異才・塚本晋也の代表作、20年ぶりの新バージョン!
―ということでみてきたんですが~
ある種世界的なカルトフィルムとして名高い『鉄男』『鉄男ⅡBODY HAMMER』、その正統続編、それも20年ぶり、おまけにNINがテーマ曲書き下ろし!
ということで期待して見にいったんですが、ちょっと残念な感じの作品でした。
twitterの公式アカウントで「爆音!爆音!」といってたとおりかなりの爆音サウンド、それも正真の「インダストリアルサウンド」なので、この時点で実はけっこうきつい―それもストーリー上これでもか!という前半の部分でその轟音がかなり長時間続くので、正直ここで物理的に体調悪くなりかけた―ぶっちゃけこれはやりすぎだと思う。
ご存知のようにポピュラーに敷衍された”インダストリアル・ミュージック”とちがって石川忠のそれは筋金入りの”ホンマもん”のインダストリアル・ミュージックなので、じつは正常な神経の人間にあの音をあの音量であれだけの時間聞かせるとかなり神経にくると思う。
(正直体調の悪い人とかにはとてもオススメできないレベル)
ましてや映像のほうも前半、物語を展開させる部分に関してはけっこうキツいビジュアルが多かったりするので二重苦だった―正直これがこの調子でずっと続くのなら途中で出ようかと思った。
しかし皮肉なことにというか滑稽なことにというか―主人公が鋼鉄のバケモノと化していくごとにそのキツさが薄れていくんですね(苦笑)。
なぜか―?
だっていちばん長くみることになる
鉄男のビジュアルがアレじゃ
そらイカンでしょ!?
いやーこれ見ていただければわかると思うんですがぜんぜん禍々(まがまが)しくないの。
なに?この鉄製のアンパン?
みたいな。
正直ね、そこまでのサブビジュアル―出生の秘密にあたる”鉄男PROJECT”のデモーニッシュな感じとか主人公の両親―とくに母親役の中村優子のビジュアルの見せ方はかなり気味が悪くていい感じだった。しかし
肝心の
鉄男自身のビジュアルが
アレじゃアカンやろw
そして今回はクライマックスでこれまでと異なり”発射”してしまわずに”飲み込んで”しまっている。
まあ、これは塚本監督の年齢的な心境の変化ということならそれでもいい。
ただ、その”飲み込んでしまう”部分にカタルシスが足りないんだよなあ―前半飛ばしまくってただけに圧倒的に。
そういう意味では通常のエンターテイメント作品としてのバランスでは『鉄男Ⅱ BODY HAMMER』に劣り、わけのわからないエネルギーさ加減ということでは第一作『鉄男』に劣る。
上記二作は自分DVD持ってるんだが、この『THE BULLETMAN』は手元に置いときたいなーというところまでいかんような気がする。
総じて強調するべきポイントがところどころ微妙にずれていて文字通り”残念な”作品、といわざるを得ない。
ただ監督ご本人の怪演は相変わらずすばらしかったし、フィルムとしてのエネルギー、細部のライブ感というのはすばらしいんだ、だから―ますますもってそのポイントのズレが惜しい、というか(泣)。
これはぜひハリウッド資本とかに逆に縛られてみての『鉄男4』とか撮ってみていただきたい。
それのほうが”作品”としての傑作は産まれ得るような気がする。