ヒアアフター

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ヒア・アフター



昨年春公開の一作だが、冒頭のシーンと3.11が被るということでイーストウッド作品の割には短期間でフェードアウトしたように記憶している。

フランス、イギリス、アメリカのそれぞれを舞台に、死後の世界を垣間見た人たちが偶然に導かれて交錯する様を描いた作品。

臨死体験したジャーナリスト、幼少時の病で望まずに力を得た霊媒、母と別れ兄弟をなくした少年それぞれの視点で「ヒア・アフター」を垣間見るという筋立てだが、そこから受ける印象とはことなり、どちらかというとその「死後の世界」を媒介にした人間ドラマといったほうが正確だろう。

なので多くの人が興味を持つであろう、肝心の「死後の世界」の描写はほとんどなく、ストーリー進行上のディティールのような気がする。(よく意識してみればの話だが)

これがイーストウッドならではの”良識”なのか、あるいはキリスト教圏での文化からすると十分な”不思議さ”なのかはわからない。

ただ、オカルト・幽霊・悪魔に妖怪なんでも来いないまの日本では薄味な感じはするわな。

この薄味さ加減というのが品のよさにはつながってはいるのだが、イーストウッド作品の地味に見えて重厚な味付けを期待していた身からすると、やや凡庸な一作に見えなくもない。

ただやはりその人物描写というのは毎回感心する。
地味で派手さがないのに魅力ある人物の演出―特に本作でもそれぞれのキャラクター設定だけとりあげれば、いくらでも俗悪なキャラクター描写になりかねないのに、全くそのそぶりすらも感じさせない。上手いなあ。

ただ作品としては可も不可もなし、というのは変わらず。
テーマと思しきものへのツッコミが足りない―というかなかったからかな。


※昨年公開時、上映中止とかになったのは、冒頭の津波のシーン(2004年のインドネシア?)があったからだと思う。

しかし恐ろしいモンで、この素晴らしく上手く撮影しているシーンすら、あの現実を見せ付けられたあとでは軽く映るのな・・・。

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