Midnight Sun /Aimer

標準

同時発売の澤野弘之氏との『UnChild』と同時に購入。
これが2作目のフルアルバムだが、それ故の”変化”がよりはっきり見えてきている。

Aimer名義としては前作『Sleepless Nights』につづく2枚目のフルアルバム。
先行するミニアルバム『After Dark』収録の『Words』、どちらもオリコンチャートインのシングル『RE:I AM』『StarRingChild』などを含む全13曲。(スタンダードナンバーである『When You Wish Upon A Star』をアルバムの両端に持ってきている=実質全11曲)前作のどちらかというと内向きなアルバムカラーから、その顔をやや上に向け始めた楽曲が並び、Aimerというアーティストの”開花直前”を感じさせる一枚。

同時発売の『UnChild』ほど”いい意味で”わかりやすくないアルバムだったので、少し聴きこんだうえでレビューする。

最初に聴くと、一枚のアルバムとしてはややとっちらかった感じがしないでもないアルバムである。

しかし凄いのがやはりそれを”1枚のアルバム”としておさめてしまうのが、このAimerという人の”声”だ。
この声があるからこそ、いろんなベクトルをもった多彩な楽曲を一つのアルバム世界にまとめあげることに成功している。

本アルバムでは彼女のデビュー当時からのプロデュースチームであるagehasprings、外部作家として阿部真央、澤野弘之といった面々の曲が収録されているが、特に外部作家のそれは非常にカラーが強い。
しかしその”色の強さ”をぶつけたことは結果的に大成功だった―そのことがよくわかるアルバムである。

これまでのAimer作品ははっきりとした一つのカラーというか方向性のようなモノがあって、それはそれで心地の良いものだった―ある意味Aimerというアーティストが本来志向する部分が純粋に出ていたといってよい。ただ、それは彼女自身の裡に眠る別の”可能性”を引っ張り出す方向性にはなっていなかった―そういうことだろう。

その扉を開いたのは、間違いなく澤野弘之氏の手による『RE:I AM』だったと思う。

もちろん、元々そういった指向性を持っていなければ澤野氏のプロデュースに乗っかることもなかったかと思うのだが、インタビューなどをみるにそういったものも持ちはしていたが、これまでは技量的に追いついていなかったり、それによって発生したトラブル(声をつぶした)がブレーキをかけていたらしいことが読み取れる。

結果、いまこのタイミングでいろんな要素が整ったのか、みごとにその裡に秘められたもう一つの華が咲き始めようとしている―そのいままさに変わりつつある姿が―本アルバムの最大の聴きどころかと思う。

上で一枚のアルバムとしてはとっちらかってる的なことを書いたが、アルバムとしての統一感を優先するなら、そのとっちらかりの理由の最たるものである澤野作品をはずすという選択肢もあるにはあっただろう。
しかしこれはビジネス的なこと云々抜きにして、やはり澤野氏提供の2曲はこの彼女自身のアーティストしての変化を象徴するターニングポイント的な意味を持つので、はずせない。

そしてそういった変化があったからこそ生まれたであろうのが、恐らく本アルバムの核となる『Cold Sun』という曲だ。

これまでのAimer嬢の曲は、どちらかというと静かに聴く人のそばに寄り添うような曲調だったかと思うのだが、これは思わずはっとそちらを振り向かざるを得ない吸引力を持っている。
今後の彼女の大きな可能性を示したマイルストーン的な曲になるのではないか。

個人的には詞の符割的な面で面白さを感じる『AM 03:00』やすごくかわいらしい感じがあふれ出ている『小さな星のメロディ』もよい。ダウンロードシングルとして切っていた『眠りの森』もこれまでと違う”意志”のようなものを感じる。

また外部作家の曲では阿部真央嬢の手による『Words』はすごく良い。これはAimer本人にやや欠けているかもしれない”感情のストレートな吐露”的な部分がコラボによってうまく発揮されたのだろうか。

そして言うまでもなく澤野氏の2曲である。強い、サウンドとしても曲としても。

しかし繰り返しになるが、そういった様々な要素に一本ピンと縦糸をはり、一つのアルバム世界に落とし込んでいるのは間違いなくこのAimer嬢の”歌”である。

このあとの展開も菅野よう子御大プロデュースがあったり、ゲーム主題歌のタイアップも決まったりと、少しも止まっていないようである。
このアルバムでも見せてくれたように、彼女は異質なものといい意味でぶつかってゆくことで、その魅力をどんどん開花させていくタイプのアーティストのように思う。
そういうことが分かっている、そしてそれだけのことが出来る”才能”だとわかっている業界の人間は、そらほっときませんわな。
(もれ聞くところでは菅野御大は「あなたはもっと野獣になりなさい」といったとか言わなかったとかw)

商業音楽の売り上げが壊滅的になっている国内シーンはあいかわらず厳しい状況かと思うが、そんな中にあっても彼女は、そう遠くない時期にもっと大きな花を咲かせることになるのではないか―。

そういう期待をさせてくれるアルバムである。


とまあいろいろ書いたが、いちばんいいのはご本人の言をみて頂くことだろう。
ナタリー、何気にいい仕事しとるなあ(笑)。

ナタリー Aimer「Midnight Sun」「UnChild」特集
http://natalie.mu/music/pp/aimer06

ナタリー Aimer「StarRingChild」インタビュー
http://natalie.mu/music/pp/aimer05

リスアニ!Web SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer『UnChild』、オリジナルアルバム『Midnight Sun』同時発売記念、Aimerロング・インタビュー
http://www.lisani.jp/interview-report/web-original/id91557/2


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