リリースラッシュの続くAimer、それも予定を見る限り以降も含めほぼコラボ中心、その中にあって今シングルはONE OK ROCK、凛として時雨というメジャーなバンドのコアメンバーとのコラボレーション。期待は膨らむが、いい意味でいろんなことの見えた面白い一枚になっている。
SME (2016-07-06)
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ワンオク、凛として双方ともに確固とした存在感のあるアーティストで、個人的にも評価できるアーティスト。凛としては客層を選ぶだろうが、それでいて一定の立ち位置をちゃんと確保しているのはやはり実力の証だろうし、ワンオクに関しては「ああ、ようやく日本でもネイティブにこういった音を出せるバンドが出てきたんだなあ」と嬉しいジェネレーションギャップを感じて以来、高評価なバンド。
で、その両者とのコラボであるが、周辺情報を確認する限り、けっこう双方ともAimer側とのしっかりとしたやり取りの上で本シングルに収録の曲は仕上げてきた模様。Aimerはこれまでかなり他のアーティストのコラボ作品を発表しているが、こういう膝つきあわせてのコラボというのはあまりなかったように記憶しているんだけども、そういう意味でもどういう作品になっているのか興味深かった。
で、結論から言うと、両方ともいい曲なんだけども、それぞれコラボ相手のカラーが強く出てしまっていて(逆にいうとAimerである必然性のところが薄くて)なんとも作品としては評価に困る感じといえばよいだろうか。ただこれはちらとどこかで読んだ限りだとAimer側からの要望でもあったっぽい。(コラボ元に対してバンドカラーを消さないでほしい的な)
そういった経緯もあるんだが、この2曲とも、おそらくそれぞれのバンド側のボーカルで歌われていたとしたら上に書いたような評価に迷うといったことはなく、間違いなく「良作!」という評価で聴けていただろう。
ではなぜこうなったかというと、やはり今回コラボのそれぞれのバンドは自分たちのスタイルをふまえた上でAimerとコラボする故の独自性を出すことができるまでは器用ではない、ということなんだろうな。これは悪いことではなくて、むしろそういった不器用さ=独自のスタイルが確立しているからこそ、この厳しい国内の音楽業界のなかで双方確固たる立ち位置を築いているわけで、それは逆に言うと真なるアーティスト性の証でもあると思う。
そしてそれは、このAimerというアーティスト自身の「声」にもいえることで、元々このスタイル以外に(広い意味で)器用にスタイルを変えるには限界があるタイプの声(だいたいが喉に爆弾抱えてるが故のこの声なので)。そのなかで双方それぞれ互いにすごく健全にコラボしたばかりに、あるいは双方互いを大事にしすぎたばかりに、残念ながら良い化学反応にまでは至らなかった、そういった感じだろうか。
実はこれまでのコラボの中でおそらくいちばん数多く組んでいる澤野弘之氏との作品を聴いている中で「澤野さん完全プロデュースだけじゃなくてイーブンのコラボとかやらんのかな〜」と思ったことがあった。けど今回のシングル聴いてみて、それも場合によって善し悪しあるんだな、とわかったのはいい勉強になった。
とはいえ今回のこの2バンドの提供した曲、自分のようにハードルをあげて聴かなければ普通に良シングルといってもいいシングルだ。そして各バンドのカラーが強いと書いたが、そういったともすればこれまでの自分が表現できる領域の外へと、Aimer自身が表現の幅を広げようとしていっている積極的な挑戦は大いに評価する。その挑戦が現時点では(こちらが聞き慣れていないということも一因だろうが)しっくり感にまでは至っていないのは事実だが、こういう色の強い楽曲たちを「数」を歌いこんでいくことによってAimerが「自分の曲」として取り込んでいける可能性というはまだ十分あるわけで、そこはむしろ期待している(今年は彼女最大の公演数のホールツアーが決まっているわけだし)。
このAimerというアーティストの声はコラボ映えがする声だし、以前の『誰か、海を』前後のプチコラボラッシュの時に自分も「是非このコラボ路線は続けてほしい」と書いた記憶がある。そしてそれは今も変わっていないし、このシングルもそういう意味では評価すべき一枚。またワンオク、凛として側からすると今後他者へ曲を提供することがあるなら、今回の作業はいろいろ得るものはあったんじゃないだろうか。そういう意味では、数年後、またお互いのできることの幅が広がったタイミングでもう一度是非コラボしてみてほしいと思う。
そしてAimerはこのあとにもRADWIMPSとのコラボシングルが控えている。今回書いたことが的を射た内容だったかどうかというのは、そのシングルを聴いてみるとよりはっきりするのかもしれない。
けどこういう建設的な作業の結果で来た作品というのは(繰り返しになるが)内容はどうあれ、基本歓迎すべき存在なんだよね。なのでこういった駄文に関わらず、こういうコラボ路線は今後もどんどんやっていってほしいと思う。
※個人的にこれまでAimerコラボ作品の中のトップ3をあげると『RE:I AM』『誰か、海を』『Words』・・・になろうか。
前者2曲は澤野弘之、菅野よう子(青葉市子作詞)というある意味コラボ的なものに関して普段から仕事として「当たり前」にこなしている劇伴作家であるので、それと比較するのは少し酷かもしれないが、澤野・菅野両者の作品はそれぞれのコンポーザーとしての色をきちっと出しつつも、間違いなくAimerの作品にもなっている。今回コラボの独自色の強いロックジャンルのアーティストにそこまでの器用さを求めるのは間違っているかもしれないが、彼らにはそういった幅も今後は広げていってくれることはつい期待しちゃうな。両方ともとてもいいバンドだと思ってるので。
※あと全く関係ないんだが、Aimerツアーバンドのギターの方が最近話題のBABYでMETALなキツネ様に憑依されると○バンドになるあの方とはこないだ初めて知ったwマジかw
SME (2016-07-06)
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