BUCK-TICK今井寿+SOFTBALET藤井麻輝という、当時も伝説的なユニットだったがまさかの二十数年目にしての復活、新規音源も出すという。
一報を聞いて音源も待たずにチケット予約したのが昨年秋、で行ってきましたよ赤坂BLITZ!
いや、ライブ終演後小一時間耳おかしい文字通り偽りのない「轟音」のライブは久しぶりだったが、とにかく素晴らしいライブだった。
SCHAFTはご存知のようにインダストリアル(インダストリアルロック/メタル)というジャンルが世間一般に浸透し始めた90年代半ば、日本国内での数少ない著名なバンドの一つ。国外やアンダーグラウンドシーンでは多々このジャンルに該当するサウンドを鳴らしているバンド/ユニットは数あれど、著名なBUCK-TICK、SOFTBALLETというバンドの中核メンバーが主体となっているという意味では、当時国内のこのジャンルでの代表格だったといってもいい。
(もちろんこのほかにもマリリン・マンソンとの共同ツアーの話も出ていたhideやアンダーグラウンドではDEFMASTER等このジャンルには他にも存在感のあるアーティストは多々居た)
で、そのSCHAFTの20年以上を経ての「2ndアルバム」(笑)が1月後半にリリースされたわけで。
ビクターエンタテインメント (2016-01-20)
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「あの」SCHAFTの新作である以上、本作もその「インダストリアル」路線の延長線上にあるんだろうと自分を含む多くの人が想像したと思うが、このアルバムはそれをいい意味で外してきている。たしかにそのサウンドメイキングの中心に藤井麻輝がいる以上、ノイズサウンド的なディティールが載るのは必然なのだが、本作は「インダストリアル」という言葉でくくってしまうには非常に違和感がある―なぜならいい意味でポップさのある、非常にメジャーなロックサウンド―それもレイドバックな意味でのそれでなく、ちゃんと”音”として全うな進化をとげたこの2016年時点でのロックサウンドとしての必然性がちゃんと存在している。
なので初見(初聴)でなまじ予備知識をもってSCHAFT=インダストリアル的な先入観を持って聴くと、本アルバムの真価を読み違える方は多々いるのではないだろうか。
ライブ見た後、インタビューが載っていると聞いてあわてて買いにいった「音楽と人」での藤井氏も似たようなことを言っていて、コンセプトは「スチームパンク」と言われてすごく腑に落ちた。(自分の抱いているスチームパンクのイメージとは若干違うのだが言わんとするところは凄くわかる)
で、結果的にこのアルバムのこのサウンドの意味―90年代半ばのユニットが2016年に新譜を出す―その真価は実際に生(ライブ)でそのサウンドを実際に聴いてみてが良くわかった―正直カッコよすぎるわ!?
自分も正直この「バンドとして」のライブを観るまでは、そういう「インダストリアル」という言葉に引っ張られていて若干混乱はしていた。
事実このライブもオープニングではいわゆるハンマービート的なSEがガンガン流れてひさびさの直球っぷりに「うはははははw」とすがすがしい笑いが止まらなかった。加えてこれまでのライブ経験の中で1,2回あったかなかったかというぐらいの轟音。ステージのセットもLEDライトを使ったと思しき大画面モニタ―このジャンルのある意味代表格ともいえるNINのそれを彷彿とさせる―があり、そこに逆光で浮かび上がるメンバーのシルエットのカッコ良さよ!?そういうディティール的にはたしかに「お約束」的な記号がちりばめられていたのは事実である。
しかし新譜のほぼ曲順通りにMC無しでガシガシ飛ばしていくステージが進むにつれて、どうやらそういったディティールは今このバンドにあってはあくまでもディティールでしかないことに気づいた。
まずなによりノレる―というかもっと言うと「踊れる」感じなのだ、あの轟音の中で。
正直あれだけの轟音(終演後小1時間ぐらい耳がおかしいままになるような)の中でそういう状態になるというのは、ただ轟音だったというのではなく、ちゃんと計算され、構築された轟音だったということだろう。だからちゃんと曲の骨子が伝わるし、いちばん「生モノ」であるボーカルもちゃんと聴きとれる。そしてなによりも強力なメロディが全曲通じてしっかりと存在している―そこが20年前のSCHAFTとの最大の違いだろうか。おまけに客が叫べるフックもおおい。客層はこういう性格のバンド/ユニットなのでおそらく自分のような40前後の客が多かったかと思う+ライブ慣れしてる層らしく、こういうライブでの楽しみ方も知ってる客が多く、正直すごく反応も良かった。
特に今井氏の曲はよりフックの強い曲が多かったので、そこでの盛り上がりは凄かった。このあたりアルバムの流れ同様だ。OPの「TheLoudEngine」で慣れてないと最初ビートに混乱しwそこを抜けるとPVにもなったキャッチな「VICE」、「drift」でクールダウンしつつ圧を上げ再び今井曲ならではの強力なフックのある「SAKASHIMA」で前半のピークがくるという流れ。(おそらくアルバム順どおりだったかと思うのでこの構成だったかと思う)
で、ライブとしては前述のようにほぼMC無しで新譜の曲中心に一部旧曲も交えてなのかな?本編最後までほぼノンストップ。後半もやはりアルバムでも1、2を争うキャッチーかつダンサブルな「SWAN DIVE」前後の盛り上がりが凄く楽しかった。またアルバム〆の「魅」(なんとこんなバンド/ユニットなのにバラードだ!?)も素晴らしかったなあ。
そして今回のライブで面白かったのはこういう殺伐としたジャンルのライブとは思えない終演後のアンコール、そしてそれに応えてのアンコールがダブルアンコールににまでなったことだろうか。
もちろん昨今のアンコールは演出的な面もあることは承知しているし、前作での曲もあることを考えると当然ではあるのだが、何せ今回はボーカルも変わっている。そういう意味であまり期待はしていなかった分だけ、これは嬉しいサプライズではあった。
おまけになんと1回目のアンコールではアルバム未収録の曲を2曲も!これは「次」があると期待していいんでしょうか!?わぐわぐわぐわぐ!?みたいな感じw
個人的に一点だけ反省点があるとすれば、今回のライブに臨んで旧譜の予習復習を怠っていて、旧譜の演奏比率がどの程度だったのか正確に判別できない+それにあわせて暴れられなかったこと-こだけは反省しております(苦笑)。
ということで新年一発目のライブとしては非常に幸先のいい―非常にレベルの高いライブを引いたようでなによりだった。
問題はこれが若い世代のアーティストのそれではなく、インタビューで「二人合わせると100歳だよ!?」と言っちゃっているベテランのそれであったということだろうか。
昨今の音楽市場の急速な縮小を考えるとそれも仕方ないかと思う反面、若い連中はなにをしとる!?と勝手は承知で思うのも事実。
しかし今回のSCHAFT―バンドの面子見たらそら凄いはずよな、という面子しかいないのでそれは酷なことを悟りました・・・w
※今回オリジナルメンバーである今井・藤井両氏と同じくらいキーパーソンだったと思うのはVo.のYOW-ROW氏(GARI)だが大健闘だったと思う。(ヨウロウと読むのではなくヨウイチロウと読むっぽい)
GARIはファーストアルバムは持っていて当時よく聞いていたんだが、ちょっとハイトーンボーカルが目だった+メジャー露出低減もあって以降追っかけていなかった。
しかし今回は旧構成時のVoであったレイモンド・ワッツ(PIG/KMFDM)のあの180越えのクソでかいガタイならではの低音パートにもしっかりと挑んでいて、確かこの2016年時点のSCHAFTのボーカルとしては非常に適任だったと思う。なによりアルバムの〆曲である「魅」のような曲はレイモンドワッツでは無理だっただろう。
以下一応SCHAFTの旧譜を紹介しておく。
アルバムとしては実質一枚「SWITCH BLADE」のみだが、そのリミックスアルバムが出ていて、個人的には当時オリジナルの方よりこのリミックスの方が好きで良く聞いていた。
ビクターエンタテインメント (1994-09-21)
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ビクターエンタテインメント (1994-10-21)
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個別で聴いてみるのも良いと思うが、予算が許すならリマスターされたものに当時のライブ映像を収めたARCHIVESというパッケージが出ているので、こちらの方がお勧めだろう。自分も入手したが、ディスクはもちろん意外と当時のアーティスト写真を収めたブックレットが良かった。当時の今井氏のルックスはもろ「AKIRA」のアレですなw
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というかまあ当然ながら一番お勧めしたいのは今回の新譜そのものなんですけどね。
ビクターエンタテインメント (2016-01-20)
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