ひと月ほど前に既刊だが遅ればせながらレビューしておく。
『聲の形(2) (少年マガジンコミックス)』
本巻は高校生になった主人公・石田が自分のクズっぷりに自己嫌悪に陥り自殺を決意、その前のけじめとして西宮(聾啞の少女)のところまで会いに行く、というところから。
結果、成り行きで彼は自殺を延期し、二人の交流は奇妙な形で再開する。
葛藤しながら西宮へ再び会いに行く石田だが、その途中で普段避けていた級友の永束とふとしたことで友達となる。友達ってなんだろう、友達である資格は・・・と悩む石田に「その気持ちを相手に直接伝えてみればいいんじゃない?そしたら答えは返ってくる」と永束。そのことばに押されて再び西宮に会いに行く石田だが、そこに邪魔に入るのが・・・。
という感じ。前巻のようなきりきりとした感じはやや低減しているが、やはり登場人物たち全員のからまわりっぷりが見ていて痛々しい。
前巻のレビューで大人たちのクズっぷり、と書いたがなぜそう書いたのかがこの「からまわり」っぷりにあるといま気づいた。結局彼らは保護者という立場をよりどころにして、自分のエゴを子どもに押し付けているだけなわけで。
もちろん、保護者というのはそういう側面があるのは事実だし、主人公・ヒロインともに(それぞれ別の条件で)立場的に恵まれているとはいえない―それ故に親が必死になるのはわかりはする。
しかしそこにある最大の欺瞞は本当に子の心を分かったうえでの「あなたのため」ではなく、自分のための「あなたのため」ということだろう。
ここで「私自身がイヤなの!」と開き直ってくれれば、まだ救いはあるのだが、なまじ双方の親がまがりなりにも子への愛情を交えてそういう言動をしているから、余計に始末に悪い。
(そういう意味では、まだ自分のためという気分が漏れ出ている石田の母のほうが若干ながらシンパシーはもてる、クズなのは変わらないが)
今巻では前述の永束や結弦(ゆづる)という、より主人公やヒロインに近い立場のキャラクターたちが出てくるが彼らを含めて登場人物たちすべてが「あなたのため」というお題目の下、空回りしている。
もちろんそういった押し付けから、なにか新しいことが生まれてくるのも事実だが、じつはそれは、誰も対象となる相手のことを「ちゃんと見て」の行動ではなかったりするんだな。
それに対し「自己嫌悪」故に、そこから解き放たれている主人公とヒロインだけが、唯一相手を見ようとして―声が伝わらないにもかかわらず―デリケートな会話を成立させている。
それは相手をちゃんと「見よう」としているからだ。
ただ、どう転んでも明るいところへ落ち着きそうのない作品なので、いまからなんとも先がつらいことだ・・・。
※2022/06 標題の表記を統一、リンク切れを修正