ゼロ・ダーク・サーティ/キャスリン・ビグロー監督

標準

昨今北朝鮮情勢がかまびすしいが、我が国も当事者とはいえその主役はやはりアメリカだろう。

予備知識なしで見たのだが、そのアメリカの敵対勢力への徹底ぶりをタイミングよく教えてくれるような内容の一本だった。アメリカやっぱりいろんな意味で凄げぇわ。

ゼロ・ダーク・サーティ (字幕版)
(2013-12-03)
売り上げランキング: 31,185


本作はアルカイダの指導者・ビンラディンを殺害するまでをアメリカ側視点で描いた一作だが、ハリウッド製の軍事モノにありがちなドンパチ主流の作品ではなく、敵を追い詰めるまでの徹底的なインテリジェンス=諜報活動をおもに描いており、主役としてその女性捜査官を据えたところに本作の大きな特徴があるように思う。

本作はドキュメンタリータッチに近い感じの作風だが、作戦の性格(暗殺)からその詳細は現時点では公表されていないわけで、このあたりは制作側の自由度につながるわけだが、そういう部分で変にエンターテイメント的に振らず、ストイックに諜報・分析活動の描写へ力を割いたのは正解だったと思う―で、なぜこういう画作りができたかと思ったら、監督も女性の方なのね、ある意味納得。

この女性監督であるというところが、軍や諜報といったともすればマチズモ的な傾向が支配する世界の物語を冷静で一歩引いたような視点で描写するのに役立っているように感じた。それがドキュメンタリータッチの本作ではさらに相乗効果として働いているように思う。

かといって物語として淡々としているだけかというとそうではなく、同僚の女性が逆に敵の罠にはめられて爆殺されるところや、現地責任者に食って掛かるところなど、主人公に対して共感できるシーンもほどよいバランスで組み込まれている。

で、結局はそういう冷静な諜報・分析を積み上げていっても100%はないわけで、そこで出てくるのがやはり腹をくくるというか「決断する」ことの重要さ。

これを適切に出来る上司=政治家の有無が、その国の国力の差となって現れるんだな、というのは感じさせられた。

いやー、しかしこんな徹底してやる組織相手にケンカ売るっちゅうのは生半可な覚悟ではできないとあらためて感じさせられたなあ。『13時間』を見たときにも思ったが、やるときには徹底してやるというか、腹くくったあとのアメリカの底力というか恐ろしさというか。

なにはともあれ、アメリカという国の政治的な思考形態を感じさせてくれる、静かな、それでいて激しい一本でありました。
凄い力作だと思うので、見れる環境のある方は一度ご覧になってみることをお勧めする。

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