同じく隣町のbookoffにて。1冊105円x3巻。
おそらく、ここまでの桂作品のなかで一番この作者の持っている要素が全て体現されている作品ではないか。
ある意味”代表作”といってもいい内容だと思う。
これはbookoffで購入して正直すまんかった。ファンとしてはちゃんと定価で購入するべきだった。
『花やしきの住人たち』
放蕩人の父を持つ桜安芸は、その父の失踪に伴い祖父が理事を務める聖花女子高等学校の女子寮―通称・花やしきへ住むこととなった。そこで出会った北広蓮華、恵庭あやめ(杜若)との奇妙な三角関係が始まるが・・・。
桂作品の常道で、明るく少し抜けている陽気なヒロインから物語は始まるが、これも他の作品と同じく、複雑な背景を持ったもう一人のヒロインが登場し、物語は一気にその相貌を変える。
詳しくは是非読んでみて頂きたいが、キャラクター、物語の構造といった点で、この著者の他の作品の中に透けて見えるそれぞれの要素が、本作品ではいちばん濃厚に―ある種原液のような状態で現れている。
一つには物語の骨子に親子問題―それも家庭内の児童虐待というシーケンスを、脇道の一つとしてではなく、テーマを支える骨子として、逃げずに取り入れているからだろう。
物語はいったん壊れたそれぞれの関係が、再生していく過程を描いて終わるが、無理に解決させていない、というのもいい。
傷は癒せないが、それでも生きていくしかないのなら―。
流した血の上に、せめて花が咲くように祈るしかないではないか。
若くして、そういう諦観を強いられた子供たちの物語。
傑作―である。
※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正