んー、今回ほどどう評価するのか戸惑いがある作品集は長い間ファンやってきて初めてだ。
KADOKAWA/角川書店 (2016-02-22)
売り上げランキング: 9
まず全体としてフツーに内容的な面から評価するなら悪くはないんだ。ある意味前作のDESIGNS4よりも一般受けする内容かと思うし、文章量=情報量も程々多い。
特に以前出た小冊子の再録とはいえ、新規絵を大量に盛り込んだ『太陽星団学校案内』、星団各惑星の食文化について詳述してあるコラムの部分は、食の描写の有無が傑作の条件の一つと思ってる自分としてはすごく評価できる。
しかしなー
旧SR3とアシュラテンプル相当の新デザイン、こらアカンやろ?
もちろん今後作中での描写でこのあたり変わってくると思うが、ここは素直に第一印象を後の証拠のためにも書き残しておこうと思う。
ちなみにながーくファンやってきて氏の文章に腹が立つことは数回あったが、それでもそのデザインの素晴らしさの前には屈服してきた。逆にいうと、どんなにビッグマウスであっても納得できたのはその「鈍器でブン殴られるような」素晴らしいデザインあってのことだ。
今回も全く素晴らしいデザインがないというわけではない―いや、むしろ人物や服飾のデザインはよりキレが増しているようにすら感じる。
だが繰り返しになるがHL1(旧エンゲージ)とホウライ(旧アシュラテンプル)のデザイン、これをみたとき思わず本当に声を出して
「これは・・・アカンやろ」
とつぶやいてしまった。
もちろん、これは旧MHのデザインの時代の固定観念をひきずっている世代だからということもあるかと思う。本稿起こす前に数回読み直してみたが、ひとつは「旧MH時のデザインラインをことごとくNGにしているのか?」という点には気はつきもした。(ただしこれも厳密にはどうかというと微妙で、エンプレス=カイゼリンは特例だとしても、各代表的なGTMのディティールにはそれに相当する旧MHの意匠を細部には意図的に残してはいるようだし)
で、自分なりに「アカンやろ」と感じた理由を書いてみる。
まずHL1、これなんでいまさらこんな昔のヒーローロボットのようなシルエットでなければいけないのか?このシルエットが「新しく」感じるかというととてもそうは思えない。
ただ、旧MHのラインに思い入れのない、新世代の読者には受けはいいだろう。ある意味旧ラインで敢えて例えてみると彗王丸的なアプローチかと思う―少しも個性的ではなく、いわゆる一般的な「カッコイイ記号」でまとめてあるデザインのように見える。
もちろんこれが新規の勢力の新規のGTMということであれば、彗王丸の時と同じように「ほー、えらいヒロイックな(ベタな)カッコ良さの出してきたな」で済んだと思う。
ただ、このHL1=ジュノーンというのはある意味もう一つのFSSのシンボル的な重みを持ったデザインだったはずで、それにこのベタなかっこよさの記号でまとめられた無個性なデザイン持ってきたというのは正直唖然とした。
なので上述のような言葉が思わず口から洩れ、言上げしてしまった次第。
続いてホウライ=アシュラテンプル。
これはある意味バッハトマのガストテンプル=カーバーゲンが「MH時代=末期デザインでスカスカ」から「GTM=新規一転で良デザインに」の真逆で、なにか凄いものにしようという意気込みが空回った感じで、ディティールだけが複雑化したある意味雑なデザインに見えなくもない。その証拠にたぶんシルエット一発ではっきりそれとわかるようなカッコよさはこのデザインにはないのではないか?
ただ繰り返しになるが、このあたり「旧MH時代のデザインの否定」という部分が一番顕著に出たから、自分のような古参の読者にはそう感じられるのかもしれない、ということは付け加えておく。そういう意味ではまっさらな感覚でこの画集を見た若い読者がどう感じるのか。そこは自分としても是非知りたいところではある。
では今回メカものが全滅かと言えばそうではなく、連載再開時のNT誌表紙にもなっていたアマルカルバリは昔からのいわゆる「グルーン=青騎士」の系譜のデザインでありつつも、大胆なスリットの入れ方で、ここはやはりうならされた。こういうのが良いデザインであるというのは疑義をはさむまでもないと思う。
他にはバストショットのみだが旧破裂の人形とA-TOLLスクリティ相当の新規デザインが掲載されていたが、ここは正直判断を保留する。なぜなら上述のアマルカルバリ程の衝撃はうけなかったので。
(正直この「巻き込み」系のデザインは実際に動いてみないと良し悪し分からないように思う)
ということで、ある意味本作の大黒柱の一つであるはずの「メカ」「ロボ」のデザインに関しては非常に心中複雑だ―正直メカ描くのに飽きてるなら、もう新規デザインがんばらんでもいいじゃん?とも思う。興味のわき起こらない部分を無理やりこねくり回してもそこに絶対新規なものは生まれてこないと思うし。
反面、キャラクターのデザインは―いい意味で力抜いてる部分もあるのか―今回すごく良かった。正直前回のDESIGNS4があれだけ華やかな詩女が数々掲載されていたのにも関わらず、その描線がへろへろでせっかくの服飾のデザインが相殺されていたのでは?とすら今回の線のしっかりさを見て思う。
ある意味若い、かわいい系のキャラが多めということももちろんあったとは思うんだが、ハスハ服のスパコーン閣下や若かりし頃のスカ閣下をはじめヤーボ、ブラウマ・イク、バルンガ、レーダー8世、トライトン等の学生時代の服装のシート(『太陽星団学校案内』部分)のキャラクターの表情というのはかなり素晴らしいと思う(もちろんその服飾デザインも)。このあたりは一番新規絵が多い=ご本人も一番やってて楽しかったのではないか?
で、そういった新規の部分はこちらも素直に楽しめた。そのぶん、なんかこれまでのデザイン集で述べられてた堅い部分の設定(国家の編成がどーの組織がどーの)の解説分は、正直「またおんなじこと単語だけ変えて繰り返すの?」という感じだった。
もちろん厳密には同じことを繰り返しているわけではないんだが、かといっておおきく作中の「物語」の部分に関連するというか「それを知っていないと話がわからない、面白くない」ような内容のウェイトがどの程度であったかというと正直疑問なわけで。
なのでほんとうに今回の作品集ほど評価に困るのはこれまでなかったように思う。
その理由の一つは、これまでになかった「刃こぼれ」を読者として感じてしまったからかなあ・・・・・。
もちろんこれまでも「んー、まあこれはフツーよな」というデザインがあるにはあったが、それはいわゆる主役クラスのメカではなく、どちらかというと量産機よりの位置づけの騎体だったりなわけで、そこで大きくこちらの期待をスカされたことはなかった。だからこそここまでファンをやってこれたわけだが、正直今回はぐらっと揺らぎかけたなあ・・・。それが実際に声をついておもわず呻いてたというのは自分でも正直ちょっとショックだったわ(苦笑)。
はてさてこれが作者の一時の気の迷いで収まるのか、あるいは天才の先の先を見越したとんがった感性にこっちがおっさんになったが故にただ単に振り落とされそうになってるだけなのか・・・・・。
このあたりは本作品集で発表されたデザインが実際の物語上で動き出すころに分かるのかもしれない。
ただまあね、こんな気持ちになる時が来るとは・・・・・正直ちょっとショックだったんですよw
ある意味いわゆる「ダッカスショック」よりも数倍衝撃がでかかったわ。
願わくばこの衝撃が自分の方の感性の老いや鈍さが原因であることを望むばかりですわ・・・・・。
KADOKAWA/角川書店 (2016-02-22)
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HL1そんなにあきませんかね?無個性とは程遠いのではと思います。
HL1はほかのGTMデザインにはない、「板」のかっこよさを持ってます。うでに貼り付けられた黒いスリットの入った板、これだけでずっと愛でることができませんか?
コメントありがとうございます。
HL1お好きなんですね。それはそれでいいと思うんですよ。「自分が好きなものは好き!」で問題なしです。
自分のHL1に対する印象はいまも変わっていないんですが「無個性」と書いた点説明しておきますと、HL1はHL1ならではというデザインポイントが少ない・あってもそれが(自分にとっては)あまりポイントとして映らなかった、ということなんですね。
永野デザインの個性の表現方法の一つに「機体のディティールでの意匠の反復」があると思うのですが(バッシュやベルリン系の甲冑的ヒンジの繰り返しやF型サイレンの菱形、旧ブーレイのねじり等)HL1の場合はおそらくその巨大なバックフリンジというか後頭部から延びる広範なブレード状の放熱パーツ?がそれに相当するかと。しかしこれが逆にシャープさ・軽快さを殺してるような気がして、個人的にネガティブな印象があったのが一点。またそういったディティールでなく全体のシルエット(輪郭)としてみた場合、これまでのエルガイム~ジュノーン系のデザインの系譜とぱっとわかるラインでなかった―むしろ殺していると感じられたことも大きな理由の一つです(アリシアインジェクター的な側頭部アンテナのライン、チンガードという比較的別のデザイナーさんでも付けてきそうなパーツが加わっていたことも大きいです)。逆に言うと歴代のエルガイム系の機体のもっていたデザイン上のルールから意図的に?外してデザインされたものなのかもしれないですね。
以上、あくまでもわたしの「個人的な」印象です。
ただ繰り返しになりますが「好きなものは好き!かっこいいと思うものはかっこいい」それは人それぞれでいいと思うんですよ。上に書いたようなことも永野先生が意図的にそういう風にされていることも十二分に考えられますし、それに自分のようなオールドファンがついていけてないだけということも十分ありうる話です。
個人的にも「やっぱHL1カッコよかったんだな」と思える日が今後来るならそれはそれで大歓迎ですし。
(本文にも書いていますが、これがコーラス王家の機体でなく別勢力のものならむしろこういう書き方はしていないと思います)
なのでこのブログの文章お気に障ったかもしれませんが、TESTさんはTESTさんで好きなものを存分に楽しんでいただいていいんですよ。結局は楽しんだほうが勝ちかと思いますので。
1.頭の後ろの髪みたいなやつがかっこ悪かった→ここは個性的だが良くない
2.ぱっと見エルガイムっぽくなかった→無個性
3.ツノとアゴの部分がベタだった→無個性
だからあかんかったって事でしょうか。
1は好みだから人それぞれですが、2、頭の形、顔中央の縦穴、足パネル開いてるところ、全体的にエックス型になってるところ、エルガイムっぽいです。3あんなに大きいツノが生えてて、さらにその先から光が伸びてるデザイン、見たの始めてじゃないですか?あのアゴのデザイン始めたのも永野護先生じゃないんですかね?アゴに関してはほかの例があるなら知りたいものです。
腕に張ってる板の良さ、確認してくれました?