いわずと知れた山本周五郎の代表作の一つ。
山本周五郎の小説―新潮文庫に入っているそれは、恐らくほとんど読んでいるのだが、何冊かだけ―それもいわゆる世間的には名の通っているものを、なぜか残していた。これもその一つ。
司馬遼太郎のそれと違って、山本周五郎は意外と読んでいる人、読んでいない人がはっきりと分かれる。
いや、読んだ後に、はまる人とそうでない人、といったほうが良いかもしれない。
一部の人は毛嫌いする人もいるようだが、おそらくその人たちは、そこにある種の偽善的なものを見せ付けられたような気になるからだろう。
ただ、もちろん周五郎のそれは偽善のそれなどではなく、真摯に人生の生きづらさと向き合ったそれだと思う。
だから、ある種そういった、現実の重みの真実を含んだ物語を見せ付けられるのが苦痛な人は、周五郎作品を嫌うだろう。
けれど、おそらく今後はきっといまよりも、もっともっと氏の作品は求められていくようになると思う。
世間や人間関係に痛めつけられ、けれどその世間や人間関係によって蘇生してゆく本作を読むと、それを改めて強く感じる。
山本周五郎にリアリティを感じない幸せな時代、というのは、おそらくここ一二年で終わりを告げたのだろうと思う。
氏が草葉の陰で、それをどう感じてるのか、自分には想像もつかないが―。
度々お邪魔します。
山周作品は昔大ファンで全巻持っていた気がします。
「さぶ」は一番最初に読みました。山周の代表作みたいな感じですよね?
「五べんの椿」と「樅の木は残った」あたりが好きでした。
あと「のうぜんかずらの花の下で約束をする・・・」話とか短編でありましたね。美しい情景が思い浮かぶせつない短編だった気がします。
こういう人と人との関わり合いの優しさと言うか、情緒と言うか、熱い深みのある小説って今は余り無い気がしますが(偽一休さん程、読書家じゃないので、知りませんがあるのかな?)
気のせいかもしれませんが、近年のエンタメ小説を読むと、何だか感覚が醒めている気がしたりして、いまいち入り込めないのは旧人類だからでしょうか?(笑)
最近の作品では、鷺沢萌さん当たりが近い気がします。この方もかなり昔の人ですが、早くに亡くなってしましいましたね。
彼女の作品も、すごく醒めている、と思うけれど、その実ものすごく人恋しさがどこかに溢れている気がするんです。私はこの人の作品は天才だと思います。
いろいろ読んで頂きありがとうございます。零細ブログの極みですのでリピーター様大歓迎です(笑)。
山本周五郎は自分の場合「長い坂」が一番ですかね、ただし万人にはお勧めできないです(暗くて重いので)。
周五郎のすごいのはこれとか「虚空遍歴」のようなものすごく重い大作からギャグマンガのようなコミカルな作品、ほろっと泣ける掌編などを同列で書いていることですよね。
そしてそのどれもが、いまの時代の人間に一番欠けている人の情、というか心のありようをテーマに据えていると思います。
中学校の国語の教科書とかで短編でいいので、ぜひ日本人全員に読ませるべきだと個人的には思っているのですが(苦笑)。
読書家と言っていただくとお恥ずかしい限りなのですが、本―特に小説のそれはある意味人との縁と似たようなところがあると思います。
長年手元に持っていても読まなかったり、記憶に残らなかったり。あるタイミングで読んだからこそ意味があったというような。ある種の出会いですよね。
人とのかかわり・・・ということになるとこれもSF畑の方になるのですが、梶尾真治氏の作品などよいかもしれません。
有名どころだと『黄泉がえり』ですか。ほろっとさせると言う意味では『クロノスジョウンターの伝説∞』などがとっつきやすいかもしれません。
いわゆる一般書店で平積みにされるような小説家・・・はお恥ずかしながら逆にあまりしらないのです。
それに小説は意外と当たり外れのリスクがおおきいメディアですので、ベストセラーでもそりが合わないとそこまでの時間が無駄になります。
(DVDやCDのように途中であたりはずれわかりにくいので)
読ませる、ということでは宮部みゆき氏や恩田陸氏なんかは読後感はよかったように思います。
またmominyanさんもお勧めなどありましたら教えていただければ。