ずいぶんまえに両方とも買ってたんだが、なかなか紹介するのに良いタイミングなかった。
ごぞんじ石井ゆかり嬢の著作二題。
これから年末に向けて「年を改める」タイミングなので占い関係はwebや雑誌等でも大にぎわいなんだが、やっぱりこの人の著作は一風変わっている。
『星ダイアリー』のほうは、いわゆる年間手帳にその月その月の星の動きを概況のような形で記載してあり、月齢や星の動きも日付のところに書き込んである。
自分は残念ながら出生図の一重円ホロスコープを読む勉強しかしたことがないんだが、たぶん巻頭の解説をよむとソーラーハウス法で書いてあるようなので、自身の誕生星座を第1室にとりそれに当てはめていく形で読めばいいということだろうと思う。おそらく一番占星術に興味あったころに読めばウハウハな内容なんだが、さすがにおっさんなこの歳になると概況読んでにやにやするだけが精一杯、つきあわせて天体の動き読むだけの気力ない、スマン(苦笑)。
(きっと進行図読める人ならもっと面白いだろうと思う)
それにしても普段の石井嬢の占い(本家筋トレやtwitterの毎朝の占い)もソーラーハウスでやってるとしたらすげえなあ、ちょっとびっくり。
個人的には出生時間わかって描くプラシーダスやレジオモンタナスのチャートのほうが精度高いと思ってたんだけどあんだけバシバシあたってるのでぐうの音もでない、グゥ。(©藤子不二雄)
もちろんこれは手法の問題もあって、石井さんの占いのポイントのひとつは「本人の中に言葉が届いた時点で占いが完結する」という形になってるからだろう。”決めつけてない”のだ。
「占い」という点での石井ゆかりの最大の魅力は「ノー・ネガティブ・ワーズ」だと思うんだが、なにげにこの「決めつけない姿勢」というのが精度につながると同時に、よくご本人が連呼される「占いなんて信じちゃいけない」という”正しい”姿勢、ひいては「理性的であろうとすることと非理性的なものを楽しむことは矛盾しない」という”大人”な態度につながっていると思う。
そしてそれが結果、今の時代の多くの人が感じている”漠然とした不安”に対する答えとなっているのではないか。だからこの人の本はこれだけ多くの人に求められている、というか。
そういう前提で読むとなかなか後者の『星読み+』のほうも面白い。
(「+」とつくのはこれまで毎年出ていた『星栞』という年報での特集コンテンツもあわせて収録してあるので)
これは石井嬢の占いの総論的な本だと思うのだが、そういった「占いを信じちゃいけない」という部分と「けど気になる」という部分の折り合いがそれぞれの文章の中に非常に”大人な態度”で織り込まれているように思う。だからこれを通常のテクニカルな占いの本としてごりごりっと読みたいと期待していた人には最初は物足りなく感じるだろう。
ただし、そういった人たちでも読後はそれなりに満足してしまってるのではないか。
なぜならこの手の本をわざわざ手に取ろうかという人はやはりそこに何かしら「不安や悩みの解消」を求めているだろうからだ。
そしてそれに対する答えが本書にはたっぷりつまっている—その行間の中に。
(それも、どれだけ”テクニック”的な占いの技術を極めても得られない類いのものが―だ)
そういう意味でいま世間に求められている書き手さんだと思うのだが、実はここまで取り上げるのひっぱってたのはすこーしその点が複雑な心境だからだ。
自分が石井嬢の著書を初めて手に取ったのは確か昨年梅雨時だったかと思うんだが、その前後からもwebアウォード受賞されるなど注目の集まっている方ではあった。
そういうこともあって別の媒体、ラジオやインタビューに出られることも最近は多いようなのだが、そこでの名乗りが頑として「ライター」なわけだ、「占い師」ではない。(*1)
そして実はそれはものすごおおおおおおおく正しい。
なぜならこの人の本来のあるべき姿というのはおそらく文筆家としての文才にあるだろうから。(*2)
ただ、それに加えて高い精度の「占い」の才能というものがついてきてしまった。
—これが石井嬢の幸運でもあり、不幸でもある。
これが経済誌での株価予想や技術系雑誌のテクニカルライターであるのなら、なんてことはないんだが、こと「占い」だ。
そこが非常にむずかしい。
なぜならいま世間的に求められている石井ゆかり像というのはやはり「やさしくて強く励ましてくれる”占い”の」石井ゆかり—だろうから。
なので—
ここ最近の著書の売れ行きの良さを一ファンとして心から喜ぶと同時に、その著書のほとんどが当然ながら”占い関連”ばかりである、というのが複雑である—そういうわけだ。
ある意味ここ一年ぐらいが勝負所かもしれない。
「占い」という要素で目を向けてくれた人たちを、どれだけ「占い」抜きの文章で魅了することができるか。
個人的に石井ゆかりの現時点での最高傑作は『いつか、晴れる日』だと思っとるので、この一文に「ぬ?」と引っかかった方はいちど手に取って眺めてみていただきたい。
世間に求められている石井ゆかりの文章の本質が”占い”抜きでコンパクトに詰まっていると思う。
そして個人的に言いたいことは下記の一言につきる。
とっとと小説というか”物語”を書きやがれw
以上(笑)。
※『12星座シリーズ』も自分の星座含めてプレゼント用にぽちぽちかってるんだが、これの感想はいずれまた機会があれば。
(*1)『星占いサイト「筋トレ」は、なぜラッキーカラーを紹介しないのか』(ASCII.jp)
(*2)なので鏡リュウジ氏をして「占星術文学というべきものの誕生」といわしめたんだろうと思う。