだけあって、美術館としてのスペースとしてみた場合、天井が高く、贅沢な印象だ。(それでもなんで50階以上のスペースにこんなモンを作るのかは理解できないが)
高速エレベータを降り、表示に誘導されていくとエントランスに巨大な赤提灯と本展示の大きな垂れ幕。
そこからまたエレベータで上がって、ようやく展示スペース、ということになる。
自分的にも世間的にもおそらく会田誠、といわれてぱっと頭に浮かぶのは、例のキングギドラと巨大フジ隊員の一作―あの妙に変態チックなのに美しく見える一品だと思う。
なのでとりあえず本展をみたら
「変態だー!?(AA略)」
と、ツイートでもしようかと思ってたんだが、目論見が外れた―思った以上にまともなのだわ。
いや、もちろんなにを持ってまともとするか以前に、どこまで作者の意図を作品から汲み取れているのか?というとはなはだ心もとないのだが、とにかく作品から受ける印象は―そのけばけばしさや悪趣味な感じに反して―あまりいやな感じがしないのだ。
社会性を強く感じさせる作品群が多い、というのにもかかわらず、なんとなく
「あー、社会性を取っ払って才能を好きなように暴走させれば、意外とこういうところに落ち着くのかもしれんなあ」
と、ある種の納得を感じたというか。
(けれど、その丁寧すぎるほどの作品キャプションでは、やはりかなり社会的な要因を吸い込んで作品が作られている、というのもわかるのだが)
また、その作品をほとんど知らずに比較するのも失礼な話なのだが、よく物議をかもす村上隆氏と(全部ではないにせよ)部分的に共通するようなアプローチを取っているにもかかわらず、なぜ会田作品のほうが嫌な感じがしないのか?という疑問に対する答えもなんとなく見えた。
要は”引用”と捉えられるか”模倣”と捉えられるかの違いのような気がする。
会田氏のそういったマンガやアニメ的なアプローチというのは前者のように思えるし、村上氏のそれには後者と受け止める人が多い、ということだろう。
(もちろんこれは現時点ではアンフェアな印象論でしかないが)
そしてなによりも、会田作品のほうが、作品から受ける心象が(それが作者の意図したものかは別として)我々俗人にとって、近いメンタリティをもった存在が作ったように感じられるからだろう。
なんとなく”わかる感じ”がする、とでもいえばよいか。
ただ、個人的に一つだけ分かりづらかったのが、例の物議をかもしていた、四肢を欠損し首輪につながれた少女のシリーズだ。
あれだけはどういう意図があるのか、というのが少し読めなかった。
ただただ美しく、変態的である、という点では氏が言うように「ターニングポイントになった」重要性がある、ということなのかもしれない。
上記シリーズに限らず、変態的で残酷、その倒錯性―されど徹底して美しい描線、そのアンビバレンツさ。
そういう意味では、ある意味こういった”日本的な”二次元文化(絵画に限らずひろくマンガや印刷物をも含む)の最先端を体現している作家、ということが出来るのかもしれない。
ある意味、その変態性も美しさも、いまの日本を現しているということだろう。
観ておいて損のない、なかなか素晴らしい展覧会だったと思う。
もうちょっといろいろ言いたいことがあったような気がするのだが、上手く言葉にならない。