これもだいぶ前に出版されていたやつだが未レビューだったので取り上げておく。両作品ともノッツ作品らしい作風は健在だが、両作品を同時に読んだことである意味マンガ家としてのノッツ氏は良くも悪くも過渡期にあるのかな、などと想像もしてみたり。
『初情事まであと1時間 1 (コミックフラッパー)』
『初情事まであと1時間 2 (コミックフラッパー)』
『もしも部 (バンブーコミックス)』
もしもこんな部活があってこんなシチュエーションだったら・・・と想像する「もしも部」の部活を描く『もしも部』、オムニバス形式でいろんなシチュエーションでの「その瞬間」までの1時間を描いた『初情事まであと1時間』。どちらもノッツ氏らしい作風で妄想満開の良作ではあるんだが、あれ・・・と読んでてなにか違和感。もちろんこちらがおっさん読者というのもあるかもしれないのだが、これまでのノッツ氏の作品に感じるような「身もだえ感」とでもいうべきものが少ないなー、と。
で、これなぜかと考えてみるに、氏の作品はこういった妄想とかベタなシチュエーションとかの切り取り方が絶妙であるんだが、加えてそれになにがしらのひねりというか「ねじれ感」があって、そこが笑いにつながっていたように思うんだけど、この最近の作品群ではそういった部分が若干弱い=ストレートにそのベタさを描いているということなのかな、と。
特に『初情事まであと1時間』のほうは2巻まで巻数を数えてさらに続刊するっぽい感じだし、ある意味こういうストレートなノッツ氏というのを求めている読者というのも多いということか。
確かに1巻のほうの勇者と魔族のそれなんかはストレートさ故のリリカルな感じもあって嫌いじゃないんだが、さすがにそういう正統派を連作で提示されると意外性に欠けてくるのも事実。
もちろんノッツ氏は音楽作品のころからそういったストレートなリリカルさも素晴らしいのは存じ上げているが、『テレパステレパス』的なカオスさを持った作品も作れる方なので、ついそういったところも期待してしまうわけですね。
しかし長く続けてらっしゃる作家にはこういった作風の過渡期のようなものはあると思うので、ある意味このあたりが「一皮むける」タイミングということなのかもしれない。才能のある方かと思うので、ぜひさらなる新境地に進んでいただきたいところ。
『初情事まであと1時間』
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※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正