劇団☆新感線『乱鶯(みだれうぐい​す)』@新橋演舞場

標準

e+(イープラス)のニュースメールで昨年告知あり、ちょっと気になってた劇団なので見てみるかということで見てきました@新橋演舞場。
時代劇設定ということもあり、より大衆演劇の延長線的なニュアンスもありつつTVドラマ的というかマンガ的というか・・・非常にいい意味でのメジャー感を感じる舞台だった。

midare_uguisu

江戸の街を騒がせていた盗賊・鶯の十三郎(じゅうざぶろう)は一人の裏切り者の手によって仲間を失い、自身も全身に深い傷を負う。そこを奉行所の小橋右衛門に助けられ、貧しい下町の居酒屋・鶴田屋にかくまわれる。三日間生死をさまよった十三郎に小橋は「これを機に足を洗え」とうながす。数年の時が流れ、十三郎は源三郎と名乗り鶴田屋の板前として働いていた。そこに十三郎を知らぬまま小橋の子息・勝之助が客としてやってくる。しかし勝之助の目的は近頃噂になっている押し込み強盗・火縄の砂吉がまたどこかの大店(おおだな)を狙っている、なにか知っていることはないかと下町の住人たちから聞きだすことだった。市井にまぎれカタギのような生活を送っていた十三郎の周りに再び不穏な空気が漂い始める。全二幕、休憩30分強を挟んだ三時間近くの大作。


舞台・・・とくにいわゆる演劇界隈の先端を行くようなものを見る機会はほとんどなく、たまーに気になったものを見たりする程度の自分なのだが、ここは時々名前を聞くのと、前述のようにe+(イープラス)の全席押さえてる公演だったようなので申し込んでみた。で、ズバッと感想を言うと面白かったです。

ただ、こういう舞台界隈の常識をあまり知らない分、いろいろ興味深い点や、今後この界隈の業界がどういう方向へ進むのだろうかというのはいろいろ考えさせられもした。

基本、この劇団は特に時代劇専門というわけでもないらしく、いろいろやっているっぽいが、今回は時代劇ということ+新橋演舞場という会場の雰囲気からなんとなく以前見た大衆演劇的なものの延長線上にあるような印象も受けた。
もちろんセットは大きな会場ならではのまわり舞台のからくりをうまく使ったり、背景となるかきわりを縦横無尽に動かす+非常に現代風のBGMとライティングで、それとは比べものにならない。ただ「劇」という基本の部分ではある意味オーソドックスな芝居と言えるように思う。

またどことなくセリフ回しに細かな笑いが入っているところや、筋書きの分かりやすさ的なところはいい意味で少年マンガ的な空気も感じる―もっといえば一昔前の大映ドラマ的なものをもっと洗練させて提示しているといえばよいか。基本そういったこともあって、この2016年的な舞台でありつつ、いい意味でのレトロ感もあり、そういったものがこの手の演劇の魅力の一つなのかなとも思ったり。また尺の長さやシナリオに掛けられている手間と密度を考えてみると、下手な映画一本分以上の労力は投入されているようにも思う。動いているスタッフと公演の日数を考えると、チケット代はこの手のものの相場を知らない自分としてはやや高額にも感じたが妥当な金額ということだろう。

その一方で、そういった空気や舞台的なお約束を取り払って考えてみた時に、他のメディア―マンガやアニメ、映画やTVドラマといった”パッケージされた”モノに対するアドバンテージというのはどうなのかな?というのも前半は特に感じた。これは生=ライブで見せるには、よほどそこに生ならではの動きなり迫力なりがないと洗練されたそういったパッケージメディアに対して見劣りする場面もあるだろうという点が一つ。そして本作が非常によくできていただけに「これそのまま撮れば映画にもなるよな」的に感じたように、その表現手法が非常に「映像的」であること。これは舞台演劇をアップデートさせたといえなくもないと思うが、逆にいうと映像的なパッケージコンテンツに寄せていっているともいえ、その両者の差異はどんどん薄くなっているということでもある。このあたり、この舞台演劇界隈というのはこの先どうなっていくんだろうか?というのは単純に知的好奇心から気になるところではある。

そして本作は「BLACK」と一部タイトルに入っているように、けっこうハードな描写があるシナリオだ。ギャグテイストを絡めて楽しい舞台には違いないのだが、その楽しさの中で登場人物たちに感情移入させられていればこそのシビアなクライマックス。ここは上述のような技術的なところ云々を抜きにして文字通り舞台に見入ってしまった。俳優さんたちの演技も素晴らしいものだったと思う。そしてラストシーンもそれこそ「映像的」なシークェンスではあるが、なかなかビターな感じの〆で、いい意味で余韻を残したラストで非常に満足感が高かった。

ということでなかなかいいものを観させてもらったと思う。チケット代がけっこうするのでそうホイホイとは観に行けないが、固定ファンがいるというのは分かる気がするな。
あと今回は夜の部で見たが、新橋演舞場のような飲食設備がしっかり整っているところでお弁当もあるというのなら、昼の部にお弁当を食べつつ見るというのも、味があっていいかもしれない。次の機会があればぜひ挑戦してみたいところ。

さほど舞台を数見慣れていない自分にとってはなかなかいい経験でした。

コメントを残す