霧の果てー神谷玄次郎捕物控/藤沢周平

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例によって藤沢周平作品をひとつ。

霧の果て 神谷玄次郎捕物控 (文春文庫)
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 1,205

北町奉行の定周り同心・神谷玄次郎はその身分にもかかわらず小料理屋・よし野のお津世のところに入り浸り、とても真面目とはいえない勤めぶり。しかし一旦事件となるとその眼光は一転して鋭さを増す。14年前母と妹を殺され、同心だった父も後を追うように病で亡くなった。にもかかわらず捜査の手は何者かの手によって止められてしまう。以来彼は心の奥底でいつもその事件の真相を追い続けていた・・・。

珍しく藤沢作品にしては「浅め」の一品である。

シチュエーションの設定やそれぞれの登場人物の造形などはさすがと思わされるのだが、めずらしくそれぞれへの描写が薄い。主役が定周り同心ということもあるのかもしれないが、お津世などは最後に玄次郎が自分の帰るところだと思い浮かべる割には、あまり描写がない。読める部分からすると非常に魅力的なキャラクターのようにみえるのにもったいない感が強い。

ということで実は珍しく読後もあまりなにか残る余韻のようなものが薄かった。

決して悪い作品ではないし読みやすくもあるのだが、著者の作品群の中ではめずらしくライトな一冊といえるかもしれない。

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