【レビュー】『hide TRIBUTE IMPULSE』VARIOUS ARTISTS ほか

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今年で没後20周年ということで命日である5月前後からいろいろと追悼企画があった故・hide。

自分は本体であるX素通りで洋楽経由で彼のソロワークスのファンとなり、非常に影響を受けたミュージシャンの一人。これまでも何度か未発表音源が新技術の開発に伴いリリースされてきたが、彼の没後、そういった発掘音源以外の企画は基本あまり食指が動かなかった。

ただ本年は20周年ということもあって本丸といえるトリビュートアルバムやドキュメンタリー映画などの公開があって、今回は久々にそれらにつきあってみた。

以下備忘録的にその感想を。

■hide TRIBUTE IMPULSE

hide TRIBUTE IMPULSE
hide TRIBUTE IMPULSE

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ヴァリアス・アーティスト
Universal Music =music= (2018-06-06)
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まず久々のトリビュート盤である『hide TRIBUTE IMPULSE』。このhide tributeシリーズはこれまでけっこうな枚数が出てるんだが、企画盤的なところもあり、これまではよっぽど食指の動くものでなければ購入はしていなかった。今回はhideの実質的な音楽的パートナーであったINA(稲田氏)も関わっている+メンツもCoccoさんをはじめ気になる方が参加されていたので行ってみた。

結論から言うと、この盤は案外我々古参向けのファンへ向けてではなく、これから先の新しい・潜在的なhideファンへ向けての呼び水とすべく作られた一枚かもしれないなあ、という感想。

もちろん自分などにもなじみのあるアーティストも参加しているのだが、決して懐古的な感じばかりでなく、新しめの―それも毛色の変わったアーティストたちの参加によって、どこかにいるであろう「未来のhideファン」へ向けての一枚という側面を持っているような気がする。

音楽的な面でいうと、当時のhideというアーティストから受ける印象から比べると、だいぶボーカルアルバム的なサウンドメイキングが目立ち(そういったところも彼の一要素ではあるんだが)そういうところからも前述のように「入門用」的な性格も見て取れる。

ただそういった側面があるのを加味しても、参加している一部のビッグネームのトラックには若干の失望感もある。これはサウンドメイキングがダメとかいう意味でなく、せっかくのこういうアルバムなのに自身の色があまり出し切れていないというか「これならオリジナルのほうがよくね?」ではいかんよなあ、と。hide本人がたぶん喜ばんよ、と。
(だってご本人は自身の曲を他者にリミックスに出すときに「うちの娘がどんなふうに手籠めにされて帰ってくるかと思うとワクワクするw」とか言っちゃう人だったので)

そういう意味で自身のテイストでちゃんと通し切っていたのは女性人二人。CoccoのGood-byeはやはりCocco節で涙を誘うし、SEXFRiEND(Vo.アイナ・ジ・エンドfrom BiSH)のBACTERIAは究極のサイボーグロックの1曲ともいえる原曲をカラッとドライなアコースティックバージョンに仕上げていて素晴らしかった。

そして個人的に本アルバムMVPと感じたのは意外にもTM西川氏だった―あのカラッとした壮快なロックチューンとして完成されていて、どう考えてもあれ以上いじりようのないeverfreeを、打ち込みサウンドかつ曲のカラー、トーンの印象までガラッと変えて、文字通り西川スタイルの1曲としていたのは見事だったと思う。カバーをやるならこれくらいやらんといかんでしょう。
(そういう意味ではやんちゃなイメージのある冒頭2組はその対外イメージに反しておとなしすぎてクオリティは悪くないのに肩透かしな感じだった)

あと特筆すべきは本人の発掘音源による未発表バージョンのHurryGoRoundでしょうかね。
これは同タイトルのドキュメント映画に合わせて公開されたと思われるトラックで、ボーカルの質感からシングルカットされたバージョンと近い時期の録音テイクだろうかなあ。
偶然見つかった的なプロモーションされていたが、これはおそらく稲田さんが把握はしていたけどあえて表に出さずにいたトラックなのではないかと推測。
(このあたり稲田さんが今回偶然「発見した」という体裁とっているが―実際にそうかもしれんけど―そこはあまりクローズアップせずに淡々と出したほうがアンチに餌やらずに済んだのではとは思う)

今回で大きな動きはまた当分打ち止めかとは思うが、もし本アルバムを聴いて音楽を始めるような若い世代が現れるのなら、その時はもっと思いっきりやって暴れちゃってほしいと思う。
それはおそらくお空の上のhideさんご本人が望んでいることかと思うし。

1.ROCKET DIVE / Dragon Ash
2. ピンク スパイダー / MIYAVI
3. D.O.D. (DRINK OR DIE) / FLOW
4. GOOD BYE / Cocco
5. ever free / 西川貴教
6. DOUBT / HISASHI × YOW-ROW
7. ELECTRIC CUCUMBER ※1 / ACID ANDROID
8. EYES LOVE YOU / BREAKERZ
9. Bacteria / SEXFRiEND ※2
10. TELL ME / GRANRODEO
11. hide | HURRY GO ROUND (hide vocal Take2)


■ドキュメント映画『 HURRY GO ROUND』

生前のhideを知らない世代の若い俳優さんがhideの足跡をたどる・・・という体のドキュメント映画だった。このあたりの配役やスタイルも「次の世代の」まだ見ぬhideファンへ向けて、というニュアンスを感じた。

横須賀やLAのレコーディングスタジオ、マネージメント事務所であるHEADWAXなどを主演の俳優さんが訪ねて回るわけだが、自分たちのような古参のファンには特に目新しい部分はない(もちろんこういうドキュメントスタイル故に実感できる細かなニュアンスやディティールの発見というのはちゃんと存在するが)。

基本そういう未知・未見のファンへ向けての性格を持っている本作かと思うが、それでも我々古参ファンにとってぐっとくるのはやはり実弟の松本裕士氏や当時のボディガードの方々が「あの日」の前夜に過ごしたバーで少し踏み込んで当時のことを語る箇所。ここは裕士氏の涙に思わずもらい泣きしたなあ・・・ほんと20年たった今のほうがよくわかるんですよ、お兄ちゃんと目元そっくりなのが・・・。

当時から事故か自殺かとかまびすしく言われること多かったが、自分を含め当時のファンは事故以外には考えにくいというのは一致した見解だったように思う。特に自分としてはこの映画でも力強くコメントしていた当時のRockin’on JAPAN編集長・山崎洋一郎氏のスタンス・コメントに全面的に同意する・・・というかスクリーンに向かって「よっしゃ、その通りや!よく言ってくれた!!」と思わず心の中で叫んでた(笑)。

ということで次世代へ向けての映画でもありつつ、当時からの古参ファンに向けても「人間・松本秀人」の部分を周囲の人間から見ることでより垣間見せてくれたという意味で、決して無駄な一本ではなかった。興味のある方で観れるチャンスがあれば見て損はない一本と思う。

■hide word file

hide word FILE (カリスマの言葉シリーズ # 21)
大島暁美
セブン&アイ出版
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上記の映画と少し似たニュアンスで、生前のhide語録的なものを交えながら関係者にインタビューを行った一冊。編者が当時ビジュアル系アーティストなどを積極的に追っていたライターの大島暁美氏なので、インタビュー部分に関してはしっかりしたものになっている。ただその内容は上記映画と同じようなニュアンスにならざるを得ない部分があるので、当時をよく知っている層には新味はあまり感じられないかもしれない。ある意味改めて時間を経てからの証言集というニュアンスでとらえればよいかと。

あといちおう画像が紹介しやすいので上記amazonのリンクを貼ってあるが、本書はどうもセブンネットショッピング(セブンイレブンの通販)専売商品のようである。気になって購入を検討される方はそちらから購入されるのが良いかと思う。





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