【レビュー】『ターミネーター:ニュー・フェイト』/ティム・ミラー 監督

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ターミネーターシリーズはなんだかんだ言って第一作を劇場で見ているので常に気にはしているシリーズ。ただしご承知のように近年は内容的にも興行的にもいまひとつな感じなのが残念だったところに、オリジナルのジェームズ・キャメロン、リンダ・ハミルトンの復帰があるとのことで観に行ってきた。

結果前評判通りに「悪くはないが凡庸さも目立つ佳作」という点を覆すまではいたらないが、値段分には十分見ごたえのある作品だった。その理由は還暦を超えてこれだけのアクションをこなしたリンダ・ハミルトンを筆頭に本作は「女性」を前に出していない(売りにしていない)、女性たちが主人公の「まっとうなアクション映画」だったからだ。


ストーリー的にはご承知のように「”T-2”からの直接の続編」と言われているようにその間の作品は別のタイムラインとして処理されている。結果それによって実は本シリーズの本来の主人公は誰だったのか?というのが再確認された作品だったというのが大きい。そう、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーその人である。

ただし本作ではそのサラに焦点を当てつつも別に二人の女性が主人公として登場している。かつてのサラのように理由もなく追われることになるダニエラ(ナタリア・レイエス)とその彼女を守るために送り込まれてきたグレース(マッケンジー・デイビス)である。実はこのあたり第一作目の構造をうまく踏襲していて、この点はぜひ劇場で実際に確かめていただきたいところ。

そして本作の最大の見所は単純にこの三人の女性たちの美しさ・力強さ・カッコよさにあると思う。そしてここであえて「女性」と書いたが、実は「女性である」ということを全く気にせず、ただただこの三人が三者三様の魅力を発揮していたという点がポイントだろう。こういう巷で騒がれているフェミニストやジェンダー論者を実力で黙らせる作品がなにげにしれっとターミネーターという歴史と絶大な人気を誇るシリーズ作品で(それも特に方に力を入れるわけでもなく)登場してきたというのはハリウッド・・・というか欧米の思想界隈の底力のようなものを感じる。

このあたりをある種体現していたのは前述の還暦を超えて第一線級のスタントをこなしたリンダ・ハミルトンもそうだが、その長い手足といい意味での中性的な容貌の魅力を最大限に発揮していたマッケンジー・デイビスの存在が大きいだろう。とにかく本作の見どころの一つはその彼女の長い手脚から繰り出される力強いアクション─その美しさである。キャメロンお得意の(というか単なる趣味か:苦笑)「タンクトップ」担当は今回この方でしたね。

さてそういう非常に魅力的な役者陣の存在感とハードでタフな演技という献身にも関わらず「佳作」という評価が出てしまうのは、やはりそのシナリオの煮詰め具合の不足が大きい要因だろう。「佳作」というとおりに決して悪くはない、ただしやはりターミネーターという看板を背負うにはもう一要素なにか欲しかったというのは正直なところだ。個人的には輸送機内のアクションはまるまる削ってなにか別の表現取れなかったかという点と、ラストがややカタルシスに欠けるか・・・という点は論点として上げておきたい。

シナリオが要因と書いたが、実はそうならざるを得なかったもう一つの原因は敵ターミネーターに投入されたアイディアにいまひとつ驚きがなかったからだろう。内骨格と外骨格に分離するというのがそれなのだが、ビジュアルとしての見せ方もややわかりにくいし、その特徴(強さ)の部分が弱点や欠点として逆手に取れるわけでもないというところに煮詰め方の甘さを感じる。このあたりにもうひと工夫あればこれだけのスタッフがいたのならもう一つ上のレベルの作品になっていたのは間違いないので、その点はかえすがえすも惜しい。

ただ、そういったところを抜きにしても主演の三人の女性たちの佇まいを見るだけでも十分に値打ちのある一本だったので、スクリーンでなくとも今後目にする機会があればご覧になってみることをおすすめする。

うーんT-4といい悪くはない、悪くはないんだよ。ただあと一つのピースがはまらん感じ。そこがこのシリーズの難しさよなあ。まあ1作め2作目が完璧すぎたというのが大きいとは思うのだが。

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