bookwalkerでの小学館作品取り扱いで吉田聡と並んで購入したかったのがこちら。
ただ自分の場合はこの大作家の各代表作にはなぜか食指動くこと少なくて、その短編集のほうがなぜかツボに入ることが多い。
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上記の一番最初の短編集『るーみっくわーるど』(全3巻)はいまも実家で大事にとってある。電書版で下記の新版が出ているようだが、そういう理由で今回コレはスルー。
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で、今回はこれまで未読であった上記の最初期短編集以降の以下を購入してみた。さっそく読んでみてなぜ短編集のほうが惹かれることが多いかちょっとわかった気がする。これは舞台が現代が多い+意外と飛び道具(超常現象や変身etc)が少なめで、にもかかわらず作中登場人物の心の機微を少ないページでまとめ、そのうえで十分読み応えのあるレベルに仕上げている。ある意味その最高峰のマンガアウトプットエンジンを駆使してコンパクトに、かつ余裕をもってエンジン回してるという印象で、コレ、ある意味短編というものの理想形だろう。
とにかくあらすじだけをたどれば非常にオーソドックスともいえるようなシンプルなストーリーとギミックにもかかわらず、それが無駄なくスパン!と厳選されたコマの中に落とし込まれているから一作一作読みごたえがある。無駄がないことに加え、何気ないところの(おそらく無意識に処理されている)描写に大御所ならではの描写の巧みさなどがあって、こと短編というジャンルにおいてこれほど理想的なバランスをこれだけの数にわたって維持できるというのはやはり化け物としか言いようがない。
またそれぞれの作品のヒロインがちゃんとかわいらしいのもよい。(これはビジュアルだけでなく感情移入できるか否かという点)で、意外と話の狂言回しになるのがけっこう年配のオッサンになることが多いというのも面白かったw
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小学館 (2015-07-17)
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また今回一気に大量に読んでみて面白かったのはその画の変遷。
少し前、久々に著者の最新作を見ておもわず「!?」となる感じにそのデッサンが変わってしまっていることに驚いたもんだが、続けて読んでみるとちゃんとその経緯がわかるというか「ああ、なるほど、こういう要素の部分が誇張されていったんだな」と分かって、違和感のあった最近の画風にもなんとなく納得してしまった。
ただ、やはり一番脂ののっていたであろうと思われる’80年代末~’90年代の画風は色気と質感がほどよいバランスで飛びぬけて素晴らしい。
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(おそらく一番脂がのっていたころの作品が多く収録されている一冊)
小学館 (2015-07-17)
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(こちらが確認できる限りでは最新短編集)
で、実は短編、といいながら一番のお目当てだったのは以下の「人魚~」シリーズ。
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久々に読んでみたけどやっぱりこのシリーズいいなあ。
個人的にはこの連作シリーズは高橋留美子からのウルフガイシリーズ~少年ウルフへのオマージュというか返歌のように思う(この点おそらくどなたかがきっと言及されているのではないか)。
人魚と人狼という違いはあれど、双方不死者であるという点やどちらも「なりそこない」という本来その力を得るべきでない者たち故の哀れな姿の登場することいい、共通点は多い。
ただウルフガイシリーズがその敵対する巨悪とでもいうべき組織があったのに対し、この人魚シリーズは市塵に不死者という異物が紛れ込むことによって浮かび上がる普通の人間たちの底深い暗部を描いているというのが違いか。(ウルフガイシリーズでの「不死鳥作戦」のような描写もできなくはないだろうが現時点までではそういった描写はない)
このあたり、作家性の違いということがあるかもしれないが、案外男性作家と女性作家という違い故なのかもしれないなとも思ってもみたり。
とまあこれだけ読むと今回購入しなかった最初期の短編集がまた読みたくなってしまった(苦笑)。
一説によると『犬夜叉』の原型となったという話もある「炎(ファイヤー)トリッパー」とかまた読みたいなあ。けど実はコレ、火災を見て時間をジャンプするというのはあの蝶のあざのある平井作品のあの人をつい連想するわけですが・・・(苦笑)。
ただ高橋作品の場合はその力量のせいかそういった共通点を感じさせない独自の作風になっているのがさすが。あともしインスパイアされたのだとしても、オマージュ的な部分が強いからだろうか、少しも嫌味や違和感は感じない―このあたりもただただ嘆息するばかりである。
作家としての力量がある、というのはそういうことなんだろうなあ。
そういう作家の色とりどりの短編を一気に堪能できるというのはこれまさに至福というところ。
いやはや、堪能させていただきました。