日本の弓術/オイゲン ヘリゲル

標準

隣町のbookoffにて。105円。

日本の弓術/オイゲン ヘリゲル

大正時代、東北帝大で教鞭をとるためにやってきた著者が、その5年の間の修行について語った講演を基にした一冊、ということらしい。

いや、めちゃくちゃ深い本。

一つには、外国人である著者が、弓道というものを知らない母国の人々に対して語った、ということもあって、非常に平易な言葉で語られている、ということがあると思う。

そのうえで、自身が専門としていた西洋的な哲学を一度全てを捨て去って、深いレベルで「弓道」―その真髄を学び取ろうとまでした人が書いているので、その平易な言葉に反して、内容がめちゃくちゃ深い。

嘘かほんとか知らないが、あのスティーブ・ジョブズも愛読していたというのも、なんとなくわかる。

ただいまの社会にあって、こういう深い思索へ親しみを感じる人は、おそらくあまりまともに遇されないだろうな。
なぜなら、いまの世の中で幅を利かせている「効率」とか「経済性」といった言葉は、ここに書かれていることととは正反対だからだ。(本書を読むとそれらが西欧からの「輸入品」であることが良くわかる)

それ考えると、本書を愛読したというジョブズのアップル製品が、昨今の世の中を席巻しているのも、なんとなくわかる気がする。

「効率」とか「経済性」という言葉が、必ずしも世の真理の全てではない―そういうことだろう。


論理性や効率というものを越えた、理外の理とでもいうべきものが、おそらくそこにはあるのだと思う。



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