【レビュー】『ファイブスター物語 18巻』永野護

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『ファイブスター物語 18巻』


2025年3月発売の既刊だが、毎巻いちおうレビュー続けているので今回もレビューしておく。ちなみにこの12月19日から凱旋で『永野護展』はようやく都内でフィナーレを迎える模様。

若きフィルモア皇帝ダイ・グの命を賭した全星団への演説と、それを中継する際に顕になったファティマのもう一つの機能──ファイティマの通信リレーはスタント遊星まで届く。
かたやデコースを追い続けるヨーンは念願の直接対決へとたどり着くが・・・。


ファッション・デザインにおいて、コミック・アニメ界隈でそのデビュー以来、ずっとその孤高の高みで他をよせつけない地位に君臨している永野護であるが、実はそれと同等に

「お話づくり(演出力)も圧倒的に上手い」

ということがよく分かるのが今巻かもしれない。
元老院の罠に嵌められ、枢軸軍の隠れた伏兵・ブーレイ傭兵騎士団の圧倒的多数の戦力にさらされるヒロイン・クリス。しかし彼女は自身の背負わなければいけない凶状と愛するダイ・グのためにその生命の最後の一瞬まで剣を取り、戦い続けることを誓う・・・。

この今回のナカカラの戦場に投入されたMH・・・もといGTMは以前の大規模戦闘・ベラ攻防戦以上の総数、元老の巧みな策のため、頼りのアルカナナイトたちは四方に分断、残された本陣直営のクリスの部隊12機に膨大な数のブーレイ傭兵騎士団を始めとする伏兵が襲いかかる、と。

まあ絶体絶命ですわね、そこで助けに来るわけですよ、白馬に乗った王子様が(笑)。

そんでそこまでがまた上手い、憎まれ役のミヤザの真意をちゃんと悟ってたダイ・グ、ダイ・グの覚悟を知りいつものゆるふわの代わりに薄っすらと涙を浮かべつつも付き従うチャンダナ。憎まれ役のミヤザの必死の言葉に己の本分を尽くすべく応えるフィルモア将校たち・・・etc

こういう細かな演出・組み立てが実は非常に上手い、永野センセは。

「他の人は思ったよりお話を作るのはうまくないんだな」とのたまうのも全然嫌味に聞こえないこの組み立てのうまさよ。
※あえて弱点をあげるとすれば決めカットに至るまでの混戦・格闘部分は本職の格闘漫画家さんとかのそれには及ばないかもしれないが、他に誰がここまでのロボット集団戦を描けようか?(いや描けない:反語表現)

あと本巻前半部分のもう一つの見どころはバランシェ系統の全ファティマたちによる意識リレー=一大ファッションショーか。

御本人も話としてのリズムを削ぐかもしれないが、こういうのやるためにFSS描いてんだから!と仰られてるようにこれはこれで正解だと思う。これでほぼバランシェ系統のファティマは出てきたことになるのかな?

そして後半はヨーンVSデコースの前半戦~ついにヨーンが「騎士」としてその手に「剣」を取るまでが語られる。

いや~ここまで長かったねえ、そしてそこに至るまではこんなにも大きな犠牲を払うことになるとは・・・。

4巻から登場の健気なあの娘とのお別れの巻でもありました・・・。

(そしてあの名脇役もそれに関連してご退場─この亡くなり方もある意味実にFSSらしいというか)

しかしこの作品、生き残れば生き残るほどキャラとしてのウェイトが結果的に上がっていくのが面白いというか、裏を返せば場当たり的というか(苦笑)。
カイダ師匠、あなた絶対初登場時はこんな大層な設定つけてもらってなかったでしょ?(笑)

今巻は全体的に前半ダイ・グ、後半ヨーンという次代を担う若き騎士たちのある種の離別のための前奏曲という感もあって、やや重めの巻ではあったが、その分読み応えはあった。

連載ではもうその双方の辿り着く場所は明示されているが、そこは来年早々に発売が予定されている次巻にまるっと収められるだろう。

本来その次巻刊行のタイミングで以下の感想は書くべきなのかもしれないが、いいタイミングではあるので書いておくと─

ほんと返す返すもヨーンの話はもっと早く進めておくべきだったんじゃないかなあ、とは思ったな。
もちろんここまで設定が膨らんだからこその感動とか設定的な説得力もあるんだけれど、少し引っ張りすぎた気がする─時系列的にいうと仕方ないのかもしれないが、ここをもっと軽やかに早く終えていたのなら、このTheFiveStarStoriesというお話自体のいい意味での軽やかさはもっとあったんじゃないか?というのは思ってしまった。

もちろん魔導大戦という(おそらく)当初の設定にはなかった話がまるっと入ってきた故の延長なんだろうけども、不可抗力を承知で─これは本当に惜しまれる。

これ一つには、おそらく当初のシナリオと根幹の部分が変わっていないが故に昔の「あの頃の」FSSの匂いが濃厚に香ってきたからなのかもしれない。

─魔導大戦がなかったかもしれない世界線での黒騎士の物語

多分この残り香が、そう感じさせるんだろうな、とは思う。

で、もう一つその齟齬というかある種の錯綜を感じさせられるのがこの後に待っているであろうヨーンVSデコースの一戦が「オージェ対バッシュ」に相当するGTMで行われるという点。

実はここでヨーンが乗るのが「オージェ」(とあえてここでは書く)であることの「意味」がGTM時空への改変によって、明らかにその演出力が下がってしまってる気はする。

「天照家」のグリーン・ネイパーが乗っていた古の「”天照家の”マシーンメース」というウェイトの部分が見えづらくなってしまってるのよな。

もちろんこれはしっかり読み込めば別になにが変わったわけでもないので、問題ないといえば問題ないんだけれども、どうも「AUGE-HA(アゲハ)型GTM」はそのデザインもあってあの「”天照家の”乗騎」であるという印象が薄くなってしまってるのは否めないように思う。
(そしてこの”天照家の”という部分がヨーンの「コーダンテ姉妹に密接に関わる騎士」ということを暗示している訳で)

このあたり、魔導大戦はじめGTM時空への改変があった故の(敢えて言うならの)マイナス面なんだろうな。

とはいえ、それは常に積極的に新しさを追い求めているが故のリスクテイクなわけで、これに関してはもうその果敢さに、怠惰な一へっぽこ読者としては頭を下げるしかないし、そういったものを吹き飛ばすだけの物語の構築・演出力に、今巻はあらためて気付かされた感じだった。

さて次巻は今巻とそれぞれ対になるお話の「むすび」の部分が収録される巻なので、皆様涙腺を大いに絞られること必定ですので、お覚悟よろしいか?と。

あと凱旋公演とも言える永野護展が12/19から池袋で開催されることも決まっているので、この機会に未見の方は是非ご覧になることをお勧めする。
なにせ畳台の大きさある各単行本表紙イラストは再展示され、おまけに既に書き上げられた次巻の表紙もここで初公開だとか。

自分は実家の所用でその期間の殆どを関西方面に滞在しなければならないので、ほんとぐぬぬ・・・の極みである、グッズも今回は買いたかったのに!?(涙)

魔導大戦も連載の方ではもうラスト直前まで来ているので、来年以降はいよいよ3159への直接的な布石となるエピソードに入っていくんだろうな。
何にせよ楽しみである。

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