先日本屋にいったら出てたので。連載中断後、再開してるらしいのは知ってたが、単行本意外と早かった。
『ビリオネアガール(2) (アフタヌーンKC) 』
ヒロインの紫(ゆかり)は主人公・恵の学友たちと郊外へバーベキューに出かけ、はじめて歳相応の楽しい時間をすごす。そのバーベーキューの買出しのために普段動かさない1億円という額を口座に動かしたため、後日銀行から確認のための訪問―という名の営業があり、付き添いを頼んだはずの恵がそのとき出てこなかったのを理由に、紫は恵に買い物に付き合うようにいうのだが・・・果たして億万長者の買い物とは?
マンガ担当の桂明日香氏が出産休業で休載していたようだが、中断・絶筆とならず、無事再開となったのはめでたい。
当時は休載の事情知らずに、別誌で読んでたハニカム強制終了っぽくおわったので「すわ、講談社の陰謀か!?」と疑ってすまんかった>講談社。
本巻はそのブランクがあるにもかかわらず、全く違和感なく前巻からの続きという形でスムーズに入っていける。
億万長者であるが故にひきこもりにならざるを得なかったヒロインの紫(ゆかり)が、主人公の恵の助けを借りながら、徐々に外の世界に触れていく様が描かれている今巻―だが逆に恵は「頼ってくれているのに会話にも付き合えないようじゃ駄目だ」と株の世界への入り口をくぐる。
現状、そういう意味では、それとなく魅かれあっている二人がそれぞれの世界を知ろうとする、という展開だが、おそらくここからが本編だろう。
前巻のレビューのときにも書いたように思うが、なにせお金という魔物―それも億単位の金額が作中では動いているのである。
(本巻でもヒロインのゆかりは最大の負け額を「14億」と告白し、一度誰かに言ってみたかったと微笑むのだ)
そして主人公の恵は株取引に足を踏み込むことになるが、なかなかそのときの表情が見ものである。
おまけにマンガ担当しているのが桂明日香氏―どう考えてもこのままほのぼの株ラブコメで終わりそうにわないわな~?(笑)。
また、巻末にテキストでのショートストーリー「Priceless」が原作の支倉氏の手によって書き加えられている。
このエピソードでは「お金で幸せは買えるのか?」ということが問われているが、先例として挙げられた億万長者たちは誰も幸せになっていなさそうだ、ということがあげられている。
このあたり偶然だが、ここのところとびとび原作を読み返していた『まおゆう』にもそういうシーンが出てきた。(勇者が青年商人に問う「”損得”で割り切れないものを探してくれ」のシーン)
自分はこの原作の支倉氏のことは知らなかったんだが、『狼と香辛料』という作品を書いてらっしゃる方のようだ。
ちらっとその作品に関する書き込みをみた際には、その作品もやはり経済的な要素を扱っている作品らしい。
まおゆうといい、やはり時代がこれだけ金融資本主義全盛になってくると、こういったエンターテイメント作品も出てくるということだろうか。
個人的には、ここから先の数年の制度や経済環境の変化で、こういった金融資産の運用の有無で、残酷なぐらい個人資産の差が開いていくような気がしている。
その意味でも、ある種タイムリーな作品かもしれない。
まあ、それを抜きにしても桂作品のヒロインは(設定はともかくw)皆愛らしく、かわいらしいキャラクターばかりなので、それ目当てに読んでみるのもオススメではある。
※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正