親の家のたたみ方 (講談社+アルファ新書)

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今年の夏前後から関西にある実家の片付けに何度か帰っていた。そういうこともあって、実家の片付けや相続関係の本は気になったものは読んで勉強する用にしていたんだが、家の「片付け」に特化した本は珍しかったのでご紹介しておく。

親の家のたたみ方 (講談社+α新書)
三星 雅人
講談社
売り上げランキング: 119,342

数年前、父がなくなり母が姉夫婦宅の方へ住居を移したこともあって、現在実家は定住者はいない状態。幸いにして父がやっていた商売を引き継いでくださった方が居て住居自体は常に人がいる状態なのだが、今後どうしていくのか?という問題が出てきた。

一つには母に持病が発見されて姉の家にお世話になるということが当初は想定外だったこと。それがなければおそらくしばらくは母が住むものだろうと関係者全員が思っていたわけで。

このようにこちらが勝手に想定していたことというのは、現実の前にはあっさり覆されるものなんだなというのを改めて実感。そしてそんな想定外に戸惑っていても、目の前の現実が親切にこちらの事情に合わせて待ってくれることはない。

そういう意味では家族で持ち屋を持っておられて、近い将来、相続や親御さんの面倒等をみるといった可能性のある方は本書を読んでおかれることをお勧めする。
税制の変更のこともあって、相続に関するムック本や新書というのはここ数年山のように出たと思うが、本書のタイトルとなっているように実家の片付けに関して1冊それだけでまとめた本は珍しいように思う。それだけでも本書は価値がある。

ただし上記のように1冊でまとめた本が少ないことからもわかるように、ある特定のシチュエーションを深く掘り下げるのではなく、いろんなシチュエーションを想定して、それに関しての問題点と対応例を浅く広く網羅した体裁になっている。このあたりは不可抗力だろうと思うし、事実今回の自分のように「こちらが想定していなかった」状況が起こり得るのが実家や高齢の親のまわりに関しては「あたりまえ」なので、むしろこれからそういった状況に直面するであろう立場の人であるなら、本書のようないろいろな状況を網羅した一冊を読んでおく方がためになるだろう。

で、自分の直面した感想を交えていうならば「無住の家を維持・管理する」というのはとてつもない労力とコストがかかるということ。

我が家の場合は幸い使ってくださる方が居たのでなんとかなっているが、これが住居専用の建物で無住ということになれば、それだけでランニングコスト、メンテナンス費用がかかるわけで、さらに売ってしまうにしても内部片付け、もっと状況が悪いなら取り壊しの費用が飛んでいくわけである。さらに掃除を終えた家や取り壊した後の更地が処分できれば(売れれば)よいが、できなければそれでもコストはかかり続けるわけである。
本書はそういった例についても実際の例を取材して書いてあり、人によっては同様のシチュエーションに直面している方もおられるだろうからかなり参考になるだろう。

我が家のことに関していえば、今年の秋口から自分は数回実家へ戻り数回家の中を掃除したが、普通はまずここからつまづくと思う。普通のお勤めの方であれば、そういった時間を作るには土日祝日などの普段は身体を休める時間を使ってことの対処に当たらなければならないわけだ。自分の母も配偶者である父の親(祖母)が亡くなったあと、父の実家を片付けを担当してくれたが「ほんと次から次へとものが出てきてへとへとになった」といってたのを思い出す。いまどきご家庭によってはこれが離婚原因になりかねないご家族もあるだろう。そして片付けを終えるには不用品の処分も当然必要なわけで、それにはあたりまえの話だがお金がいる。自治体によっては粗大ごみの処分を引きうけてくれると思うが、それも上記のように土日週末だけということであれば都合が悪い―となれば専門の業者に頼むことになるだろう。そうすれば当然ながらそれ相当の費用が発生する。たとえば今回自分は2回ほどに分けて実家の粗大ゴミを処分したが、その時の業者への支払いは合計で40万弱かかっている(8畳間いっぱいの荷物を計3セット分ぐらい搬出してもらった)。これも母が処分のための費用を用意しておいてくれたのでなんとかなったが、単純に関西への交通費なども含めて考えると50万弱のお金が必要となっているわけだ。現住所とご実家の距離が遠く、交通の便が良くないところにご実家があるようなケースの方ならさらにコストがかかることもあるだろう。

当然こういったコストや時間をタイミングよく捻出できないという方も多々おられるかと思うが、そうすると当然問題は先送りにされ、時間がたてばたつほどさらに処分のコストは上がっていくように思う。まさに悪循環ですな。

ということで一つはっきり言えるのは、もうほんと早め早めに対処していくしかない、ということ。
そのためにはなるべく確実に発生するであろう問題を的確に予測し、それに備えての準備をしておくしかないと思う。

いまは直面する問題ではなくとも、近い将来そういった問題が発生するであろうと思われる立場の方は一度本書に目を通しておくとなにかとクリアーになることも多いかと思う。
自分もよく考えると該当する・そうなるかもしれないといった立場の方は、いちど目を通しておかれるといざそういった時が来たとき、すくなくとも「なにから手をつければいいのかわからない」ということはなくなるだろう。

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