イギリス人はネトウヨ!と左気味の方々ならば卒倒しかねない一冊(苦笑)。
祥伝社
売り上げランキング: 128
フィナンシャルタイムズやロンドンタイムズ、ニューヨークタイムズの東京支局長を歴任され、三島由紀夫とも親交のあった古参外国人ジャーナリストの著者による一冊。
非常におもしろいエピソードが多々書かれている一冊なのだが、体系だった著作という感じはやや薄く、章立てごとにけっこうエピソードが飛ぶ感じである。
良くも悪くもかなり偏った感じをうける一冊である。
イギリス人らしいと言えばイギリス人らしい一冊とも言えるかもしれない。
要は回想録というか回顧録的に著者ならではの経験してきたエピソードを披露されているのだが、昨今の新書のようにワンテーマで統一された感じが薄く、思いつくままに各章を書いているような印象。
もちろんベテランジャーナリストの方ということもあって、それぞれのエピソードはすこぶる面白い。特に三島由紀夫を取り上げている部分は、個人的な親交もおありだったとのことですごく臨場感にあふれている。
本書は一般的に紹介されるときに「日本が戦争犯罪国家であるというのは間違いだ!」とイギリス人ジャーナリストが書いているぞ!と、いかにもネトウヨホイホイな感じで紹介されているようだが-それはあながち間違ってはいないのだが―むしろそういった著者ならではの日本での体験とジャーナリストという知見から語られる各エピソードによって、いま現在いに至るまでの政治・経済のディティールというか空気感を切り取っている一冊のように思う。
なので戦争犯罪国家云々というのもべつに大きなウェイトで主張されているわけではなく「冷静に見ていけばそんなの当たり前のことだろう」的な落ち着きの中で、本書を構成する一要素として語られているにすぎない。
俯瞰的ではなく、語りたい個別の対象があり、それについて知りうる話を各々クローズアップして取り上げているとでもいえばよいか。
俯瞰して、なにか満足できる答えを与えてくれることを期待して読むと、それは文字通り期待外れに終わると思うが、こういった流れ・空気があって、いまこの21世紀の政治につながっている、ということを知るには、非常に役に立つ一冊だと思う。