定期レンタルで。ツラい、ツラい一本やのー(泣)。
震災この方、なんか結構な割合でキツい映画にあたる。
(いや、自分で選んでるんですけどね;)
かつての花形レスラーだった男、しかし歳経るにつれて身体にはガタが来、これまで省みなかったいろんな物事のツケが彼にのしかかる。
その現実に彼は彼なりに向き合おうとするが、そんな彼の居る場所はやはりリングの上―そこしかなかった。
そういう話。
この前後から主演のミッキー・ロークは大きく再評価されたと記憶しているが、それも納得。
一度は頂点を極め、どん底に落ちて舞い戻ってきた彼だからこそできた演技だろう。
(そしてその全盛期の軟派ぶりからはほど遠い鍛えられた肉体の素晴らしさ!)
日本でもプロレスについてはやれ「八百長だ」云々の話がいつもついて回る。
ある文脈の上で、それは正しいのだが、作中、主人公はファンの期待を裏切らないため、常に身体を鍛え、肌を焼き、時には薬に頼ってまで”レスラー”の身体を維持する
こんなの「プロレス」そのものについて真剣じゃないと絶対できない。
決して人間として立派でもないし、「器用」な生き方からは程遠い。
けれど彼は彼自身の”リング”に対しては誠実だった。
それがたとえつらい現実から逃れるための手段であったとしても。
それを見せ付けるかのように、作中ことあるごとに、繰り返される無言の背中のカット―その肩幅のなんと饒舌なことか。
そしてラストのトップロープからのダイブとともにカットは暗転し、ブルース・スプリングスティーンの歌声が聞こえる。
美談でも、単なる愚か者の話でもない。
ただ、こういう生き方しかできなかった―ある一人の男の生き様の話。
たぶん女性が見てもあまりピンとこない映画かと思う。
逆にこれみてピンと来るという女性が近くに居る場合、その場合は慎重に対処したほうがいい。
なぜなら、その場合かなりの確率で、その人は慈愛に満ちたこの世の女神様か、DQN好きの地雷愛好家のどちらかだろうから。(苦笑)
ただ、たぶん男が見たら胸に痛い、けれどなにかを感じざるを得ない映画。
逆にこの映画を見て、鼻で笑うことしかできない男は気をつけたほうがいい。
なぜなら、その男はかなりの確率で、人としての経験の薄い若輩者か、小器用さしかしらない実のない男だろうから。
もしこういうやつが身近に居たら
「アホやのう」
そういつつも、うなづいてやる―それぐらいはできる男でいたいと思う。
そういう心持だけは忘れたくない。
そう思った一本。