誰か、海を。/Aimer

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ここのところどんどんアグレッシブに活動の幅を広げているAimerの現状が良くわかる1枚、凄くいい。

誰か、海を。EP
誰か、海を。EP

posted with amazlet at 14.09.06
Aimer
DefSTAR RECORDS (2014-09-03)
売り上げランキング: 441

『残響のテロル』タイアップの表題曲をはじめ、アルバムMidnightSun収録『ColdSun』からの系譜を感じさせる『白昼夢』、阿部真央とのデュエット『forロンリー』、尾崎雄貴(Galileo Galilei)リミックスによる『眠りの森』、『ColdSun』の永野亮によるリミックス、表題曲と白昼夢のTVサイズ、そして〆に表題曲インスト、計8トラック収録。

以前この人はもっといろんな人とコラボをした方がいい的なことを書いたが、見事それをタイムリーに証明してくれたような一枚だった。

今回はまず表題曲『誰か、海を。』が菅野よう子プロデュースと聞いた時点で、ティーザーとかトレーラとか待つまでもなく予約可能になった時点で即予約しておいた。
ある意味いま一番旬の時期を迎えようとしているAimerという素材を、ある種この界隈で”百戦錬磨の魔女”ともいえる(笑)菅野よう子がどう料理するのか、という大注目の一枚だったわけで。

そしてその結果は、こちらの期待を大きく上回るものがどかーん!と来たw

いや、このタイトル曲、よくシングル切ったな。昔のCD市場が大規模だったころならわからなくはないが、この寒いご時世にこういうアバンギャルドなトラックをぽーんとぶつけてくる菅野御大はさすが!なんちゅーか振り切れてるというか、怖いモンなしというか。

もちろんAimerという素材があっての部分もあると思うが、すごくアグレッシブなスタンスだと思う。
(なんかディティールは全く違うのにAimerのボーカルが一部浅川マキのそれのように感じた)
それにこのトラックでもう一つ特筆しておくべきところは作詞に青葉市子を迎えていることだろう。ある意味菅野よう子という大先輩が、これはと思う若き後輩たちを繋いでいって、それが理想の形で結実しているのがこの『誰か、海を。』だろう。ある意味菅野御大自身を含めての3人でのコラボ作品と言えるかもしれない。
(なんせ「野獣になれ」と指示出したり、完成形未提示でミックス用の複数コーラスパート収録したり、がっちり御大ならではのディレクションしてるわけだからしてw)

また2曲目の『白昼夢』も先日のフルアルバム『MidnightSun』があったからこそのトラック。1stアルバムでのはかない感じを振りすてて、とても強力なトラックに仕上がっている。先行のトレーラーで視聴したときにもキャッチーで強力な曲だと思っていたので、こちらがシングルでもおかしくないなと思っていたら、TVドラマとのタイアップついたそうである。納得のいく話だ。個人的に凄く好きな1曲。

阿部真央とのコラボ『forロンリー』は前作の『Words』と異なり曲提供だけでなくなんとデュエットしてるよ!?これも嬉しいサプライズだ。
なにがびっくりって声質全然違うのに、すごく自然なデュエットであるということ。加えてこれまでのAimerのカラーと違ってすごくいい意味でカジュアルな明るい感じのするトラックなのだ。
これはAimerのかなり個性の強い(と思われる)ボーカルスタイルを考えるときにすごく重要なトラックだろう、こういうカラーも出せるんだ、という。
そしてこの曲、女性デュエット曲にも関わらずなんとなくスピッツの曲のように聴こえるのも面白い。ぜひチャンスがあれば草野ボーカルでも聴いてみたいものだが(笑)。

つづく『眠りの森』リミックスも、結果的にAimerというボーカルの可能性を感じさせるトラックとなっている。
このリミックスは上述のように尾崎雄貴(Galileo Galilei)によるリミックスだが、本人?と思しき男性ボーカルも入っており、これもデュエットともとれる。
そしてこの曲冒頭の男性ボーカルを背後にして聴こえてくるAimerのボーカルがすごおおおおく色っぽく聴こえるのだ。これはすごいわ。
自分が低い声スキーというのもあるが、ここはほんとにゾクゾクっときた。
これまでのAimerはいい意味で清潔感があり、生臭くないんだが、この曲はそういったカラーを崩さないまま上述のような色気を感じさせるところが素晴らしい。これはやはりあの声のトーンによるところが大きいと思うが、ここでも上述の阿部真央とのデュエットと同じく全く新しい扉をもう一つ開いたと言えるだろう。

で、個人的に本EPで残念ながらあまりピンとこなかったのが次の『ColdSun』のリミックス。トラックとしてはおしゃれな感じがする上品なリミックスなんだが、あまり原曲やAimerというボーカルの特色を際立たせるような部分のない普通のリミックスのように思う。まあここまでの各曲が全曲パワーがある曲ばかりだったので箸休め的にはなったか(失礼)。

そして実は最後のとどめが菅野御大による『誰か、海を。』のインスト。

すごいのはこのままで曲として十分魅力を持ったトラックだというのがわかるところか。コミケでの小林幸子ではないが

「ラスボス登場」

みたいな(笑)。そういう意味ではAimer作品でありながら、菅野御大の手のひらの上でいい意味で踊らされていました~!?的な印象はあるかも。(実態はともかく)

ここ数年、こういうポップミュージック市場にひとり勝手に停滞感を感じていたんだが、このEPは久々にそういった薄雲を払拭してくれるようなきらきらと光った、値打ちを感じる一枚だった。
そしてAimer嬢が多くの才能とコラボしてくれることによって、こちらもその知らなかった才能を発見できるという、一粒で二度おいしいグリコ状態w

ぜひ御本人もまわりのスタッフも、業界関係者の皆様も、Aimerというアーティストの車輪の片輪として、いましばらくこのコラボ路線をつづけていってほしい。
こういったことができるだけの力量を持ち、かつそれが華になるという才能というのは実はなかなか稀だ。

そしてそういった中でのコミュニケーションが、まちがいなく御本人自身のアーティストとしての養分となると思うのだ。

『MidnightSun』のレビューを上げた時にも、この方はこの先もっと大きな花を咲かせるんじゃないか、と書いたが、今回のEPでそれは確信に変わった。

あとはその”時期”を間違えないことだけかと思う。いまから凄く楽しみだ。





誰か、海を。EP
誰か、海を。EP

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Aimer
DefSTAR RECORDS (2014-09-03)
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