2021年─コロナ自粛期間に読んだコミック+アルファ(ざっくり)

標準

ワクチン接種の効果が出てたのか、秋口からここまでのところやや落ち着いてたコロナ騒動だが、ワクチンの抗体の漸減かオミクロン株の影なのか─やや不穏な空気が出てきましたな。

国内では年末のこの時点でまだこの程度で済んでいるが、他の国では相変わらずバンバン感染者数増えてたりして相も変わらず油断はできない状況。くわえて日本だけがここまでなんとか感染者数抑えてる機序というか納得の行く仕組みが見えてこないのでよけい気色悪い・不安な感じなのは相変わらずで。

というわけで今年も家にこもってマンガばっかり読んでましたよ⁉(笑)

ということで昨年と同じく読んで記憶に残った作品を紹介していこうかと思うのだけども、昨年記事にした内容は文章書いた割にあまり読んでもらえてなかった感じなので、今年は軽めに─そのぶん作品数なるべく多く取り上げてみる感じで。ちょっとマンガ読んで時間つぶしたいな~とか、読み応えのあるマンがないかな~という際の参考にでもしていただければこれ幸い。

※ちなみにかなりの数読んだが、これもBookwalkerの複利がきくコインシステムのおかげ(コインアップ期間中に獲得したコインで購入しても、その購入に対してもコインアップが効く!おまけにセールも組み合わせても同様!)

おそらくこれの利用のおかげで実際の定価に対してトータル6掛けくらいの予算で購入できていると思う。過去完結作品のほとんどはBookwalker自体や出版社・レーベルごとの半額セールなどの開催期間中に、上記のコインの複利効果を活かして読んだ─というかそういう時でしか”シリーズ一気買い”的な大量買いしてない(苦笑)。

たびたび勧めているが、長編シリーズなどで読みたい作品がある場合はBookwalkerのコインシステムはマジおススメである。

コンテンツ

<2021年─コロナ自粛期間に読んだコミック>

メジャー系作品
農業系作品
ラブコメ系作品
時代系作品
短編集
エロチックコメディ

<+α =ファンタジー系>

異世界転生系作品
王道系ファンタジー的作品
復讐・報復系作品
女性向けファンタジー

2021年─コロナ自粛期間に読んだコミック+α

【メジャー系作品】

『狂四郎2030』


ずいぶん以前に完結している作品だが、オタク議員として著名なおぎの稔氏(https://twitter.com/ogino_otaku)がよく「今日はカレー喰っていいのか」と作中のネタを連呼されていたので、だいぶ前にセールのタイミングで買っていた。
しかしこの徳弘正也氏の作品てすこし絵が独特なので、なかなか食指が動かずしばらくうっちゃらかしておいたんだが、読んでみたら超名作で海より深く反省!、柱として不甲斐なし(違
2030とあるように近未来のディストピア系作品だが、あとがきで著者ご本人がおっしゃっているように基本「ロミオとジュリエット」なんですな、これ。青年誌での掲載だったのか性描写が多いんだが、これも実は大きなポイントで、この描写がある種自然の摂理としての生き抜く力=生命力と直結しているのがよくわかる。実はこの点パッと目に行きがちな主人公の狂四郎のほうのそれよりもヒロインである志乃の描写のほうが重要で、ここが本作がほかの似たような作品と一線を画す大きな違いだろう─男性作家の作品であるが、女性のある種生理的な面を的確に描写しているというか。いろいろと一般流通している「キレイ」な見た目とはあらゆる要素が正反対な作品だが、その泥臭い生命力はなかなか他に見ない。こんなに引き合う二人の切迫感を感じられる作品というのは久々だった。

『双亡亭壊すべし』


今年度完結の藤田和日郎氏の作品。伝奇ホラーと思いきや宇宙スケールのSFだったりクトゥ〇フ思わせる深淵からくるもの系かと思わせて、やはり着地点はいつもの熱い藤田節少年マンガという(笑)。全巻通して楽しませていただいたが、若干登場人物が多くて、エピソードの山場が散ったのはもったいなかったかも。ただ、やはりいつもの藤田作品のようにずどんと心のど真ん中に飛び込んでくる熱いセリフの数々は素晴らしかった。

『暗殺教室』


これも数年前の完結作品ですな。試読で読んでみたらあれよあれよと完結巻まで。それまで断片情報で目にする主人公の「殺(ころ)センセー」の姿があまりにふざけているので警戒していたんだが、多くの方と同じように最終巻では目から変な汗が大量に流れだして仕方がありませんでした(泣)。ある意味王道の少年マンガですな。小中学校のお子さんのいるご家庭はぜひ本作は読ませてあげてほしいと思う。

『スプライト』『BABEL』


石川優吾氏の作品で、『スプライト』は以前に完結、『BABEL』は本年度完結。自分は『BABEL』から『スプライト』へと辿って読んだ。テーマとしては別々の作品だが、同一世界作品で『スプライト』のほうがどうやら本筋的な立ち位置か。もともと『BABEL』が八犬伝テーマの作品ということで読み始めたんだが、おそらく八犬伝としてはそのブチ抜けたスケール感は飛び抜けていると思う。緻密な作画とその壮大な世界観である種ハリウッド映画的な印象すら受けたのだが、最後のほうはやや巻き気味で終わったのが少しもったいなかったか(しかしきっちりと終わらせてはいる)。その点からすると『スプライト』との関連性が後半でより強調されるのはそれを収集するためだったのかもしれない(重要人物のうちの二人が『スプライト』からの登場人物)。『スプライト』自体は時間の視覚化=黒い水の津波として描写され、それに翻弄される主人公たちを描いた作品だが、この時間=津波というのがビジュアル的に天才ですわな。『スプライト』のほうもまとめて読むときちっと終わってると思うが、当時の読者からするときれいに落ちてないという評価もあるようだ。だが両作品とも独特の世界観を感じられるので、興味を持たれた方にはオススメ。

『勇者が死んだ』


これも本年度完結作品。スケベで太ももニーソ命なダメ主人公が間違って殺してしまった勇者の代わりに勇者をやる羽目になる、というJRPG的なコメディ作品だが、画が飛び抜けてうまいというタイプでないのでハードル下げて読んだのが功を奏したのか、なかなか拾い物の一本だった。こういうダメでスケベなぐーたら主人公が小ズルさと悪知恵でしのいでいるうちに、真の勇者になっていく、というのもこれまた少年マンガのある種の王道というか。非常に爽快で明るい一作だと思う。こういうゆるさを持つことが大切だということを知る意味でも、中高生向け作品として満点かな。いろいろと生きていくうえで大事な「心の余裕」的なものを教えてくれる一作かと思う。

『葬送のフリーレン』


連載中の作品。マンガ読みの間ではかなり名の上げられることの多い作品で、かつて一緒に旅をした勇者の鎮魂のためにかつての旅をたどる長命種のエルフの魔法使い=フリーレン、というありそうでなかった設定。そしてそれが故のノスタルジックな切なさが一つの売りの作品。また本作はその淡々としたコマ運びが特徴だが、このあたり同じく異色作の『ダンジョン飯』やとり・みき氏や唐沢なをき氏などの「理数系ギャグ」作家のテイストに近いものがあるというのも特色。こういう低体温な感じが本作に独特の空気感を与えているのは間違いないだろう。

『シャドーハウス』

前作である『』のころからその独特のダークファンタジーな世界観に注目していた作家さんだが、本作はよりそれを押し進めたうえに、いい意味でのポップ感・メジャー感も感じさせ、著者の成長をありありと感じる(上から目線失礼)。アニメ化もされていたようだが、自分はフィルムとしてのリズム感がしっくりこなかったので冒頭だけ見てあとは追っかけなかった。”シャドー”ハウスとあるように作中登場する煤に覆われた黒い人たち=シャドーという存在が本作のポイント。それもあってか個人的には同時配信されているカラー版のコミックスよりモノクロ版のほうがしっくりきた。まだ話は中盤だと思われ、いろいろと謎が解けはじめた矢先・・・という感じなので、この先どうなるのかが楽しみな一本。

『成れの果ての僕ら』


いじめ復讐もの・・・かと思いきや昨今確立しつつある「デス・ゲーム系」の一本か。デスゲームではあるが、話のアイディアの骨子としてはスタンフォード監獄実験のような心理学的なものを持ってきている(しかしこのスタンフォード実験もやらせだったらしいというのが近年一部取りざたされているようだが・・・)。なので、本作の読みどころは、かつてのクラスメートたちが主謀者に踊らされる中での心理戦。このあたりはこの系統の作品のもつ構造的な傾向なのか、やはり序盤のそれのほうが手に汗握る感じがあっていい。巻数も比較的短くまとまっているので読みやすい一作かと思う。

『サマータイムレンダ』


一昔前でいうなら半村良や山田正紀作品を彷彿とさせるような、離島内での伝奇SF的なテイストの一作。だが本作の面白いところはスマホやコピペといったデジタル的な要素が伝奇的な要素の部分で自然と活かされているところ。このあたりいかにも平成・令和的な伝奇作品といえるかもしれない。伝奇作品と書いたが、後半に連れて分かっていくように、本作はどちらかというとSF作品的な要素が強いかな。意外とありそうでないテイストの作品なので新鮮ではあるが、前述の半村・山田作品や菊地秀行作品などになじみのある方にはスマホなどのディティールにさえ引っ掛かりを覚えなければ意外なほどスッと作品世界に入っていけるだろう。

『青野くんに触りたいから死にたい』


一見ほのぼの系ホラーラブコメかと思いきや、けっこうガチ目のホラー作品。画がどちらかというと緻密なタイプでなく、すこし硬めの描線ということでごまかされている部分もあるが、もっと緻密に描くタイプの作家さんであればかなり怖さを感じる本格的なホラー作品になっていただろう。ただし逆に言うと、この少し隙を感じる描線だからこそタイトルにあるような「ラブ」の部分がいい具合にウェイトを保っており、ただ怖いだけの作品になることを阻止しているともいえる。とは言えこのある種の隙があるからこそ怖かったりもするんですけどね。まだ連載は継続中のようなので、どういうところへ落としどころを持っていくのか気になるところ。

『巨蟲列島シリーズ』


おなじ「恐怖」でもこちらは物理的な恐怖。昆虫が巨大化したら・・・という誰もが一度は考えるネタをまじめにやってる作品。作画担当の方が諸般の事情で途中リタイヤ→作品名変えて継続ということもあるが、画的にはすこしゆるめな感じ。ただそれだからこそ気軽に読んでいられるのかもしれない(これで解像度上げられたらけっこうキツイはず)。身近にいる生理的に嫌悪感をもつものの巨大化という、ある意味文字通りの「悪夢」の世界をまじめにやるとこんな感じになる、という好例か。ただ読者の気をひくため、という理由もあるんだろうが、作中所々で出てくるムダなエロ描写はいらんかな~。


【農業系作品】

『銀の匙』


これもすでに完結の作品。農大系の作品は『動物のお医者さん』が有名だが、こちらは作者のご実家が酪農家?ということもあってかそちらへよりシフトした描写になっている感じか。荒川先生ご自身が農作業を実地でやってらっしゃったこともあってか非常に地に足の着いた描写になっており、実際の酪農家が直面する厳しさもリアルに描かれている。好評だったようで編集などからも延長を打診されたようだが、スパッと終わらせている点も素晴らしい。農業系の作品としてはよいサイズでまとまった「入門編」としてもってこいの作品になったのではないか。

『八百森のエリー』


連載継続中・・・と思いたい。なぜこう書くかというと、これもともとモーニング誌で連載されていた時期に読んでいて、その後「載らないな~」と思っていたら別媒体へ移っていたっぽい。栃木県という首都圏周辺での野菜仲卸という、本来なら都市住人の我々にはバリバリに関係のあるところを、しっかりと取材して描かれているようで、社会的にも凄く意味のある作品だと思う。そのあたり考慮してももうちょっとなんとかしてやれんかったのかな、講談社は。
現在5巻まで刊行済みだが、ぜひ続刊が出てくれるよう、期待しています。


【ラブコメ系作品】

『僕の心のヤバイやつ』


現在おそらく一番勢いのあるラブコメ作品の一つじゃないすかね。自分はどちらかというとラブコメは苦手(作中のやきもき要素にどうしても振り回されるのでw)なんだが、これはうっかり読んでしまい、結果追いかけざるを得ず・・・「あー!」「を~!?」と悶えながら読んでおります(苦笑)。あと女の子のほうが身長大きくて・・・というのは久々ですね。読んだことないけど『Theかぼちゃワイン』以来か。また作中や拾遺集的なカットにあるスマホでのやり取り描写が現代の若者ならではの恋愛事情がぎゅんぎゅん伝わってきてニヤニヤしてつらいwちなみに本編以外でTwitterなどに発表されたショートコミックや1枚イラスト的なものを集めた拾遺集的なものがKindle上で無料で読めるので、興味のある方は目を通してぜひ身もだえしていただきたいw

『2.5次元の誘惑』


コスプレコミックといえば昨年紹介した『その着せ替え人形は恋をする』が圧倒的だが、本作はジャンプ作品という点が大きいか。おそらく『その着せ替え人形は~』以前なら、外野の想像する「コスプレテーマの作品」そのものズバリ、みたいな─いかにも「オタク」な文脈で描かれている印象がある。女の子のエロ可愛さのほうが強調されているのも掲載媒体の性格故か(『少年ジャンプ+』掲載中)。残念ながらコスプレマンガ云々以前に作品として『その着せ替え人形は恋をする』がハイクオリティ過ぎるので、本作はどうしても二番手以降に位置づけられるかと思うが、コスプレ要素以前に家族問題というか、主人公の生育環境による自己肯定感の欠如の問題を少し絡めてきてはいるようなので、そのあたり次第によっては今後化けることもあるかもしれない。まあただ現状では少年~青年誌っぽいカワイイ女の子の肌色成分多めの一作という範疇に留まってはいる(ただしそれは一概に悪いことではない)。


【時代系作品】

『いちげき』


全7巻。完結済み。原作があるようで、幕末の百姓を集めた江戸市中でのテロリストの泥臭い戦いを描いた作品。侍に利用されテロ要員として死んでいく農民の主人公たちと、それと対決する粗暴な侍の対決が描かれるが、この独特の「救いのなさ」感をもつ作品は久々だな。ちょっと初期の藤沢周平のあの暗さに通づるものを感じた。ただその「救いのなさ」に非常にリアリティがあって、読みごたえのある一作には間違いない。非常に荒々しくもパワフルな作品だ。

『太陽と月の鋼』


映画化などもされた『累』の作者の新作。江戸期と思われる舞台で、侍のくせにその異能のせいで刀が持てない主人公を描いた作品だが、伝奇テイストが強く、どこか『鬼滅の刃』に通づるものを感じさせる。現状数巻しか刊行されておらず、まだ作中世界の全貌が見えてこないのだが、どこか引き込まれる雰囲気があって、この先どう転んでいくのか楽しみにしている作品。(『累』は試読で少し読んでみたが自分はちょっと合わなかった)


【短編集】

『世界八番目の不思議』


Twitterで一部掲載されていたのを読んで面白かったので買ってみたが、これ全巻大当たり感がすごい!短編集というのは短いから労力少ないかと思いきや、逆に短いページの作品でも「世界」を一つ作り出すわけで、短編集のうまい作家さんというのは独特の才能が必要とされると思う。で、そんな短編集が3冊が3冊ともほぼハズレ感なし、というのはすごいことなわけですよ。ちょっと気分転換にマンガ読んでみたいな、と思ったときに是非お勧めしたいシリーズだった。ライトテイストからちょっとほろっとする作品まで─非常に豊かな世界が収録されている。オススメ!

『呪いと性春』


いやー、これもいいですね。この年頃独特のどろどろとした感情、自己肯定感と自己嫌悪のせめぎ合い─特に女の子のそれはどうしても性の部分により密接に絡まざるを得ないわけで。そういった時期のずーっと微熱が発熱し続けているような息苦しさを見事にとらえた短編集かと思う。人を選ぶタイプの作品ではあるが、合う人にはとことん合うだろうし、この作品によって救われる人もいるかもしれない─そう思わせる短編集だった。

『ルックバック』


これは説明の必要ないですね。『チェンソーマン』の著者による短編。京アニ事件との関連もよく指摘されるが、それ以前に創作者としての自分と人として社会の中で生きていかなければいけない自分と─その揺らぎを作中の二人に仮託しドラマチックに捉えた名作かと思う。こういう作品をポロっと出せる─やっぱり独特の才能ある方なのよね、この方。


【エロチックコメディ】

『ガイシューイッショク!』


いわゆるエロコメ作品・・・ということになると思うんだが、この作品はそういった「エロ」要素よりもそのキャラクター造形のすばらしさがポイントだろうか。特にヒロインのみちるの傲慢さというかそのすがすがしいまでの傍若無人ぶりがこの作品の要(かなめ)といってもよく、その上から目線と度を越した負けず嫌いっぷりが引き起こすドタバタに何度腹がよじれるほど笑わせてもらったことか。もちろんこれも「エロ」という本来はパーソナルな関係で真剣にやり取りされるはずのコミュニケーションの上でそれが起こるからこその笑いなわけで、これはもう舞台設定とこのみちるのキャラクター出来上がった時点で作品としての勝利確定ですわ。いまのところ唯一の弱点はやや新刊のピッチが遅いという点か。もう少し短い間隔で読ませてくれるということないのだが。

『ローゼンガーデンサーガ』


で、これもキャラクター造形の勝利ですな。作品世界としては古今東西の英雄や伝説上の人物の名前を冠したキャラたちが登場するFGO的な世界観なんだが、出てくる連中が全員ダメなヤツばっかりや⁉(爆笑)敢えて例えるとギャグ寄りの『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』的な作品といってよいかもしれないが、特筆すべきはそのテンポの良さというか、ボケ・ツッコミのスピード感。そしてジャンルとしてはエロコメに入るんだろうと思うが、よくよく見返してみるとその設定の割には直接的な描写は少ない。ただしジークに取り憑かれたリンちゃんは局部だけ男性化し、獣姦ならぬドラゴン姦させられながら「ああ、終わった アタシの人生終わった」といったような描写はあるんですがね(主人公のリンちゃんにとり憑いているジークフリートは切るものを女体化させる剣を持ち、処女厨という設定:苦笑)。そしてこういった描写がすこぶる笑えるギャグとして成立してしまってるのがもうなんというか・・・・(苦笑)。もうホント出てくるヤツが全員ダメなやつばかりでほかならぬ主人公リンちゃんだけがやや常識人という見事なシチュエーション。ただ本作はアクションバトルマンガとしても実はレベルが高い。先ほど『BASTARD!!』を例に出したがバトルシーンのスピード感なら本作のほうが上回っているようにも思う。本作も上述『ガイシューイッショク!』と同じく腹よじれるほど笑わせてもらった。エロ描写に抵抗ない方にはおススメの一作である。

「+α」=ファンタジー系

例によってこちら系の作品群もおまけ的にまとめておく。おまけ的にと書いておいてなんだが、作品数的には文字通り膨大な数が出続けているようなので、正直こちらが人によってはメインストリームということも言えるのかもしれない。あと競争の激しいジャンルだけあって、ある程度名前の知れた作品というのは、ほんと話に引き込むギミックが洗練されているというかうまいですな。ただ問題はまだこのジャンルで完結まで至って評価が確定した作品というのをあまり見たことがないというのがメインストリーム足りえない一つの理由かもしれない。


【異世界転生系作品】

『よくわからないけれど異世界に転生していたようです』


試読で読んで一度はスルーしてたんだが、しばらく置いてからなんとなく再度気になって読書リストに加えた作品。異世界転生ものではあるんだが、その要素はほんと導入程度でこの手の作品の通例であまりウェイトは割かれていない。で、この作品のポイントは何かというと「読む版・マインクラフト」という感じか。要は魔法と前世の知識とであれやこれやを作りまくって主人公の女の子(転生前の現代ではおっさんw)がサバイバルしていく感じ。前世おっさんだが、作中は100%女の子メンタルで、身の危険を感じる描写なんかは女という立場ならではの怖さの描写もあって◎。ただ基本これもギャグテイストが程よく織り込まれているのであまりシリアスにならないのはよいバランス。あと聞いた話だと作画担当の方がR18系出身の方だからか、それとも冒頭のフックとしてなのかいわゆる「自家発電(笑)」のシーンが折々出てくるのだが、ここも「※イメージシーンでお送りします」と直接描写を避け、ギャグにしているのはうまいと思った。なんだかんだでかつて逃げ出してきた孤児院時代の仲間との再会なども描かれつつあるので、今後どういう方向へ持っていくのか期待したいところ。

『異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?』


これも試読→うっちゃり→後日やはり気になって再読というパターンではまった一冊。画は決してうまくないんだが(失礼)、その無骨な感じと作中主人公の不器用な感じが比較的うまくマッチしているせいかいい塩梅に。でところどころ妙に熱い描写多いな、と思ったらどうもこの方、藤田和日郎門下の人のようだ。そうして読むと、異世界転生モノではあるがどことなく藤田作品のテイストも感じられる。いまのところ話のメインストリームがようやく見えてきたかな?というところなので、どのあたりを落としどころに持ってくるのか気になるところ。

『完全回避ヒーラーの軌跡』


この手の作品としては非常にさわやかな感じの作品で、別に異世界転生とつけなくてもオーソドックスなファンタジー作品としても読める感じの一作。確証はないが作画の方が女性なのかな?非常に柔らかくて清潔感のある描線で、それがこの作品自体の品の良さにつながっているように思う。例えていうと日本ファルコム系のJRPG的な空気感というか。作中のギミックというかフックとしては強力なデフォルトヒーラーが回避にボーナスポイント全振りしたらどうなるか?というのがポイントだが、このあたりFFオンラインとかでいうソロ向きジョブ的な発想か。(FFXIでポンコツ垢魔導士やってた頃が懐かしいw)いまのところ一緒に転移してきた仲間を助けるために、この世界で知り合ったエルフの女の子を相棒に魔大陸へ、という感じで話が進んでいるので仲間にかかった呪いがどうなっていくのかという感じですな。

『空手バカ異世界』


タイトルからもわかるように実戦空手家が異世界転生して・・・という異色の作品だが、空手マンガにありがちな空手「バカ」っぷりがシリアスの方向へ作用し、なんかある種『ベルセルク』の変種感かもし出している。まだ数巻しか出ていないのでまだまだこれからの作品なのだが、この変に空手=最強にこだわるこだわり感の狂いっぷりがこの作品の肝だろう(そしてそれは非常にうまく機能していると思う)。個人的にけっこう期待している作品。


【王道系ファンタジー的作品】

『金貨一枚で変わる冒険者生活』


本作は非常に王道感のあるファンタジー系作品。助けてもらった長命のエルフ種から「私の旦那さんにならない?」と持ち掛けられた駆け出し冒険者の少年の正攻法の努力を描いている作品だが、冒頭の「金貨一枚」をどう使うか?というアプローチのエピソードからしてすごくいい。冒険を続けていく中で似たような駆け出しの仲間が何人か出てきている段階だが、エルフさんのほうに動きがありそうなところで待て、次巻!となっている。どのあたりまで風呂敷広げるかにもよるが、このまま正統派な感じで進めていってくれることを期待する。

『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』


いわゆるリタイア系の作品で、どちらかというとほのぼの系の作品になるか。ただこれも絵柄のせいか非常に正統派な雰囲気が現状あって、この手の作品もいわゆる「絵師ガチャ」的な面に左右されるところ大きいのかな。ほんといまのところ大きな敵の姿もにおわせ程度にしか出てきていないので、引退してのんびり暮らし的な作品になっている(最新刊も開墾作業の話だし)。ただこの手のコミック化まで進む作品の常道で、周辺のキャラクター造形はいい感じのキャラが配置されている。気楽に読むのにいいシリーズかと。

『その門番、最強につき』


こちらも引退系だがパーティ側からキックされた系。ただその割に主人公が熱くなるタイプでないので、このあたりがある意味いま風というか、なかなか面白い性格付け。そして前述のようにやはり主人公周辺のキャラクターの造形・配置はうまいな、と。ただこの作品に限らず(上記『最強の魔導士。ひざに矢をうけ~』でもそうだが)主人公のパーティ、主人公以外ぜんぶ女の子なのがこの手の作品てほとんどなのよな(この作品の場合は上司の守備隊長にむくつけきおっさんを置いてうまくバランスをとっているが)。このあたりはやはりお約束だったりマーケティング的な理由になるんすかね。


【復讐・報復系作品】

『処刑された賢者はリッチーに転生して侵略戦争を始める』


パーティからキックされましたを通り越して「世界を救ったら既得権益層から危険視されてなぶり殺しにされました」系作品(泣)。その復讐のために地獄からよみがえってきて魔王と化す・・・という作品なんだが、本作の場合は生前、主人公がその隣で戦ってきた女勇者を心から慕っていて、彼女の生前の「善」の言動がリッチーと化した今でも彼の心の底でほのかな光を放っているというのがなんとも泣ける。なにしろ彼がリッチーと化した理由も世界に共通の敵として存在し続けることで愛した彼女=かつての女勇者が望んだ「世界の平和」を維持するためという・・・。そういう意味でも悪落ち系とはいえ、主人公に対して読者は素直に感情移入できるし、その旅路が最後はどういうところにたどり着くのかは気になるところだ。

『復讐を希う最強勇者は闇の力で殲滅無双する』


かたやこちらも「なぶり殺しに合いました」系だが、こっちは「それならお前らをなぶり殺しにしても文句は言わないよね?」という完全復讐系。そちらに針が振り切っている作品なので、かなりの残虐描写。ただその残酷に復讐される奴らのクズっぷりはしっかり描かれているので、そこがある種の爽快感につながってるんだろうな。最近のネットミームで「復讐は何も生まない?そのとおりだがすっきりはする」的なものがあったと記憶しているが(苦笑)、本作はまさにそれな感じ。いまの所悪鬼と化した元勇者の主人公はその実力で無双状態だが、この後どうメリハリをつけていくのか─まあ復讐相手を皆殺しにするまでスカッと系でいくのもありっちゃありだとは思うんですけどね(苦笑)。


【女性向けファンタジー】

『婚約破棄から始まる悪役令嬢のスローライフ』


コミック版で読んだのだが、残念ながらコミック版は途中打ち切りのようで最後が気になったので原作も読んだが原作が面白かった。いわゆる悪役令嬢系作品のテンプレで、バカ王子の婚約者だったのが横からしゃしゃり出てきた馬の骨からの横やりでキックされて・・・というのがパターンだが、本作はそこをギャグテイストで(笑)。なにせこの主人公、バカ王子から婚約解消されたら自分から牢屋に入って牢屋内でバカンス三昧という(爆笑)。そのあたりの開き直りっぷりというか、バカ王子の先の先を読む心理戦というか─主人公のやらかしっぷりが見ものな一作。おまけにバカ王子の親である現国王夫妻からも「あの娘ほど我が国の王妃にふさわしいものはいない─どっちかとるならバカ王子を更迭する」といわれるぐらい頭が回り肝が据わってるキャラなわけで。こういう「抜けてない」「頭回る」系の悪役令嬢の話読んだのは初めてだったが、案外こちらのあり方のほうが王道なのかも(苦笑)。また彼女の周りの「お友だち」たちもキョーレツな女性ばかりで、なんかもう・・・バカ王子御一行様ご愁傷さまです、みたいな(笑)。

『聖女になるので二度目の人生は勝手にさせてもらいます』


これはどちらかというと正統派ファンタジー。転生モノ作品ではあるんだけれど、異世界転生ではなく作中世界の人物が前世で策略にあったことを思い出して・・・というパターン。現世で主人公は訪れた教会関係者から選別されて聖女になるための選抜試験を受けることになるのだが、徐々に思い出していく記憶を頼りに前世でうけた策略の原因も探りつつ・・・という感じ。冒頭部分は前世で婚約者だった現王子との誤解の解消や選抜試験でのライバルの妨害といったエピソードがメインだが、話が進むにつれて背後にいる黒幕の存在が間接的に見えてくる。そして前世での自分の顔とそっくりな顔を持つライバルキャラが現れて・・・と、ある意味ちょっと前なら『Lala』とか『花とゆめ』とかで連載されてそうな作品ですな。そして本作も絵柄というか「絵師ガチャ」のおかげか、清潔感があり原作と程よい感じでマッチしているであろう質量の絵柄もプラスに働いているように思う。『Lala』とか『花とゆめ』と例えを出したが、案外そういうノスタルジーの部分で読んでる部分も大きいかも(苦笑)。

『屋根裏部屋の公爵夫人』


こちらも悪役令嬢系になると思うんだが、面白いのは本作の主人公はちゃんと経理や領地経営の知識でバカ婚約者にやり返していく、というパターン。こういう数値や知識で押し返していくというのは女性主人公系のお話では比較的珍しいような気はする(ただ作中では特に数式や理屈が出てくるわけではない)。そしてもうひとつ本作で白眉なのは、主人公がこういう数理に強い割には、どちらかというと普通にまじめで心優しい系のキャラクターというところ。これがあるからこそ逆転劇の部分の爽快感が高まるし、婚約者の幼稚っぷりが際立つ。そういう意味では悪役令嬢系でもあり復讐・報復系でもあるのかな。とにかくこのバカ王子への反撃部分が読んでて非常に爽快だった。現行巻ではまだ反撃をくらわしたばかりの所で、決着までには至ってないのだが、どういうところに落としどころを持っていくのか─そこが結構楽しみだ。




・・・・・ということで駆け足気味に紹介してみました。いやーリンクとかは事前に準備しておいたけどさすがに大晦日の1日だけで30作品前後を一気にレビュー書くとかアホでしたわw間休憩とかはしてるけど昼から初めて夜までかかったwww

まあこれも備忘録的な意味で自分が残しておきたかったから、というのもあるが、もし来年もやるなら今度はもう少し時間に余裕を持たせようw

ということでもしよろしければ皆さまこれらの作品読んでみてくださいましね~。
それではよいお年を!

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