7月末までの株主優待券の消化試合にて@ヒューマンとラストシネマ渋谷。
桜坂洋の原作を元にトム・クルーズ主演で制作されたハリウッド映画。突如襲来した”ギタイ”と呼ばれる生命体に人類は絶滅の危機に瀕していた。統合軍広報士官だったケイジ少佐(トム・クルーズ)は元は広告屋であった根っからの文官。戦闘経験のない彼は前線の映像を撮らせようとする将軍に逆らい無理やり最前線へ送られてしまう。そこで死亡したはずの彼だが、なぜか気がつくと出撃前の営倉へと時間が巻き戻されていた。死ぬたびに繰り返される時間の中で彼は”戦場の雌犬(ビッチ)”と仇名されるリタ(エミリー・ブラント)と出会う。死の間際に彼女は彼に叫ぶ―「目覚めたら 私を探して!」
異例の日本のラノベ原作ということで話題になっていた一本。
作品としてはループSFモノで、歩兵の戦闘装備であるパワードスーツ的なものの描写などはどことなくハインラインの原作版『宇宙の戦士』を彷彿とさせる。(ガンシップからのドロップシーンなどモロそんな感じ)
ループものはループものでも1回1回を丁寧に描写する感じではなく(これは作中の設定から必然でもあるのだが)、むしろガシガシループして、そのことが映画としての勢いを作っている。このあたりは珍しい。
なので、じつは上のトレーラーでみるよりも本編ははるかに忙しい、というかループ部分でも端折れるところはバンバン端折っていて、ある種の勢いに流されていくようなイメージもあった。
ただここですごいな、と思うのは、そういうループに次ぐループでもあまりストーリが混乱することなく、むしろ加速感を視聴者に与えたまま最後まで押し切っていること。このあたりはハリウッドのシナリオシステムの優秀さということであろうか。
本作の見どころは、原作でもあったように戦闘経験ゼロの主人公が、繰り返すたびにどんどん頼りがいのあるタフな主人公になっていくところ。
ただこのあたり、トム・クルーズの冒頭の素人時の演技が素晴らしいにもかかわらず、「やっぱトムだもんなぁ」ということで強くなるのに驚きとかカタルシスを感じにくいのは、スターならではの有名税か(泣)。
相方のエミリー・ブラントは、意識して出演作を見たのは本作が初めてだが、必要な時には躊躇なくトムの頭を吹っ飛ばすなど、クールビューティーな感じが素晴らしかった。タンクトップ姿の時の鍛えられた上腕が美しいw
で、そういう風に俳優陣は素晴らしいと思ったんだが、ループものとしては、ループモノならではの切なさとか悲しさといったカタルシスの部分は薄く、ジャンルならではの特性を十二分に活かし切っているとはやや言い難いシナリオ。
ラストも原作とは異なり、ハリウッドのエンターテイメント映画らしい明るいエンディング。
このあたりは、まさに本作の原題(『Edge of Tommorow』)と原作のタイトル(『All You Need is Kill』)の違いが、まさにその両者の違いそのものを表しているように思う。
ちなみに原作は未読だが、これを機会にコミック版も読んでみた。
(2巻ですぱっと完結ということもあったので)
個人的にはこちらの方の、暗い湿度をもったエンディングのほうが好みであった。
このあたり、やっぱり自分も日本人ということなんだろうかなあ(苦笑)。
エンタメ作品としてはいい映画だったと思うが、余韻の有無で行けば圧倒的にコミック版のほうに軍配が上がる。
このあたり両方ご覧になって見くらべてみるのも面白いだろう。