【レビュー】『ファイブスター物語 13巻』永野護

標準

物議をかもした「大変更」以降の内容での初の単行本であり、実に9年ぶりの最新刊。
連載は一応目を通していたので新味はないが、一応レポートしておく。

『ファイブスター物語 (13) 』



バッハトマによる詩女と剣聖殺害により崩壊したハスハ連合=ミノグシア各国と星団中の国家の思惑が絡んだ魔導大戦の戦況は膠着状態。その間隙にデコースは黒騎士のフルメンテに合わせてエストもモラード博士のもとへ。そこにはファティマとしての根幹の機能を失ったアウクソーの処遇について星団を代表するマイトたちが集まっていた。一方初陣を終えたちゃあは後輩ジークボウとともにメヨーヨ大帝と遭遇する。またそこにはいろいろこじらせてるジークの母も。しかしそのジークの母が履いていた靴はナカカラでの野戦元老院に遅れて登場した最重要人物の足元をも飾っていた。暗躍する元老院の思惑からひと時だけ解き放たれ、ラーンへの花の道を歩くダイグとクリスティン。そこでダイグはこの花の道の由来をクリスへと語る。しかしそのラーンも腐敗を極め、妖艶な詩女・フンフトが手練手管を見せつけフィルモアとの接近へと大きく舵をとる。しかし彼女の真意はやはりまごうことなき”詩女”のものであった。腐敗したラーンではマグダルを守れないと判断したヘアードはランドとともに逃避行を続けるが、難民を意図的に巻き込むブーレイ傭兵騎士団の戦闘に巻き込まれ、ヘアードは負傷、マグダルと離ればなれとなってしまう。傷つきつつも独力で自らの使命を果たそうとするヘアードにランドはミラージュ騎士であることを越えたある決意する。そして辺境の戦場であるベラ国国境に、凄く場違いな格好をした史上最凶最悪のバカップルがついに姿を現した・・・。


一部では「ダッカスショック」と言われているようだが、例の大変更が加えられて以降の内容が収録されている巻である。
冒頭にも書いたが、自分は一応リアルタイムで連載には目を通していたのでここでまとまったことによる大きな発見とか衝撃というのはない。ほんとただただ淡々と「ファイブスターの最新刊やなー」という感じである。
これは今巻が恒例の単行本での修正・改変部分が比較的少なかったからという事もあるかと思う。基本ほとんど大きな変更はなく、例の「詩女暗殺事件」のパートが新味に書き加えられているのが最大の違いだろうか。あとは大きな部分での違いはないような気がする。
(しかし作中8ページ前後の内容をあれだけの年数かけて映画にしたわけか・・・良くも悪くもフツーはできんわW)

作画としてもあまり書きなおし、修正などもないような感じ。正直冒頭のバッハトマの奇襲シーンのハスハ側の画が酷過ぎるので書きなおすかと思っていたら、全く書きなおしされてなかった、これはちょっとびっくり。あと上記の「詩女暗殺事件」のシーンは実は映画本編よりデザインがブラッシュアップされていて、ある意味今巻でのビジュアル的なクライマックスはここだろう(笑)。フィルモア皇帝のコスチュームはもとより、映画版ではあれだけダサかったボルドックスがカッコよくなっている。

あとは巻末のスリーブノーツに例によって次の作品集あたりからの先行情報らしき解説とセル画が出ているが、これも特筆すべきようなものはあまりないような印象。

で、そういった細かいところを抜きにして、単なるマンガとしてみた場合、もうほんと「続きのはなし」そのものなのよねえ。
花の道のシーンは連載では「詩女暗殺事件」のパートが当然ないのでその部分はこの単行本バージョンのほうがより分かりやすかった。ほかやはり各エピソードも非常にオーソドックスに各キャラクターの流転を描いていて、各エピソードごとに盛り上がりがあるのは流石。何気にやっぱりこういう話を作る・魅せるという部分はうまいなあ。

し・か・し ですな―

うーんやっぱりGTMとなってからのメカは(まだその大きな活躍が描かれていないこともあってか)あまり吸引力を感じない。
もちろん個別個別でみるといいデザインだしカッコイイとは思うんだが(ホルダ31とかカッチョイイ)、いかんせん騎種が多数出てきてる割にはシルエットに大きな違いがないのが逆に単行本としてまとめられるとよりはっきりわかっちゃった感じ。

もちろんコレ、GTMの基本構造ということ(設定的なところ)を踏まえた上では理にかなっているんだが、正直どうなんだろうねえ。結局これだけデザインを変えても描いてる人は同じなわけで、一部のモブに近いようなカットだと「別に前と変わり映えせんよな・・・」と感じることもあったり。ちょっとこのあたりは逆の意味でも注目しておきたいところ。
なんせ「デザインに飽きた」からこれだけ大規模な全デザインのリニューアルやったわけだから、それが「前とあまりたいして違わない」ように見えるなら、それもけっこう問題だわな・・・。

とまあ、かなり乱雑に気がついたところをあげてみたが、ほんと良くも悪くも「ファイブスターの最新刊」、それ以上でも以下でもないと思う。

しかし繰り返しになるが、各エピソードごとにちゃんとストーリーとしての魅力と盛り上がりがあり、このあたりは流石。あとは以降の本編で、肝心要のGTM戦がどれぐらいの迫力で描かれるのか?という、その一点にかかっていると言ってよいだろう。

そういう意味ではその「本格的なGTM戦の描写」次第で、この今回の大激震の本当の意味での評価が下されることになるだろう。




<蛇足>
・個人的にがっかりなのはクロスミラージュ。グリットブリンガーのデザインはクロスのレベルをとても越えれていないと思う。

・同じ意味ではラムアドなどもインパクトあるようでないような。

・逆にバッハトマの量産機(アウェケン=カーバーゲン?)は以前のイカちゃんのようなデザインよりデモーニッシュな感じがしてすき。

・メルシュのボルドックスは新機軸デザインで良い感じ

・個人的に好きなキャラであるスパコーン閣下とヘアードさん活躍+よりによってフラグ立ちはうれしいのだが、なんか閣下は顔がぼやっとした感じになっててかなしひ・・・。

『ファイブスター物語 (13) (100%コミックス)』










※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正

コメントを残す