【レビュー】『ファイブスター物語 16巻』永野護

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いちおうここまでレビュー続けてきてるので頑張って今巻もやっとくか。 (2021年10月初旬刊行)

映画『花の詩女』以降、連載に戻ってからこれまでのことがずーっとコンスタントに作者の永野センセがほぼ休載なしに描き続けてるので、この刊行ピッチもある種必然。この長い物語の最初から付き合っている一人としては単純にありがたいことである。

しかし途中から読み始めた新規の読者層からすると久々に「なんじゃこりゃ~!?」な巻ですな、この巻は(苦笑)。我々はこんなのをなんの準備もなしに読まされたわけですよ、当時(苦笑/単行本5巻相当分)。

『ファイブスター物語 16』

体調の問題が一部の関係者に気づかれ始めたフィルモア皇帝・ダイ・グは束の間の休暇を取るが、そこで幼少時、バランシェ邸で顔を合わせていたラキシスと偶然再会する。彼を案じるラキシスにダイ・グは「アマテラス陛下ならどうされるのでしょう」と国(惑星)を失おうとしている民を預かるものとしての重責を漏らす。その前に陰ながら護衛でついてきたクリスが「女子高生(笑)」ツバンツヒに連れられてくる。結果、二人は束の間の休息を享受することに。片や二人と別れたラキシスとツバンツヒの前に、アマテラスから送り込まれたマドラモードのスパークが。その3人の前に道化の化粧を落としたマウザーがツバンツヒとの決着をつけるべく現れる。互角の戦いを繰り広げる二人だったが、それを見守るラキシスの背後に巨大な影が現れ、リゾート地・シャルデファーはいつの間にか違う空間へと変貌していた・・・。


着々と魔導大戦の終焉、そして「3159」へ向けての布石を消化していってる感はありますな。特に短いとはいえダイ・グのパートは今後のフィルモアや(ダイ・グの意志を継ぐものとしての)クリスティンの立ち位置に関わってくる部分なので、ほんわかエピソードでありつつも重要か。

まあしかしそこから先のパートが例によってお祭りエピソードというか永野センセ大爆発というか(苦笑)、いわゆる「神々」の世界の話ですね。今回は特にそれが顕著で。なぜならばこれまでと違い、女魔帝ゴリリダルリハとか魔太子センタイマ、果てはついに!というかようやく!というか出てくるわけですよ、バランシェ・ファティマ46番のあの方が成人の姿で。

ということは当然これまで抜けなかった鞘が抜けるわけで、抜けてみたら抜けてみたで「あー、そりゃ通常空間では抜けんわ・・・・・」というのも納得の設定。

おまけにオペラ・ラキシスの使い魔というかしもべというかオンパレードだわ、未来のミラージュ騎士出てくるわ、「Fネーム」という3巻でのラキシスのエルメラ王妃への返答のようなファティマたち出てくるわ・・・・・そこに至るまでのマウザーの登場もけっこう大きなインパクトだったはずがこんなもんその後に並べて見せられたらそらかすみますわ(苦笑)。少なくともツバンツヒ、マウザー配下のカリギュラに関してはこれでアマテラスの支配下に置かれたということになるんだろうか。

ということで、設定・ビジュアル的に久々の大洪水な巻だけども、ひどいのは本筋的には例によってなーんも進んでないのよね、この巻!?(大爆笑)
いや、これがあってこそのファイブスターなんですけど(泣笑)

しかしカリギュラの二人の加入や、マドラはようやく人格の統合が行われたし、オージェちゃんの大人姿の登場など、今後への布石を着々と消化している、ということではあるんでしょうかね。

でもね、一番ひどいのは

なんとこの物語の主役ロボットが15巻ぶりにようやくまともに戦闘したっちゅうことですかね
たぶんこの作品、ロボットが主題のひとつであるにも関わらず!(爆笑)

ほんとひっさびさの─ウン十年ぶりの再登場にも関わらず、気づいたらデザインが全く根底から変わっての再登場とか誰が想像したでしょうか!?おまけにパイロット主役の二人じゃねえしwww

そしてやっぱりうまいのはマグナパレスの名称を知らないマウザーをして

「ナイトオブゴールド(黄金の騎士)!!」

と叫ばせることでしょうかね。
ただまあ、今巻読んで思ったのは、やっぱりナイトオブゴールドはそう簡単に出てこれんわ、「そういう存在」相手に戦うために作られてんだもの、というのはよーくわかった、というか。

要はこのロボットが出てくるとき─ましてや主役の二人が揃って搭乗しているときなんかがあるとすれば、それはこの作品の本編中の本編─そういうことなんでしょうね。

ということで実は思いっきり脱線しているように見えてけっこうちゃんとした「本編」だった─そういう巻といえるのでしょう。

『ファイブスター物語 16巻』永野護

いやまあ連載の方ではこの時代の「もうひとりの詩女」のネタバラシされててそっちもエライことになってますが(汗)













※2022/06 標題の表記を統一

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