【レビュー】『BRAVESTORM』/岡部淳也 監督

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数年前の劇場公開作がAmazonPrimeで観れるようになっていたので視聴。 テーマ的にもニッチなB級と分類されかねない一本だが、当時一部から非常に好意的な評価だったのも納得の一本だった。

BRAVESTORM

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ストーリーとしては外宇宙からの侵略者によって滅亡寸前の未来から過去の地球へ歴史を修正すべくやってきた兄弟たちが、過去(現代)の天才科学者とその弟のストリートボクサーの力を借りて侵略者たちに対抗するための巨大ロボットを建造し戦う、といった感じ。 ベースとなっているのは過去の特撮作品である『レッドバロン』と『シルバー仮面』。かなり古い作品で自分もかなーり子供のころに見たような記憶うっすらとあるが、具体的には覚えてないくらいの年齢だったのでオマージュ云々の部分は正直どの程度のモノなのかはわからない(『シルバー仮面』に至ってはおそらく見てすらいない)。 で、そういう作品がなぜ一部で非常に好評だったかというと─

「これ、これよ、こういうのでいいのよ!?」

という作品全体のバランスの良さだろう。

こういったSF作品というかマンガの実写化に関しての邦画の言語道断ひどさというのは多くの方がご存知かと思うが、本作はまずCGの解像度が素晴らしい。これは「高解像度」ということを意味するのではなく、作品が必要とするクオリティを満たしているかという意味で、この部分が本作は非常に頑張っている。正直邦画でこういう感じを受けたのは後の『シン・ゴジラ』への布石ともなった平成ガメラ三部作最終章『イリス覚醒』でのあの渋谷のシーン以来だ。巨大ロボット同士の格闘は『パシフィックリム』というお手本がすでにあるとはいえ非常に説得力のある描写で「いけるやん!やればできるやん!?」というか。

加えて演技陣の配役も的確だった。ずば抜けて演技派という感じは受けないが、対人格闘のアクションシーンが破綻せずにかなり見れるものになっているのは特筆すべきだろう。特に三人兄弟の紅一点の二女の女優さん(山本千尋)は後半で意外なほど素晴らしいアクションを見せてくれる。(この対人アクションの部分でも前述のCGのクオリティが破綻していないのもポイント)

そして結局はこういった「いま持てる技術の解像度」を分かったうえで、それを無理なく破綻させない脚本・演出。要はいまできることを最大限に活かして─バランスをとって─一本の作品としてきちっと仕上げてきたということが本作最の大のポイントだと思う。これは監督である岡部氏がプロデューサー・脚本・編集を兼ねているらしいのでそこが功を奏した形だろう。

本作の特筆すべき点はこういった作品を表現する上での各要素の「解像度」それがきちっとそろっているという、本来なら当たり前のまっとうなことをまっとうにやっているというその点に尽きる。ビジネスを言い訳にこの点をないがしろにしている邦画のなんと多いことか!と普段から嘆いている映画ファンにとってはある意味本作は痛快な一作だったのではないか。

ただ残念なことに本作もあまり前後の宣伝などのバックアップも受けられなかったのか一部で話題になった程度で終わってしまっている(本編中では続編もにおわせるような部分もあったのに)。これだけのものを作っても・・・現実はなかなか厳しいものだと思う。

本作のような「佳作」がコンスタントに出てきてくれないとこういった本邦のSF・特撮ジャンルは先細りしていくばかりだろう。発想自体が劣っているわけではないことは、コミック・アニメのそれを見ていれば明らかなので、なんとかこのあたり建て直していってほしいところだが、さて・・・。



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