当初行くつもりはさらさらなかったんだけれども、全体のナレーションが「その後」のミネバ様のスタンスで―というのを聞いて、先行の抽選に当たったら行ってみるかとポチっとなしたら当たっちゃったので行ってきた@パシフィコ横浜大ホール。
結果、プログラムとしては非常に混沌とした―しかしそれぞれのクオリティは良いものが多かったのだが―タイトルにある「ジオン」というよりは、ガンダムというコンテンツの立たされている非常にマズい状態というのが良く分かったプログラムでもあった。
実は観に行った翌日あたりにがーっと書くだけは書いて、なんとなく気分がノらないままうっちゃらかしておいたんだが、いちおうさらしておく(笑)。
体裁としてはこれまでのFilm&Liveとか朗読劇の延長にあるプログラムで、シャア・フロンタルの池田秀一氏とオリジンでのセイラ役の藩めぐみ嬢による朗読パートがメイン、と言えると思うが、個人的には前述のミネバ役・藤村歩嬢による舞台全体を通してのナレーション、ここを一番大きく評価したい。(なぜならこれがともすれば散漫になりかねないこの手のプログラムにあって、ひとつ一貫した背骨を通していたように思うからだ)この彼女の朗読を通して、宇宙世紀の歴史を振り返る、そういった進行である。
そのナレーション・朗読を軸に過去のフィルムからの映像+要所で生の歌唱のライブパートが入る。当日ライブを披露したシンガーは森口博子、米倉千尋、石田匠、MIQ、ICI a.k.a.市川愛、Aimerという面子。加えて前半折り返し部分で司会によるトークショーパートあり(ここは劇場版公開を控えているサンダーボルトから音楽担当の菊地成孔氏を中心に)。
その後後半も同じような体裁で進み、舞台進行上では唯一単独アーティストとして2曲歌ったAimerのパート(ここはアコースティックであることといい、いま出演者の中ではいちばん”旬”なアーティストだけあって独特の存在感であった)を挟み、最後は再度司会による進行で出演者挨拶と、森口博子によるエターナルウィンド、最後に観客参加でジークジオンコールで〆という感じだった。
まあこういうふうに書くと別段悪い内容のようには感じないと思うのだが―事実そんなに個別のパートに酷いと感じることはなかった―が、とにかく事前に突っ込みたい(セールスしたい)コンテンツがあり、それを前提に進行台本を組み立てているのか、「ジオンの世紀」と名乗る割にはかなり散漫でよじれた感じの構成だったというのは言わざるを得ない。ただそれをなんとか一つのプログラムとしておさめ得たのはやはりミネバ役・藤村嬢のあの知性的で落ち着いた語りにあるだろう。実はここが聴きたい部分でもあったのでその点個人的には満足であった。
そしてそういった朗読パートやAimerの歌唱パートを除くと、クオリティは決して低くはないのに全体の端々でいろいろと「残念さ」を感じてしまったのも事実。歌唱パートなどでもMIQ(うちらのころはMIOか)姐さんなども歌はうまい、うまいんだ―しかし・・・・・。そしてこういう「残念さ」を感じた最大の要因はなにかというと
「センスとして古い」
この一言に尽きる。非常に残念な話なのだが。
どういうことかというと、ガンダムUC以前に作られたコンテンツと、UC以降のその根底にあるクオリティの差―これは作画がどうのという話ではなく、作品の根底に流れている知的レベルの差とでもいえばよいか―そこに差がありすぎるのだ。なのでそういった当時の浅薄さが当時のフィルムを通してどうしても透けてしまう、というかUC以降という比較対象が出来たばかりにバレるんだな。(08小隊の視点のチョイスなんぞ酷かった)
しかし、そういった断絶を抱えているということは実はさほど大きな問題ではなく、当日個人的に一番痛感したガンダムというコンテンツの置かれている状況のマズさというのはなにかというと
「若い世代のファンはどんどん減っているのではないか?」
ということだった。それぐらい当日自分の観に行った夜の部というのは高齢層のファンが大半(おそらく8割以上)を占め、30代以下の観客は数えるほどしかいなかったのではないか?まずい、これは非常にまずいよな・・・・・そりゃもともとビデオ作品であるガンダムUCを無理くりブった切ってまでも、日曜朝というお子様タイムの時間帯へ投入したのもわかる気がする(要するにダメ元承知での「次への種まき」だ)。そういったまさに「少子高齢化」としか呼びようのないものを、あの会場の客層はカリカチュアライズしたような形で体現していたように思う。それに気づいて正直なんとなくへこみましたよ・・・・・(苦笑)。
いやー、これはマズい状況よなー。というかこれだけコンテンツとしては巨大なものであってもその人気の土台は意外と薄氷の上に成り立っているのかもしれない、そういうことなのか・・・と、ひしひしと感じた。もちろん本プログラムは昼夜2部制だったので、昼の部に若い客層は集中していたのかもとも考えられるが、おそらくそこまで顕著な差異は出なかったのではないだろうか。
そう考えるとコンテンツホルダーであるバンダイもそのあたり自覚しているのでUCを日朝に持ってきたり、次々と「次の芽」を積極的にまきにいっているというのも至極当然なことだというのを今回はじめて体感として分かった。
ただまあそれよりも、自分的に一番ショックだったのは(自分を含め)いい歳をした大人がこういうものを観に行っても後ろ指を指されない時代なんだな、と改めて感じたこと。というか自分含めていうのだが―ダメよね、いい歳した大人がこんなものをいつまでも見てちゃ(苦笑)。
あれだけの数の大人―それもどう考えても三十代以上がほとんど―をああいう場所で一塊りにして見せられると、やはりそういわざるを得ん。
これは非常に矛盾した言い草だし、こういったアニメ・マンガ界隈のコンテンツが日本国内において生産されているコンテンツにおいては、まず間違いなく品質的には最高峰にあるカテゴリーである、ということを分かったうえで敢えて言うのだが、やはりおっさんはおっさんなりに、おばはんはおばはんなりに―そこはもう少し世の中に対して「大人」という責任を我が身で引き受けないといかんよなあ、と。
(ただこれは逆にいうと、いい大人が見れる他の「物語」的なコンテンツがあまりにも貧相ということなのかもしれんのだが―国産のドラマにしても映画にしても)
もちろんこれはあくまでも個人としての嘆息であって、それが正しいとかいうものでもない。
ひょっとするとこれは年齢や立場でその欲するところをなに一つ制約されることのないという、空前絶後の良い時代であることの証明かもしれないのだ。
しかしそれにどこかで強く「違う」と感じる自分もいるわけでしてな。
そんなこんなを嫌でも突き付けられたような感じの、なんとも複雑な気分にさせてくれるプログラムでありましたよ・・・・・。
※ちなみに本舞台上から読み取れる情報としては、U.C.0097現在、ミネバ様はまだメガラニカの中に居るそうな。