web広告で数カットだけ写ったものが気になって読んでみた。
自分も父が数年前に亡くなり、母も最近やや健康状態が心配なこともあって、本作で書かれている老々介護の問題の部分にはリアリティを感じざるを得なかった。
ただ本作の素晴らしいところはその点だけに終わらず、そういった老人社会と絡まって存在している村社会の描写にもスポットを当てたところだろうか。
この老夫婦の最後はけっこう涙が止まらなかった。
『よろこびのうた (イブニングコミックス)』
一部実話を元にはしているらしいということだが、あえてそこは詳しく調べていない。都市に住む我々はついついその都市の常識で介護問題を語りがちだが、本作で書かれているような村落での介護問題はまた違う景色があるということだろう。
そしておそらくこの作品で書かれているような老々介護というのは(悲劇ではあるのだが)まだ幸せな部類だろうと思う。ある意味まだ余裕が感じられるというか。
だからこそもう一つの「事件」が介護の問題にも絡んできて、最終的には「村」という小さなコミュニティの中ならではの結末を迎えるのだが、そんな小さなコミュニティの中だったからこそこの優しい結末は起こりえたというか。
悲劇には違いない。ただそこには日本人独特の諦観というか、いい意味での「しかたない」というものの捉え方があるように思う。結果老夫婦は少年の人生を結果的に救い、けじめとして自分たちの最後を自分たちで選択する。
作中で起こっていることに当事者として出くわしたなら大いに迷うところはあると思うが、作品の中だけで描かれているものとして考えるのならば、その法を越えてしまったいろんな物事は、ある種の”救い”であったのだろうと思う。
いろいろ考えさせられる作品である。チャンスがあるなら、ぜひ一度目を通していただきたい一品だ。