いやーえげつない、凄まじいのきたわ・・・(誉め言葉)
ファンクラブ盤申し込んでいたのでだいぶ前に手元に届いていたんだが、おかげでちょっと消化するのに時間かかった。
初の武道館公演を成功させた次の一手がよりによって梶浦由記作品。こんなすごいシングル作っちゃって(いい意味で)この後どうするんだろうなあ・・・。
SME (2017-10-11)
売り上げランキング: 107
4曲入りのシングル、どれも非常にウェイトのある聴きごたえのある曲ばかりだが、なんといっても本盤の最大の目玉は梶浦由記の手による『花の唄』だろう。
いわゆるするっと聴けるタイプの曲とは真逆の構成なんだが、あえてこういう複雑さを持った構成にしているというかいい意味での引っ掛かりを作ってあるというか、とにかくベテランの作曲家による熟練の技が存分に発揮された1曲かと思う。
そしてその技のすべてはこのAimerというシンガーの持っている”声”という最大の武器を余すところなく発揮させることに費やされているように見える。これはAimerさんご本人のインタビューでも言及されていたが、ミキシングのバランスを聴いてみれば一発でわかるというかもうほんとこの声を引き立てることをど真ん中に置いたミキシングになってる。
そのうえでおそらくこれまでのAimer作品の中においていちばん感情の振幅がおおきいであろう歌詞世界―そしてそれを持てる最大限の技と熱量で歌いきっている1曲だと思う。こと歌唱という点に関しては現時点でAimerさんの中での最高峰の1曲になったといっていいのではなかろうか。
このあたりは理屈は要らないのでぜひヘッドホンをして音源を聴いてみていただきたいところ。ただし前述のようにあえてするっと消化できないようにしてあるに思える曲構成の部分もあると思うので、できれば5回ぐらい連続で聴いてみていただきたい。大サビへもっていくまでの歌いわけ―声の振幅、間奏のとり方から最後へのなだれ込み方などほんとすごい。某劇場作品のタイアップということだが、そのヒロインの潜んだ狂気を余すことなく再現しているといっていいだろう。
(該当作品を自分はほとんど知らないのでこう述べるにとどめておく)
カップリングについても述べておく。
1曲目の『六等星の夜』は彼女の代名詞ともいえるデビュー曲。これまでのアルバムに収録されているバージョンのぶっきらぼうな感じも好きなんだが―このぶっきらぼうさ故の魅力がった―このバージョンはこのバージョンでいい意味で余裕が感じられてより優しくあたたかい感じに進化している。表現される世界がより広く大きくなっているといえばよいだろうか。たぶんこの曲は今後も節目節目で歌われていくんだろうな。
2曲目は『ONE』。この曲は武道館で初披露されたのを聴いているが、その時と少しイメージが変わっているが本来ならこれも「新機軸」ということで別シングルとして切ってもいいぐらいの曲。ある意味以前のいわゆる”夜の世界”の路線からはガラッと変わって明るくポップでダンサブルなナンバー、歌詞も非常にストレートである。
普通のポップスという言い方もできるかと思うが、その普通のポップスをAimerという歌手が歌うと独特の色になるというのがこの曲の聴きどころだろう。
ちなみに公開時期が先行していたこともあると思うが、YoutubeでのPVの回転数は『花の唄』よりこの『ONE』のほうが勢いよく回っていた。
この勢いの違いはPVのポジティブなカラーと若い世代へ向けた演出だったということが大きいと思うが、ある意味そういう若い世代の気持ちをがっつりつかんだということだろう=ちゃんと新しいリスナー層へリーチしているということで、これはおおいに歓迎すべきこと。そういう層が今後の彼女のファン層の中心になっていくんだろうな、素晴らしいと思う。
最後の曲『糸』は中島みゆきのカバー曲。自分は中島みゆきは全曲網羅するほどは聴きこんでいなかったのでこの曲は初めて聴いたんだが、中島作品でこういう曲があるとはいい意味で意外だった。非常に暖かく優しい感じの一曲でこの曲をカバーとして選んだのもいいチョイスだと思う(元々はトヨタホームのCMのためのタイアップだったらしいが)。『花の唄』の強烈さをこの曲が中和してくれて、本シングルを聴き終わるという構成になっているのも考えてあるなあと思う。ただの優しい感じの曲ではなく中島みゆきという存在感と重みのあるアーティストの曲だからこそうまく中和できているんだろう。こういうカバー曲でこそその曲を生み出したアーティストの地力というのは逆説的に明らかになるということだろう。
ということで”武道館以後”の1stシングルとしてはこれ以上望むべくもない内容。全曲捨て曲なしでこのAimerというシンガーの魅力をいろんな切り口から堪能できるまたとない一枚かと思う。未聴の方はこの機会に是非。
SME (2017-10-11)
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