拝郷メイコワンマンライブ2015@下北沢ガーデン(10/4)

標準

ちょっとレビューにはタイミングを失した感はあるが、非常にいいライブだったのでやはり書いておく。

20151004_haigo_meiko_garden



ごぞんじシンガーソングライター拝郷メイコさんのライブ。
VOCALOIDのMEIKO姐さんのいわゆる”中の人”であるが、MEIKOさんには日ごろ1ユーザーとしてお世話になっているが、2013の横アリではじめて見た拝郷さんのライブも素晴らしくて、一度生でがっつり見たかったのはあった。

なによりもその時に買った最新のソロアルバムのできがあまりにも良すぎて、これはMEIKOさん云々抜きに1アーティストとして見ておきたいというのが強かった。

BROOCh
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拝郷メイコ
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(いっとくがこのアルバムめちゃくちゃ傑作なので聴いてない人は損してると思う)

で、今回偶然e-plusの告知メールでキャッチしてチケットも取れたので観に行ってきたんだが、けっこういいタイミングだったようで。

それはなぜかというと、実は拝郷さんここ1年弱ほどお休みしていてその復活第一回目がこの時のライブだったらしい。
そういう事もあってか、おそらく300ほどは入るんだろうかなあ―下北のGARDENは満席(入場整理もあった)。客層は自分のようなボカロから知ったという人は意外と少なそうで、ここからも自分の感じた「かなり実力のあるアーティスト」というのは裏付けられているような気がした。
(面白かったのは意外なほど客の年齢層が高そうだったこと―おそらく自分より年齢上の方のほうが多かったのではないか)

個人的に今回チケット取れてよかったんだが、一点だけ懸念・・・というか自分の意図から外れてたのは、バンド編成でないワンマン弾き語りライブである、という事だった。なぜこの点がネックだったかというと、前述のアルバム『BROOCh』はバンドサウンドで、それがすこぶる素晴らしかったわけで。加えてYoutube等で上がっている弾き語りの映像はやはりそのカラフルさからするとやはり一段落ちるのは否めないように感じていたから。

いや、しかしこれがすんごい杞憂で終わりましたよ!?

アコギ一本でもぜんぜん音がさびしくない、というか声とアコギのバランスが音響的に最高で、ここ数年のうちでは一二を争う「耳が幸せw」ライブ(嬉)。
これは前述のように休業からの復帰第一弾ということで十分休養がとれていたからかもしれないが、とにかく素晴らしい”音”だった。

(以降含めこれらは昨年のライブからの映像なのでバンド編成の模様)

また当日ツイートもしたが、けっこうな曲数やったにもかかわらずアコギ一本で―それもスタンディングスタイルで―始終ひき通し、それがまったく不安定さを感じさせない力強くも繊細なストローク。正直いまどきアコギでこれだけ弾ける人ってあまりいないのではないか!?と感じたくらい。

そしてMCもアットホームな感じというか終始笑かしが入り、会場も非常に和やかなムード。けっこうちゃきちゃき系のMCに見えるんだが、この方ほんとうはかなり繊細で涙もろそうな方とお見受けした(笑)、そこがなんとなくまたいい感じで、非常に好感が持てる。

そしてなー、やっぱりいい歌多いのよ。

ひとつ当日聴いていて気づいたのは「ああ、なんというか敢えて言うなら”大人向けのaiko”的な感じなのかな」ということ、そのサウンドを例えていうなら。

残念ながら最近のaikoさんの楽曲はあまり耳にしていないんだが、どういうことかというと、サウンドが似てるとかそういうことではなくて世界観の例えというか。
aikoの楽曲が恋しい切なさを歌いつつもあまりその先には”影”が見えてこない根本的にカラッとした明るさがあるのに対し、この拝郷さんの楽曲は「いつかどこかで終わりが来ることを知っているし、分かっているから、いまこの時をより大切に・愛おしく感じる」というかな。ちょっと視点が大人のそれの感じ―ということを今回生でがっつりと聴かせてもらってあらためて感じた。例えていうと、ちょっと梶尾真治氏のタイムリープモノの作品から受ける感じと近いようなところがあるかも。

で、耳幸せタイム堪能してきたわけですが、やはり知ってる楽曲の良さがあらためて沁み入ったなあ・・・。

個人的に上記『BROOCh』で一二を争う好きな曲「Rio」も「ホンワカブー」双方すごく良かった。とくに「ホンワカブー」はアルバムバージョンでは後半の盛り上がりがバックコーラスと相まってすごくパワーのある曲なんだが、ここをアコギ一本にもかかわらず観客のコールアンドレスポンスをうまく使って十分に盛り上げていたのは素晴らしかった。

ということで初めてがっつりと聴かせてもらったわけだが、今後ともぜひ機会を見つけて聴きにいきたい、そう思わせてくれる内容だった。
それにしても当日も強く感じたのだが、なんでこういうレベルの実力をもったアーティストがほぼインディーズ的な状態におかれていて、歌手と名乗るもおこがましいようなピーチクパーチクな若い女の子のほうに業界は金を掛けているんかのう・・・。

もちろん”音楽”を抜きとした商売の面でのそれは分からなくもない。

けどそれって”音楽”を使わんでもええやん?とも強く思うのよな―というか結局昨今のアイドルブームって音楽業界の断末魔だったのかもしれんけど、明らかに”音楽”そのものを生業としようとする人たちにとっては自分たちで自分たちの首を絞める自殺行為だったよな。結果こういう実力のある人たちはそういうところからある意味おっぽりだされ・・・けど結果的にそれのほうがよかったのかな?

ただ一点残念に思うのは、こういう拝郷さんのようなアーティストを多くの人が知る機会はやはり圧倒的に少ないだろうということ―それを耳にすればそれを欲するだろう人たちはたくさんいるだろうに、そこまでリーチさせる手段が圧倒的に細いのよな。そういう意味でやっぱり個人的にはさきにかいたようなアイドル業界的なものに関して自分は素直には首肯できん。

もっとたくさんの人に聴かれる機会があってもいいはず―最近はそういうアーティストが多いような気がする。そして自分もいろいろと聴き漏らしてるんだろうな。

ということで、せめて少しでもそういった人たちの”音”が、それを潜在的に求めているであろう人たちに届きますように―ただただ、それだけだ。




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