ゼログラビティ

標準

江の島~鎌倉と回った同日に、関東でのIMAX最終上映館となっていた新高島109CINEMASにて。

シャトルの船外活動をしていたライアン博士(サンドラ・ブロック)はロシアの自国衛星破壊によって発生したデブリの連鎖反応に巻き込まれ、作業中のアームとともにひとり宇宙に投げ出されてしまう。そこは上空60万キロメートル。音もなく気圧もなく酸素もない・・・生命を維持することは不可能な空間だった・・・。

上記のトレーラ見て頂くとわかると思うが、実は原題と邦題が違っている。
原題はなにもつかず、ただGravityである。

これは見終わった人たちの間でもちょっとした賛否両論になっていたようだが、このあたりの捉え方はこの映画自体の評価によって変わる部分もあるようだ。

かなり異色の一作である。

なぜなら登場人物わずか3人(ほぼサンドラ・ブロックとジョージ・クルニーニの2人)、ハリウッド映画にありがちな勧善懲悪のストーリーも、多彩な登場人物の群像劇もなし、ただただ宇宙空間の描写に徹して、生命を維持できない空間でどう生き残るかを描いている作品だからだ。

人物の背景の掘り下げも大きなところは無し、地上の管制センターも音声のみで映像なし。ほとんどサンドラ・ブロック演じるライアン博士ひとりの状況のみが描写される。

それを可能にしているのが、まるで実際にその場で撮影してきたかのような宇宙空間の映像。自分がIMAXでの観劇にこだわったのも実はその部分がこの作品のキモの一つと考えていたからだ。
ただ3D映画の表現も黎明期を経て手慣れてきたのか、思っていたほど立体感は感じなかった。

しかしやはり物語中の核となる描写であるデブリがぶんぶん飛んでくるところは凄くて、やはりこれは3Dでみないと意味のない映画というのは痛感した。

本作は次々と状況が悪化していなかで、いかに生き延びていくのか?それのみが90分続く、ある意味ジェットコースタームービーである。
そのシンプルさにもかかわらず、ずっと画面から目が離せない。これは上記の徹底した映像技術があったからこそ可能になったと言えるだろう。

ではなぜ一部の観客の間で視聴後、物議を醸しているのか?というと作中の描写にいろいろと暗喩が含まれているから、ということらしい。

それが冒頭の作品原題がGravityである、というところにもつながっている。
(それは本作ラストカットでサンドラ・ブロックが文字通り”立ち上がる”シーンでクライマックスを迎える)

言われてみれば、そういう見方もできる映画だと思う。そういうことを込めてあるであろうカットというのはなんとなく見ててもわかるし。

しかし個人的にはそんなに大仰に考える話でもなく「宇宙こえええええ」「デブリこええええ」でいいのではないかと(苦笑)。
無重力の描写は素晴らしいし、その映像美は一見の価値はある。しかしそこかしこで映画ならではのイージーさ(ありえなさ)も見られるのも事実な一本だ。

なので難しく考えず、とりあえず目の前に展開する状況に、手を汗にぎって楽しめばよいのではないか。

なんにせよ、これだけのシンプルなストーリー、最少人数のキャストでここまでやったというのは、やはり称賛に値する一本だと思う。
そういう意味では、”映画”というものの原点を考えさせられる一本であるといっていいだろう。

昨年のウィンターシーズンの映画なのでもう上映館は少ないと思うが、映画館で観れる機会があれば是非ご覧になってみることをお勧めする。
ひさびさに「映画館」でないと意味がない一本でした。




※あと本作はひとつ面白い試みがあって、ネットで短い番外編とでも言うべき映像が公開されている。ただしこれは本編を見た人でないと意味のわからない映像になっている。
 
 これも上述のように本編中では徹底して余計な状況をそぎ落としていたからではこそなし得たスピンオフだと思う。うまい。


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