【レビュー】『嘘つき姫と盲目王子』日本一ソフトウェア

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珍しく発表時から気になっていて、ずいぶん前から予約までして購入の一本。

先月末の発売日に手元には来てたんだが、ちょっと日をおいてから、毎日寝る前にちまちまと進める感じでやっていた。先日いちおうエンディングにたどり着いたのでレビューしておく。

一部ではフルプライスに近い値段にしてはボリューム不足だという声もあり、その点妥当とも思うが、ぬるゲーマーでおっさんの自分にとっては非常にいい塩梅の量でした(笑)。


でな。


コレ、アカンやつや・・・・・目から変な汗出るタイプのやつや・・・・・うおおおおおおお!?(泣)


歌を唄うのが好きな狼の化け物が、唯一自分の唄に興味を持ってくれた人間の王子に恋をするが、不幸な行き違いで狼は王子の目を傷つけてしまう。目が不自由になった王子は、その醜い姿がみっともないと城の牢へと幽閉されてしまう。それを知った狼は森の魔女に王子の目を治すことと、王子を助けるために人間の姫の姿にしてほしいと頼み込む―その自慢だった歌声を代償として・・・・・。

ゲームとしては横スクロールパズルアクション、ということになろうか。基本的な規則性をつかんだら、あとは特に難解なギミックがあるわけでなく落ち着いて考えればクリアできるレベルの仕掛けばかりである。

で、なぜそういう設計になっているかというと、本ソフトは基本的にゲームの体裁をとってはいるが、その実態はこのストーリを語るための「デジタル絵本」「デジタル童話」とでもいうべきものではないか、というのがプレイし終わった自分の印象。

そのためかナレーションがしっかりとストーリーとキャラクターたちの心情を朗読してくれるし、そのためのムービー?シーン的な個所も多い。

そしてその語られる化け物の狼=姫の心情がむっちゃ乙女でなあ(泣)、もうこのあたりの乙女心にきゅんきゅんいわされまくりなワケですよ。そしてそれだけに物語の根底に置かれている、姫と王子の間に横たわる大きな齟齬―そこが重く大きくのしかかる。

しかし本作のいいところは、そのダークかつむごい運命の前に置かれた二人がすごく誠実であるということ。

嘘つき姫といわれるように、最初から王子に大きな嘘をついてその手を引いた姫も、その嘘の裏には純粋な心があった。そして結果的に物語は最終的にその嘘から生まれた負債を姫にきっちりと背負わせるわけであるが、王子との旅の中での変化が、姫にそれを受け入れさせる―自分の嘘が招いた結果に対し、姫は最後に逃げ出さないのだ。

だからこその残酷なラストシーンであり、だからこそのあのエンディングの美しさがあるわけである。

こういう感情移入してしまう系のゲームとして最近やったものとしては『人食い大鷲のトリコ』があったが、こっちのほうがはるかに後味の良いエンディングだ。

トリコの話しが出たのでついでに書くと、本作はライト版の『ICO』―その男女逆バージョンともいえるかもしれない。

『ICO』も男の子が囚われの姫の手を引き、その呪いを解くべく旅をする作品だったが、本作は王子を傷つけてしまった狼=姫がその罪を償う贖罪の旅の物語でもある。この男女の違いなどは案外いまの女の子のほうが元気のいい時代性を反映している部分もあるのかもしれない。

エンディングまでのトータルプレイ時間が7時間あるかないかぐらいですこぶる短いほうかと思うが、前述のようにデジタルの「童話」や「絵本」を目指したのであれば、逆に納得だ。
ただしamazonのユーザーレビューなどにあるように、それだとちょっと割高感を感じる、という感想もある意味理解できるので(売上見込みや製作費を考えれば妥当な値付けかとは思うが)、ちょこっとこのあたりをリプライス品などで解消できれば、より多くのユーザーに届くのではないか―それは結果的に売り上げにとっても悪くない結果につながるのではとも思うのだが・・・。

こういうタイプのソフトというのは昨今増えてはいるようには思うのだが、意識的に最初からきっちりやったのは初めてかも。この作品カラーは嫌いではない―というかむしろ大好物なので、こういったジャンルがすこしボリュームをもってくれると嬉しいなあとはおもいつつ・・・なかなかむつかしそうなのも想像がつく。

このあたり制作コストと潜在ユーザー、そのあたりのバランスがうまく取れるといいなあ、と素人なりに感じた次第。



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