【レビュー】『君のいない世界~hideと過ごした2486日間の軌跡~』I.N.A.(hide with Spread Beaver)

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これも没後20周年の一環として企画された部分もあると思う一冊だが、hideという稀代のアーティストについて・・・の一冊でありつつも、現在の世界のポップ/ロックミュージックにおいては当たり前の技術となっているDTM/DAW(コンピュータによる音楽制作)、その黎明期の貴重な歴史の証言という側面ももった一冊である。

本書はhideという稀代のミュージシャンと彼を支えたおなじく稀な才能の持ち主である稲田和彦(I.N.A.)―その二人の蜜月時代―ある種の「青春」時代を語ることによって結果的それが浮き彫りにされている。この二人がいかに自分たちの作る音楽にストイックに向かい続けていたのか―それが当事者ならではの筆致で詳細に(そして明るく)描かれている。

その内容は当時の二人がどれだけ最先端のことをやっていたのかということの貴重な証言でもあり、本書はこの点でも重要だ。しかしそれはあくまでも本人たちがカッコいい音楽を作ることを(苦しみつつも)楽しんでやっていた結果に過ぎないということも大事なポイントだろう。筆致が正確で余分なものがないのも稲田さんの性格が出ているようでいい。

ある種の青春時代の証言―しかしそれだけに「あとに残された一人」のことを考えるとほろっともさせられる一冊。

打ち込みやDTM/DAWで音楽を作ったことのあるすべての人たちにぜひ読んでほしい一冊である。

君のいない世界~hideと過ごした2486日間の軌跡~
I.N.A.(hide with Spread Beaver)
ヤマハミュージックメディア
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【レビュー】『hide TRIBUTE IMPULSE』VARIOUS ARTISTS ほか

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今年で没後20周年ということで命日である5月前後からいろいろと追悼企画があった故・hide。

自分は本体であるX素通りで洋楽経由で彼のソロワークスのファンとなり、非常に影響を受けたミュージシャンの一人。これまでも何度か未発表音源が新技術の開発に伴いリリースされてきたが、彼の没後、そういった発掘音源以外の企画は基本あまり食指が動かなかった。

ただ本年は20周年ということもあって本丸といえるトリビュートアルバムやドキュメンタリー映画などの公開があって、今回は久々にそれらにつきあってみた。

以下備忘録的にその感想を。

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子 ギャル/hide

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これは出した価値のある1曲だった。ヤマハVOCALOIDチームと、hide亡き後も彼の片腕としての立場を全うし続ける稲田(INA)氏の技術と努力には感謝の言葉以外ない。

子 ギャル
子 ギャル

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hide
ユニバーサルミュージック (2014-12-10)
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hide最後のアルバムとなったJaZooに本来収録される予定だったトラックをVOCALOIDの技術を使い、”hideロイド”的なものではなく、純然たるhide名義に恥じないクオリティをもった1曲。
タイトル曲を筆頭に、発表順をさかのぼる形でのベストアルバムともなっている1枚。

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