以前に「このコラボ路線はぜひ続けてほしいと思う」と書いたことあったがまさかここまで徹底してくるとは思わなんだw
ただそれ故にAimerというアーティストのディスコグラフィの中で本作が今後どういう意味付けをもつアルバムになるのかというのを現時点で判断するのはむつかしい一枚。
しかし著名なコラボ陣からも分かるように一曲でも気に入った曲があったのなら買って損はない―そういう非常に質の高いアルバムである。
SME (2016-09-21)
売り上げランキング: 7
上述のAimerのディスコグラフィの中で本作がどういう意味をもつアルバムになるのか不明、と書いたのは本作がほぼコラボ作品だけで構成されており、これまでのAimer作品のカラーとかなり色の違う作品になっているためからである。ただそのためAimerという「声」、その魅力がより浮き彫りにされているアルバムだ。これはこれまでもいくつかあったコラボ作品にも言える傾向だが、本作はそれがよりはっきりとわかる一枚になっている。
そしてその特徴的な「声」故に、これだけ多彩なアーティストが参加しているにもかかわらずちゃんと1枚のアルバムとしてまとまっている。もちろん作風の違いはそれぞれの曲にはっきり見えるのだが、それによせあつめ感がない・バラバラになっていないというのはさすがだ。
先行のONE OK ROCKのTAKA、TKfrom凛として時雨とのシングルを評した際はかみ合ってない感があると書いたが、不思議とこの一枚を通して聴くとまとまって聞こえる、ひとつは聴きなれたということもあると思うのだが、やはり同作者・他曲が複数並ぶと全体として均される部分があるのだろう。
アルバム全体としても先行シングルにもなった『insane dream』に代表されるワンオクTAKA氏の作品が全体のトーンに大きく影響していると思うが(なにせもっとも提供曲数が多い)、Aimerというボーカルの新たな魅力を引き出した、という意味ではandropの内澤氏の作品とスキマスイッチのプロデュース作品が特筆されるべきだろう。
また先行シングルの段階で評価にまよったTK氏の作品だが、これは氏のソロライブを見に行って2曲とも生で聞いた時点で肯定的な評価に変わった―ライブテイクで聴くそれは非常に素晴らしかった(このライブにAimerさんはオープニングアクトとして出演)。またワンオクTAKA氏プロデュース曲も静か目な曲調の作品や英詞の作品は非常にしっくりくる。そしていま非常に露出度も上がっているRADWIMPS野田氏による『蝶々結び』については言うまでもないだろう。なによりアルバム全体が50分前後というのもあるがでけっこう何回も回してるのだ。
ということで非常に質の高い楽曲の収められた良いアルバムだと思う。特にAimerという人の声に惹かれて初めてアルバムを聴いてみたいという人たちにはうってつけのアルバムだろう。
ただ、このコラボの比率からボーカリストではなくアーティストとしてのAimerカラーがどこまで反映されているのか、というのが正直読めない。共同プロデュースとあるし、インタビューなどをみてもしっかり共同作業で作り上げているというのはわかるので、完全なお任せプロデュースでないことははっきりわかる。ただ純粋にどの程度彼女自身のアーティストとしての良い意味でのエゴが出ているのかというのは、これからあとに作られる作品を聴いてみないとわからないように思う―それぐらいこれまでのAimer作品とはカラーが異なっている。
もちろんこれは悪いことではなくて、脂ののってきたアーティストにはよくあること、というか逆にこういう冒険をするためにはそのアーティスト自身が上り調子の時にしかできない。
だからけっこう著名なアーティストは、名アルバムと呼ばれる前後の作品で従来と毛色の変わった作品をリリースすることが多い(たとえばhideにおけるZilch等)。
そういう意味で本作は非常に質の高い良いアルバムでありつつも、イレギュラーな一枚といえるかもしれない。
しかしそのイレギュラーというのは非常に幸せな意味でのイレギュラーで、アルバムタイトル『daydream』というのは言い得て妙だ。この昼間の素敵な蜃気楼のようなアルバムの次にAimerというアーティストがどういう方向へ向かうのか―ある意味一つのターニングポイントとなる作品となるのだろうか。ここからアーティストとしての彼女自身がなにを吸収しどういった音に結実させるのか―今後が非常に楽しみである。
※また本アルバムの特典付きのバージョンではいくつかのPVのフル尺と、昨年のライブツアーDAWNからの映像をなんと15曲分も収録しているという大盤振る舞い。そういう意味でもこの機会にAimerというアーティストに興味を持った方にはぴったりの入門版になるだろう―事実非常によいパッケージングだと思う。
※個人的には阿部真央嬢とのデュエット『forロンリー』が再録されたのはよかった―この曲のボーカルワーク非常に好きなのだ。また澤野氏の作品は今回は『ninelie』だけなのは残念だが特典のディスクにはタイアップであった『甲鉄城のカバネリ』の特殊エンディング回の映像が収録されている。これは非常に綺麗だったので見たいと思っていた映像、ちょっと得した気分(笑)。アルバムのトーンからすると同作からの『Through My Blood』も収録されていればまたアルバム全体の印象は変わったと思うんだが、そのあたりちょっともったいないような気はするな。
SME (2016-09-21)
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