まどマギの魔女等のデザインでその名を知って以来、自分の中ではかなり重要度の高いアーティストとなった劇団イヌカレー。以前も小規模な展示を渋谷パルコで見たことがあったが、今回は一応ちいさいながらも個展的な展示のようなので喜びいさんでいってきた。
劇団イヌカレー・泥犬「床下展」
2016年4月8日[金]〜5月9日[月]
■ 月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
■ 入場料:500円(開催中の展覧会共通)
■ 会場:parabolica-bis(パラボリカ・ビス)
住所:東京都台東区柳橋2-18-11
会場となるparabolica-bis(パラボリカ・ビス)はゴス・耽美系を得意とする美術ムック『夜想』の版元のアトリエかなにかなんだろうな。そういうところでの開催というの非常に納得。最寄りの浅草橋から5~6分歩いた早稲田文化会館の隣にある。1階展示スペースで2階に受付と物販。2階で受付をしてもらい(入場料500円)1階階段脇の展示室へ。
それを狙って行ったということもあったが、さすが週頭平日の午後一、ほかにほぼお客さんはおらず貸し切り状態で観れた。
例によってレトロ玩具や手術器具と行った小道具がざっくりと置かれたなかに作品が展示されている。いたるところに空の小さな鳥籠があって「Coming Soon!」とあるのも毒があっていい(苦笑)。小さな展示スペースはおよそ半分でざっくり分けられているようで、ギャラリーが最初に目にするのが今回の展示のタイトルにもなっている床下へ堕ちたカネリコの頭を探しに行くメメリという女の子の物語。展示の形態からしても、この物語は明確になにかを語ろうという感じではなく、この一連の展示のにひとつの空気感というか通奏低音的として存在しているというか、そのテキストをちりばめた展示を見ても、明快なストーリーは追えるようで追えなくなっているので、これはもう見たままそのままを感じればいいんだろう。イヌカレーはその表現手法としてのコラージュの使い方が上手い方だというのは認識していたが、その部分部分で使われているテキストもなかなか文章としての破壊力があった。
(※戦利品のポストカード、1枚200円x5也)
展示はこのカネリコの物語を終えると奥の部屋のほうへ移る感じになっていて、そこではこれまでミュージシャンに提供したジャケット絵やケリヒメスイーツのコラボ衣装のアートワーク等が観れる。この衣装デザインの鉛筆画などはもうそれだけで完成されているような感があって素敵だったなあ。
そこでちょうど折り返しのようになるので(この手の展示会に良くあるひとことノートみたいなのも置いてあった)、何点か額装された作品をみると、さきほどのカネリコのスペースの反対側に。そこでは(おそらくNewtype誌かな?)坂本真綾の『満腹論』コラムの挿絵が壁一面に。これがけっこう迫力あって、その何枚かからはなんとも言えぬ物理的な圧力すら感じた(誉め言葉)。NT誌はFSSの連載があるときなどは買ってたりすることがあるので、このコラムも目を通したことはあったかと思うんだが、これだけの原画サイズ(昔のレコードのドーナツ盤のジャケットより少し小さ目ぐらいのサイズ)あったとはなあ。
で、一通り見たのだが、他に人がいないことをいいことに三回まわってワン!ではありませんが、三周ほどじっくり見て回って、たっぷりと堪能させて頂きました。
上述の満腹論の挿絵とかでも顕著だったんだけども、各作品のアプローチが決して平面とか絵画・イラストという範疇にとどまってなくって、必要ならコラージュを手法として使うし、インクジェットプリンタならではのぼかしの粗さが必要ならそれすらも必然として組み込んでいる等、非常に自在というか、いい意味で縛られてない。そういった制作手法というのは非常に肉感的・身体感覚的なところがあって、デザインセンスの凄さはもちろんだけども、こういうところが非常に力強い作品へとつながってるのかなとも思ったり。
なにはともあれ堪能させてもらったんだが、満腹ではあるんだけれども、それでいてまだ「おかわり、もう一杯!」といいたくなる感じ(苦笑)。手間を考えると、決して作品を量産できる感じではないんだろうが、もう少し数がそろったらぜひ画集とか作品BOXみたいなのが出てほしいな。
ということでなかなかいい展示だった。2階のスペースではゴス系の写真コラージュの展示も観れるので(こちらも見応えあり)、この手のアートワークに興味のある方はぜひ脚を運ばれることをお勧めする。
『劇団イヌカレー パペットセット (ノンスケール ぬいぐるみ)』
※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正