新年一発目の映画は初詣ついでに府中で見てきたこの作品でした。
製作がディズニーに移ってからの新シリーズの2作目になるが、作品としての方向性が大きく変わってきたのが、ようやく明確にわかるようになってきた。
本国アメリカでは賛否両論という話も聞くがそれもある意味納得。シリーズ大作映画なので普通の映画と評価の基準が違うと思うが、それでも色々と”変質”は感じた。それが吉と出るか凶と出るか―現時点では次回作次第、といったところか。
まず上のトレーラーの映像から感じる印象と本編を実際に見た印象はかなり異なる。
なによりポイントはこの作品の主役は新世代の二人ではなくこれまでのシリーズの”主役中の主役”とも言えるルーク・スカイウォーカーその人だということ。
加えてそのルークと同じくらい分厚い存在感を放っていたのが撮了後に亡くなられてしまったキャリー・アン・フィッシャー演じるレイア姫。
狂言回しとしては新世代の主人公たちであるレイやカイロ・レン、新規のアジア系女性兵士のサブエピソードなどがあるが、物語の根底はルーク(そしてレイア)のエピソードだったと言える。
で、おそらく賛否両論になるのはその二人の能力まわりの描写。これが普通のSF・ファンタジー系の作品ならば珍しくないありふれた描写と言えなくもないのだが、これだけ歴史の積み重ねのあるシリーズにおいては「え、そうくるか?」という感じで良くも悪くも驚きがある。要はこれまでの作品文法にない新たな表現方法が多々導入されていた。
これを是とするか否とするかは人それぞれだろうが、個人的には「作品が面白くなるのであればアリ―ただし現段階ではそれはわからない」というのが正直なところ。
ただ面白いのは(これは前作でも感じたのだが)その新しい描写の部分が非常に日本のマンガ・アニメ的というか、日本のサブカルを見慣れた目にとっては珍しくもない描写・・・というか「えっらいベタなんもってきたなあ、かっこええからいいけど(笑)」という感じ(苦笑)。ジェダイは黄金聖闘士やったんかwみたいな。
そういう描写にまとわれて、本作は前へクソロジー(6部作)の中核キャラであるあの人が退場してゆくわけですが、そこまでの逡巡の描写がイマイチわかりづらいのは少々もったいなかった。というか前述のようにこのSWシリーズは普通の映画と文法が違う―通常のハリウッド映画のような登場人物の感情への没入ができるようなシナリオ設計になっていないのがある意味特徴だったかと思うのだが―本作ではそこから無理やり通常のハリウッド映画的な描写へと切り替えていっている感が濃厚だ。なのでこのあたりの分かりづらさというのもそういう描写の混乱故のものかもしれない。
以上のようなもろもろのことから、いろんな意味で「転換点」的な作品と言っていいのかもしれない。
で、本作によってシリーズはより一層新世代のキャラクターたちへとその視点が移って行くわけだが、その新キャラクターたちはやはりまだまだキャラとして十分な吸引力を持ち得ていないなあ・・・というのが正直なところ。
現時点では一番の敵役キャラといえるカイロ・レンなどは演ずるアダム・ドライヴァーの好演があってなんとか重みを保っているが、その状態でもラスボスとするには軽すぎる。これは一重にここまでの脚本のまずさの積み重ね故か。ヒロインのレイに関しても同様で、悪いキャラではないのだが、非常にわかりにくい描写が多い。これは前述の作品としての文法の改変による悪影響で、なまじ現代作品的な複雑な人物描写をしようとしたせいで、この神話的文法の作品に必要な「類型的」なキャラ造形から外れてしまっているからだろう。そしてその割には、これまでの尺でその内面を描くところまではできていないという。
で、今回一番感情移入できたのはレイアが倒れた後、反乱軍の艦隊司令を代行するご婦人の将官がいるのだが、その人周りの描写だけかなあ。このキャラクターは非常に良かった。そしてポーダメロン、お前は本当にダメロンだw
(彼は前作のハンソロ的な立ち位置にしたいのかもしれないが、基本的に全然感情移入できないーそれならまだ今回出てきた牢屋の中で出会うハッカーの方がキャラ的には感情移入できるだろう)
ということで、賛否両論納得の色々と混乱をもたらすエピソードではあった。
ただし2時間超のおそらくシリーズ中最大の長尺をダレさせずに見させる力技はさすが。そしてベタを承知でいうとタイトルでもある「最後のジェダイ」ールーク・スカイウォーカーの物語クライマックスでの描写は非常にかっこよかった。
さてということで色々とこれまでの作品資産を使い果たし(逆にいうと整頓し)いよいよ新世代のキャラたちの作品としての真骨頂が問われる段階になってきましたが、さてはてどうなることやら。
まあお祭り映画でもあるので、野暮なことはいいっこなしで素直にわーきゃー!?言いながら見るのが正解だとは思うので、素直に次回作を待ちたいところではある。